電機・電子部品各社が開発に拍車、「AR―HUD」の実力

事故抑制へ

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京セラが開発しているAR―HUD(デモ機)

電機・電子部品各社が、拡張現実(AR)機能付きのヘッド・アップ・ディスプレー(HUD)開発を活発化している。交通事故の低減など安全な車社会の構築に向けて、安全で快適な運転を支援するデバイスの要求が高まっているためだ。各社は自社の強みの技術や知見を生かし、顧客開拓を進めている。(取材・山谷逸平)

AR―HUDは、ARを使って、道路や車両に関するあらゆる情報を人間の視野範囲内のフロントウインドーに虚像として映し出す。一定程度遠方の現実空間に奥行き感のある大画面映像を重ねて表示することで、運転者の視点移動と焦点調整の低減につながるため、従来のHUDに比べ、一瞬の視点移動による事故を抑制できる。

京セラは視差バリアー方式による視線の視差分離と液晶ディスプレーを使ったAR―HUDを開発中で、2―3年後の量産を目指している。視点検出カメラで運転手の視点位置を検出し、リアルタイム画像補正で高画質な3次元(3D)表示を実現する。虚像距離は7・5メートルだが、運転速度に合わせて映像表示距離を調整可能だ。既に自動車メーカーやティア1(1次取引先)と接触中。開発を担当する先進マテリアルデバイス研究所車載デバイス開発部では「ティア1が持つHUDのシステムを流用でき、導入しやすい」とする。

マクセル(東京都港区)が開発したAR―HUDは、容量10リットルの小ささで、約20メートル先に148型の大画面があるかのように虚像を表示する。独自の自由曲面光学技術を採用したことで大画面虚像を可能とし、プロジェクター事業で培った画像処理技術でフロントガラスに起因する画像の歪みを高精度に補正した。中国の車メーカー1社に2021年中に採用される見通しで、この実績を足がかりに日本市場を開拓する計画だ。

パナソニックが開発したAR―HUDは、表示距離の中心が約24メートルで200型相当の大画面で虚像表示する。独自の手ブレ補正技術を応用した振動補正技術により、車両の振動などによる現実空間と表示映像のずれをデジタル補正し、見やすくした。トヨタ自動車のコンセプトカー「LQ」に搭載されたが、引き続き顧客開拓中だ。

これら3社は光源に発光ダイオード(LED)を使用しているが、ミネベアミツミは光源にレーザーを使ったレーザーAR―HUD向けに光の利用効率を高くできるレーザースキャニング微小電気機械システム(MEMS)デバイスを開発中だ。圧電駆動型2軸ミラーで、共振駆動による高速動作と非共振駆動による低速動作を一体化し、小型・低消費電力、高解像度を実現できるという。

世界のHUD市場は今後、高い成長が見込まれており、安全運転性を高めるAR―HUDのシェアも高まりそうだ。

日刊工業新聞2019年11月20日

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