【連載】挑戦する地方ベンチャー No.4 あわえ(2)

「コト」「ヒト」「カネ」を回し、ビジネス化

記憶をつなぐ


 サイファー・テックにて地域活性化活動を行っていた吉田基晴社長だが、本格的に事業化するため、「あわえ」を立ち上げた。

 現在あわえで行っている事業は、「コト」(文化や地域風土の継承)、「ヒト」(人口減少の歯止め、地域交流)、「カネ」(地域経済の活性化)の3つの軸を中心に動いている。
 「コト」分野では、地域の記憶を次世代に引き継ぐためのフォトストック事業「GOEN」。個人や企業が所持している古い写真とともに、情報をヒアリングして収集。写真をスキャンしてデータ化し、クラウドサーバーで共有する。現在約2000枚が集まっており、約300枚がクラウドサーバーにアップされている。ただ写真をストックするだけでなく、「いつどこでとったのか、どういう写真か」をヒアリングすることでコミュニケーションが生まれ、地域文化への理解も進む。
 GOENは近隣の海陽町など、他の地域へも広がっている。地域おこし協力隊が地域とコミュニケーションを取るためのきっかけになったり、インターンシップでも使用されている。

町を興す、人を呼ぶ


 「ヒト」分野ではサテライトオフィス誘致、移住のサポートを行っている。「エリアリノベーション」として地域のある一帯に集中させて古民家を改修、オフィスや移住者のための住居にしている。これにより地域の変化をより感じやすく、地域活性のアンテナのような場所となる。エリアリノベーションの第一弾として、あわえ本社を2014年に開設。明治時代に建てられた銭湯をリノベーションし、オフィスでありながら地域の人が集まれる場となっている。さらに第二弾として、サテライトオフィス体験施設「Work and Play+ 戎邸」を開設。サテライトオフィスの開設を考えている企業が体験できるよう、2日間から借りることができる。オフィス誘致の間口を広げるとともに、誘致後のミスマッチを防ぐ役割もある。

 美波町には現在県内最多の12社のサテライトオフィスが進出している。サテライトオフィスを誘致するにあたり、問題となっているのが働く人の住居。空き民家はたくさんあるのだが、貸したい地元の人と、借りたい移住者のニーズがすれ違ってしまうことが多い。そこであわえが両者のマッチングを行い、現地での調整役となっている。現在、どのサテライトオフィスでも採用を強化する動きにあり、住居のマッチングは必要性を増している。

 「カネ」分野では、地元産品のブランディング、6次産業化を推進。その1つとして、2015年2月に、地元のブランド鶏「阿波尾鶏」の専門レストラン「odori kitchen」をオープンした。レストランに併設して地元産品やその加工品などを販売するコーナーを設け、一次産業品を六次産業化する取組みに挑戦中である。レストランのシェフを務める林嗣大氏も、東京から移住してきた。自分の店を持ちたいと考えていたところ、たまたま吉田社長と出会い美波町に店を構えることになったという。都会ではできなかったライフスタイルを確立できた一人だ。
(次回は9月16日(月)に更新)

佐藤 史章

佐藤 史章
09月15日
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今回取材を担当したトーマツベンチャーサポート株式会社政策事業部前田亮斗よりコメント
「個人の価値観が多様化する中で、企業のビジネスそのものだけでなく、働く人の暮らし方や生き方まで含めたライフスタイルのデザインが人材採用の差別化要因の一つになってきている。
『半X半IT』という考え方や地域コミュニティの“役割”を全うしながら暮らす生き方は未来の働き方・生き方の一つであり、どんな企業にとっても学ぶべき点がある。
『あわえ』に集った人々がICTを活用し、ビジネスの力で地域の課題を解決していく今後に期待したい。」

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