時代を反映、日本の家具のトレンドを振り返る

織物メーカー「川島織物セルコン」がファッションデザイナーとコラボし、北欧家具メーカー「フリッツ・ハンセン」のアルネ・ヤコブセンの代表作「エッグチェア」に繊細な生地を貼り込んだ一点物のいすが登場
 日々多様な家具が登場し、刻々と変化する家具デザインのトレンドは歴史やライフスタイルに大きく影響を受けている。今回は日本の家具デザインのトレンドの変遷について紹介したい。

 戦後の高度経済成長期は工業化が急速に進み、大量生産の家具が普及した。しかし、当時の家具は単なる生活のツールとして考えられ、デザイン性はあまり求められていなかった。その後、欧米の文化が食や住宅などライフスタイルに大きな影響を与えてくると、家具にも洋風のデザインが徐々に流行していく。

 そして1990年初頭のバブル期には、かつてない好景気に沸いた人々が、ラグジュアリーさを家具に求め始める。このトレンドは2000年代にも続き、都心には海外のスーパーブランドが続々と出店していった。

 しかし、その人気は08年のリーマンショックや11年の東日本大震災などを機に徐々に陰りを見せ、世の中のキーワードとして、共生・共感が会員制交流サイト(SNS)などで発信されたことなども影響し、環境や社会に配慮したエコ・エシカルなインテリアが流行し始めた。

 木の質感を生かした温かみのある北欧・ビンテージ家具や、異質な要素のミックス表現などが人気を集めていくが、これはより精神的な充足を満たすことが求められ、さらに人々の価値観が多様化し、自然共生空間を求める風潮が広がったことが反映されるようになったからだろう。

 近年家具のバリエーションは大幅に増え、自由なカスタマイズが可能となった。これも多様性を重視する社会背景を反映した結果と言える。老舗織物メーカー川島織物セルコンが今春北欧家具とコラボした作品はまさにその良い事例だ。

 このように、家具デザインはライフスタイルや時代とともに変化していくものであり、トレンド分析は時代や社会を分析することと同義なのだ。
(文=山野奈緒)
【略歴】山野奈緒(やまの・なお)三井デザインテック・デザインマネジメント部デザインディレクター。住宅、ホテルを中心にオフィス、商業施設など多くの空間デザインを手がける。社内研究機関フェミラボチーフも務める。一級建築士。日本建築学会員。

日刊工業新聞2019年10月25日

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