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白熱電球時代の名残はもうすぐ「ソケット」のみになる

「ひらめきマーク」の形はどう変わるのか
白熱電球時代の名残はもうすぐ「ソケット」のみになる

さまざまな発明を手掛けたトーマス・エジソン(右、画像:GEライティング))

 白熱電球の特徴的な形状は、135年前にトーマス・エジソンが特許を取得して以来、一貫して変わることがなかった。電球と言えば、優れたひらめきやアイディアの象徴として、「ひらめきのマーク」であるかのごとく世界中で愛されてきた。でも、次世代にそんなピクトグラムはもう通じないかもしれない。

 「法律が変わって いよいよ白熱電球の使用が昨年から段階的に廃止され、電球型蛍光灯(CFL)もいまやより効率の高い発光ダイオード(LED)に替えられようとしています。LEDなら、伝統的な白熱電球の形状にこだわる必要がない」と話すのは、GEライティングの家電照明担当チーフ・イノベーション・マネージャーのトム・ボイル氏。

LEDも洋梨型になったのは、誰もがその形状に慣れ親しんでいたから


 ボイル氏によると、白熱電球の伝統的な洋梨型(Aライン)は、透明容器を作るための吹きガラス技法に起因していた。「私たちが最初に作ったLED電球も洋梨型。それは単に心理的な理由で、誰もがその形状に慣れ親しんでいたから。洋梨型に代わるよりよい形状がなかったということじゃない」という。

 その証拠に、GEが最近発売した新しいLED、60ワットのCFLに替わる「Bright Stick」は、巨大な白いリップスティックのようなスレンダーな形状の底に、銀色のエジソン・スクリューベース(ネジ式口金)が付いている。

 価格は、米ホームセンター大手のホーム・デポで買うと、3個セットが10ドル未満という低価格。「米国には約40億個のソケットが存在していますが、LED装着率は10分の1にも達していない。私たちは、この割合が10年後には50%に到達すると確信しる」と、ボイル氏はLED普及に期待を寄せる。

 GEの研究所で働いていたエンジニアのニック・ホロニアックが可視光を放射するLEDを発明したのは1963年。その後も世界中で研究が行われてきたLED技術は、この5年間で大きな進化を遂げた。

 ボイル氏によると、LEDの効率はここ数年、毎年7%近くも向上。デザイナーたちは電球を小型化したり、ヒートシンクや冷却フィンをサイズダウンすることも可能になった。また、価格も2011年以降10分の1まで低下し、60ワット相当のLEDは当初50ドルだったものが今では5ドルを切るまでになっている。

 GEのテストでは「Bright Stick」の寿命は15,000時間、1日3時間の使用で14年間使用可能。しかも、CFLに比べて80%もエネルギーを節約できる上、スイッチを入れれば瞬時に点灯。特別なリサイクル技術を必要とする水銀などの有毒重金属を一切含まないメリットもある。

形状をスティック型に決定するまでに、GEは5種類のデザインを試す


 そんな“イマドキ“のLED電球。形状をスティック型に決定するまでに、GEでは5種類のデザインを試した。「Aラインに固執する理由がないなら、上品でシンプルなデザインにしたいと思った。どちらのデザインでも光の広がり方は基本的に同じだが、スティック型の方が発送や保管の利便性に優れているから」とボイル氏。

 LEDの形状が変わっても、変わらないモノもある。それは電球の底に付いているエジソン・スクリューベース。エジソンは白熱電球のビジネスを成長させるには電球を交換するシンプルで経済的な方法が必要だと考え、ニュージャージー州メンローパークにある自分の研究所でこのスクリューベースを発案した。

 1900年のある日の夕方、幾度も失敗を重ねていたエジソンにインスピレーションを与えたのは、オフィスにあった灯油缶のふたの内側のデザイン。この時エジソンは「これは間違いなく、電球にもソケットベースにも最高だ」と話した、と伝えられている。

 1世紀前に世界中の生活様式を一変させたエジソンの白熱電球時代の名残は、もうすぐこの「ソケット」のみになるに違いあない。



明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
照明事業はGEの象徴。白物家電事業は売却したが、その中に照明は含まれていない。会社全体のポートフォリオはいろいろ変わってきたが、うま味のある事業は手放さないし、イノベーションを繰り返しながら業界の淘汰を待つ。LED時代はどうなるか。フィリップスや中国勢も存在感を示しているが、残念ながらそこに日本勢が入ってくる余地は今のところない。

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