経営層の強い意向も…今時オフィスは「内階段」が欠かせない

不動産大手、回遊性向上へ

 “内階段”で社内活性化―。自社で開発したオフィスビルへの移転にあわせ、入居する複数フロアを内階段でつなぐ不動産大手が相次ぐ。三井不動産は引っ越し中の「日本橋室町三井タワー」(東京都中央区)に導入し、東急不動産も設置。先行する三菱地所では社内コミュニケーションが活発になり、従来の枠を超す協働が生まれる成果が出ている。テナントの採用を視野に、対応可能な設計で仕上げるビルも増えてきた。(文=堀田創平)

理想の空間


 不動産各社が内階段を設ける背景には、多様化する働き方を受けたテナントニーズの変化がある。特に時間や場所を選ばず働ける時代だからこそ、重視されているのが「あえて顔を合わせるコミュニケーション」(大手幹部)だ。内階段はこれに対し、オフィスの供給元として出した解の一つ。ここで自ら“理想の空間”を体験することで、新たなオフィスの形を提案する。

 その先駆けが三菱地所だ。18年1月に本社を移した「大手町パークビルディング」(東京都千代田区)は、4フロアを二つの内階段で結ぶ。テナントでの導入例も検証した上で「社内の回遊性を高めるために設置はマストだった」(担当者)と明かす。特に2カ所の設置は「自由な行き来によって、より偶発的なコミュニケーションが生まれるはず」とこだわった自信作だ。

 導入2年目の現在も「特に課題は見当たらない」(担当者)。例えばレイアウトでは、グループアドレスによる「横」に内階段という「縦」が加わることで回遊性が向上。関連する部署を「3次元的に緩やかに配置することができた」(同)という。共用部を通らないためフロアごとのセキュリティー認証を省けるほか、機密情報が漏れる懸念が減る利点も評価されている。

既存ビルでも検討


 実は内階段の設計思想自体は04年の丸の内北口ビル(東京都千代田区)から組み込んでおり、丸の内地区の対応可能ビルはすでに11棟に上る。もちろん設置にはコストや手間がかかるものの、担当者は「当初計画になくても、効果を見込む経営層の強い意向で決まる例が多い」との感触を示す。新築ビルでは半数近くが設置を決めており、既存ビルでも必ず検討される設備という。

 一方、旧本社など4棟を建て替えた「渋谷ソラスタ」(東京都渋谷区)に8月から新本社を構える東急不動産は、5フロアを1カ所でつなぐ内階段を設けた。「旧本社では共用部までにセキュリティーゲートやドアを3、4回通り、さらにエレベーターを待つ煩わしさがあった」だけに、まずは気軽に他フロアに足を運べる環境がコミュニケーションの向上に寄与している。

 同社は渋谷駅前で11月の開業を控える「渋谷フクラス」や工事が進む「桜丘口地区再開発」、ソフトバンクグループとソフトバンクが本社移転を決めた東京・竹芝の大規模再開発など複数のオフィスビルを手がける。

 あくまでテナントの要望に応じる形にはなるが、今後は「あらかじめ内階段の導入を選択できるような設計で供給するものも出てくる」としている。

日刊工業新聞2019年10月9日

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。