「ハッカソン」を社内の人材育成インフラに

富士通、SEの意識改革で成果

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富士通の若手社員を中心にしたハッカソン「FUJI HACK」の旗揚げ会
 プログラマーやウェブデザイナーらが技能やアイデアを競い合う「ハッカソン」と呼ばれる開発イベントが脚光を浴びている。イベント参加者らは半日から数日間“缶詰”になり、与えられたテーマに沿ってアプリケーション(応用ソフト)を作り上げ、成果を競う。ハッカソンは民間非営利団体(NPO)などが広く参加者を募るのが一般的だが、企業内のハッカソンもあり、社員間の意思疎通やビジネス創出のインフラとして機能している。

 ハッカソンを含めワークショップ(体験型講座)を通して、3万人の国内システムエンジニア(SE)の意識改革に取り組むのは富士通。受託開発に慣れ親しんできたSEのスキルを転換し、“オープンイノベーション”を実践できる人材を育成するのが目標だ。ハッカソンを含むワークショップの意義については「消費者や生活者との新しいつきあい方を学ぶ場」(富士通関係者)と位置づけ、「お客さまと同じ目線でともに考えることが重要だ」(同)という。

 【「明日ラボ」】
 富士通は3年前にワークショップ活動の推進とともにソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を絡めたウェブサイト「明日のコミュニケーションラボ(通称、明日ラボ)」を立ち上げた。ワークショップの内容などを広くウェブ上で公開し、「共創」をテーマにさまざまな分野でコミュニティー活動に力を注いでいる。
 「当初、明日ラボは富士通の名前を出さず、草の根的に行っていたが、(消費者に宣伝と気付かれないように宣伝する)ステルスマーケティングと勘違いされないために、あえて名乗ることにした」(同)という。
 社外ワークショップは大学の先生やNPOのメンバー、有名人などを講演者に招き、学生や社内の若者らを交えて、土曜と日曜日に行っている。参加者は平均40人程度。

 【社内版も展開】
 一方で、明日ラボの社内版(社員が中心の活動)も立ち上げ、社内SNSのコミュニティーと連動した活動を展開している。コミュニティーの数は現在、1700程度。ここでも人気はワークショップ関連のコミュニティー。異なる事業部の人と知り合う場にもなっており、「事業部門や業種SEの壁を破る効果がある」(同)という。
 富士通がSEの改革を起点に明日ラボを立ち上げた背景には市場変化がある。これまでSEは客先の情報システム部門とだけやりとりしていればよかったが、最近は業務部門を相手とする商談が増えている。「業務部門が相手の商談ではIT部門のように要件定義ができず、ワークショップのような新しい接点が重要となる」ためだ。

 【入札の条件】
 事実、地方自治体では、ハッカソンを条件とする入札案件も出ている。福島県浪江町では「町民との絆をつなぐ」をテーマとするタブレット端末(携帯型情報端末)配布事業の入札で「住民を交えたハッカソン」の開催を条件とした。富士通はここぞとばかりに明日ラボで経験を積んだ精鋭を送り込み、ライバルを軒並み打ち負かした。
 自治体や住民、企業などが協力して社会を築く「共創の時代」ではハッカソンが果たす役割は大きい。IT業界に新たな変革をもたらす潜在力を秘めている。

日刊工業新聞2015年04月09日 電機・電子部品・情報・通信面

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局DX編集部
記者

ハッカソンで社内が活性化する、人材育成につなげる。面白い試みだなと思います。 さまざまな人との関わりの中で新たな知識や気づきを得ることができ、短期間で集中してチームで取り組むことで濃い経験となりそう。

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