世界に広がる日本のごみ収集技術。漏水や防臭装置のニーズに応える

 町中をくまなく巡るごみ収集車。日本独自の車両技術の国際標準化を目指す会議の初会合が2019年11月中旬、都内で開かれる。
 生活習慣や文化に深く根ざした廃棄物収集の世界は、一見すると典型的な内需型産業で、標準化とは無縁の印象が強い。なぜ世界に打って出る必要があるのかー。

欧州主導に危機感


 国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センターの久保田利恵子研究員は、その意義をこう解説する。
 「第一に、日本の実情を反映しない海外規格をベースとした国際標準化が進むことに対する懸念があります。国際標準化機構(ISO)の技術委員会では、ドイツを中心に廃棄物の収集や運搬といった分野で既存の欧州規格をベースにした国際標準化が検討されていますが、このままでは手積み式ごみ収集車など、日本の技術や製品仕様が反映されず、議論から取り残されてしまいます。欧州主導の規格案とは別に、日本の独自技術をセールスポイントとした、日本発の国際標準化を実現することで、日本企業のビジネスチャンスにもつながると考えています」。
 ISOが発効する国際規格(IS)は、幅広い利害関係者の合意に基づいて作られるあくまで任意のものだが、世界貿易機関(WTO)の協定によって、事実上の強制力を帯びつつある。久保田氏は「国際規格がすぐさま日本市場に適用されるわけではない」としながらも、各国が自国に有利な標準化戦略を繰り広げる中で、日本企業が海外市場を獲得する上で、国際規格がもたらす意義の重要性は高まっているとの認識を示す。

国立環境研究所の久保田研究員。欧州諸国のごみ収集現場に足を運び違いを「体感」した

日欧で異なる方式


 実際、ごみの収集方式は日本と欧州で大きく異なる。日本は作業員が袋詰めされたごみをひとつひとつ収集車に手際よく投入する「手積み式」が一般的だが、欧州ではコンテナを用いて一度に大量のごみを搬入する方式が主流。作業員がコンテナを収集車に設置すると自動で傾き、ごみが収集車に取り込まれていく仕組みだ。こうしたコンテナ傾倒装置付き収集車の割合は日本では1割に満たない。

欧州各国で広く使われているコンテナ式のごみ収集車。(モナコにて久保田氏撮影)

 収集方式の違いは車両の大きさに表れており、欧州の収集車は日本製に比べかなり大型で、狭い路地や収集ポイントが近接する日本での走行は難しそうだ。国際標準化をめぐる、これまでの議論で示された収集車に対する要件では「投入口の高さは少なくとも1メートル以上」とされているが、関係者は「日本の収集車には合致せず、現実的な仕様とはいえない」と受け止めている。

成長市場獲得の原動力


 車両メーカーにとっても製品や仕様の国際標準化は、少子高齢化で市場が縮小する日本に代わり、経済成長に伴い、ごみの排出量が増大するアジア諸国に活路を見いだす原動力となる。
 塵芥(じんかい)車と称するごみ収集車をはじめとする特装車のトップメーカーで、世界およそ50カ国での事業実績のある新明和工業特装車事業部の伊藤誠也担当課長は、市場拡大の可能性をこうみている。
 「アジア諸国は汁物や果物の摂取量が多いといった食文化を背景に日本同様、生ごみの排出量が多いことが特徴です。このため、日本のごみ収集車に標準的に装備されている漏水や防臭装置へのニーズが見込まれます」。
 日本の収集車にはごみの投入口に扉などを装着して防臭を図ったり、ごみを投入する部分に汚水を集めるタンクを装備している。日本がISOに提案した規格案では、手積みごみ収集車そのものの技術仕様だけでなく、防臭・防漏水装置についても規格化の対象としている。当然、欧州規格にはこうした定めはない。

新明和工業の伊藤氏。規格化にあたっては「ビジネスの実情に即したものを」と期待する

 11月18日から3日間にわたり開かれるISOの技術委員会では、日本提案に関する議論の皮切りとなる。「まずは手積み式収集車の構造や特徴について各国の理解を深めてもらった上で、現実的かつ具体的な議論につなげていきたいと考えています」。久保田氏はこう意欲を示す。
 3年後の国際規格発行へ向け、時計の針はいままさに回り始めようとしている。

神崎 明子

神崎 明子
11月07日
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METIジャーナルの次回の政策特集は、標準化が中小企業の市場拡大を後押しする事例を紹介します。

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