湘南電力と小田原市、「SDGs」でつながる教科書にない地域連携

地域課題解決のプラットフォームとして機能

 「エネルギー事業というよりも、地域課題解決のプラットフォームをやっている」。湘南電力(神奈川県小田原市)の原正樹社長は同社の存在をこう語る。地域の再生可能エネルギーで発電した電気を地元で販売する“地域電力会社”だが、地域課題解決を目指す企業や周辺自治体との連携が生まれている。

 もともと湘南電力は電力ベンチャーのエナリスが2014年に設立した。神奈川県平塚市を中心とした湘南エリアで事業展開する地域電力会社の先駆けだ。収益の一部をプロサッカークラブの湘南ベルマーレに還元する地域貢献モデルも話題となった。

 その2年前の12年、小田原市内の38社が出資して「ほうとくエネルギー」を立ち上げていた。東日本大震災後の計画停電を経験した市や商工会議所が、災害時に自立できるエネルギー対策を協議したことがきっかけだ。ほうとくエネルギーは太陽光発電所を建設し、小学校などの屋根を借りた太陽光発電も始めた。

 だが、発電事業は順調だったが売電事業は整わず、エネルギーの地産地消ができなかった。そこで売電で先行する湘南電力に白羽の矢を立てた。17年、ほうとくエネルギーなど小田原の5社が湘南電力の株式の80%を取得。出資した1社である小田原ガスの原社長が湘南電力の社長に就き、本社を小田原市に移した。

 ほうとくエネルギーと湘南電力の融合で電力の地産地消を実現し、電気料金の1%を地域貢献活動に還元する仕組みもつくった。地域資源である再生エネで得た収益を地域のために使う事業モデルはわかりやすく、湘南電力と契約する市民や企業が増えている。近隣の松田町、開成町、南足柄市とも再生エネの地産地消の協定を結び、神奈川県の「SDGsパートナー」にも登録された。

 小田原市が内閣府の「SDGs未来都市」に選ばれたこともあり、不動産、農業、商店街、神社など地域の関係者と空き家問題や後継者不足を議論する場が増えた。「シナリオを書いたわけではないのに、有機的な人のつながりができた」(原社長)と語る。

 実際、湘南電力には液化石油(LP)ガス販売の古川も出資する。都市ガスの小田原ガスとは競合であり「昔だったらあり得ないが、地域活性化が共通の思いだから一緒に取り組めている」(同)と話す。湘南電力のような地域課題解決のプラットフォームとなる存在があると、他地域でも関係者の連携が生まれやすそうだ。

日刊工業新聞2019年10月18日

松木 喬

松木 喬
10月20日
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小田原のエネルギー政策と言えば、かまぼこ屋さんを浮かべる方がいると思います。他にもガス、不動産、神社などが地域課題解決に動いていると現地に行って知りました。コンサルやビジネスの教科書通りでないから、お話をうかがっていてユニークです。新鮮です。こうした地域の取り組みを30日、環境ジャーナリストの会の講座で紹介します(30日19時~、渋谷区神宮前の地球環境パートナーシッププラザで)。

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