【連載】挑戦する地方ベンチャー No.4 あわえ(1)

“クリエイティビティ”を求め、徳島・美波町で新しい働き方を

色々な人が遊びに来れる「村」を作りたい


 徳島県の南東部に位置する海部郡美波町。ウミガメが産卵に訪れることでも有名な、美しい海と山に囲まれた地域で今、サテライトオフィスが次々と生まれている。サテライトオフィスの誘致や移住のサポートをはじめ地域活性事業を行っているのが、あわえの吉田基晴社長である。

 吉田社長は同町の出身。小さな頃は虫とりが大好きで、とにかく自然の中で遊んでいた。学生時代からグループのリーダーになることは多かったが、「自分でビジネスをやろうと考えたことはなく、ただ『DASH村』のように色々な人が遊びに来れる場所を作りたいなとは漠然と考えていましたね」。

 転機が訪れたのは、社会人8年目。徳島に本社を持つIT企業やベンチャー企業などを経て、ボードメンバーの一人として、デジタルコンテンツの保護などの情報セキュリティソフト開発を行うサイファー・テックを立ち上げた。

仕事もプライベートも両立、充実させる「半X半IT」


 2012年には美波町に開発拠点「美波Lab」を開設し、同町サテライトオフィス第一号となった。2013年には本社所在地を美波町に移転。「顧客の課題解決をしていくためには“クリエイティビティ”が求められる」という吉田社長の考えから、仕事もプライベートも両立、充実させる「半X半IT」を推奨(X=各人の趣味や家族との時間など)。自然に囲まれた職場環境こそクリエイティビティを発揮できると、美波町に開発拠点を開設したのだ。

 たとえばある社員は、東京で通勤に使っていた時間を趣味のサーフィンに充てることができるようになった。「ちょっと時間が空いたんでサーフィン行ってきます」。こんな会話が当たり前になっている。

 こうして東京本部(営業職・事務職)、徳島開発部(開発職)、美波本社(開発職)と、職種に応じてオフィスが割り当てられる形となっていたが、2014年6月には職種や業種に囚われず社員が自ら好きな時期に好きな勤務地を選べる「フリーオフィス」制を推進。「半X半IT」を全社に展開する形になった。
「美波Labの開設により、優秀な人材が採用できるようになった」と吉田社長は話す。社風に共感し、美波町での働き方に惹かれて入社するエンジニアの応募が増えたのだ。人員増強により、法人向けの文書保護サービスやアプリの改ざん防止サービスなど新たな事業を開拓、事業成長につながった。

 人材採用のきっかけの一つが、学生インターンである。2012年より美波町でインターン合宿を開始、地域活性化をテーマにしたアプリケーションを開発するミッションを与えている。このインターンから毎年数人が同社に入社しているというから驚きだ。
さらに、会社内でも積極的に地域支援活動に取り組んでいる。地元住民へのITセミナーをはじめ、若者が減った祭に参加することも重要な活動となっている。

 しかし、CSRの一環として推進してきた地域活性化の活動を進めるほど、課題が浮き彫りになり、「一企業のCSRだけでは解決できないと判断し、個人出資で地域創生のための企業『あわえ』を設立しました」(吉田社長)。2013年6月より、本格的に課題解決に乗り出していくことになった。
(全3回。次回は9月15日に更新)

佐藤 史章

佐藤 史章
09月14日
この記事のファシリテーター

今回取材を担当したトーマツベンチャーサポート株式会社政策事業部前田亮斗よりコメント
「個人の価値観が多様化する中で、企業のビジネスそのものだけでなく、働く人の暮らし方や生き方まで含めたライフスタイルのデザインが人材採用の差別化要因の一つになってきている。
『半X半IT』という考え方や地域コミュニティの“役割”を全うしながら暮らす生き方は未来の働き方・生き方の一つであり、どんな企業にとっても学ぶべき点がある。
『あわえ』に集った人々がICTを活用し、ビジネスの力で地域の課題を解決していく今後に期待したい。」

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