これからの「移動」はどのように進化していくのか?

日刊工業新聞2019年8月15日


 人と物の移動なくしては社会は成り立たない。しかし成熟化した日本の社会では、両方の移動とも問題を抱えている。路線バスが廃止された過疎地では、高齢者が運転免許を返納できない。ネット通販の急拡大はドライバー不足を引き起こした。都市部の渋滞やラッシュアワーは、依然解消されない課題だ。こうした状況にCASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)の概念はどのような影響を与えるのだろうか。

幹線でライバルと共同輸送も

 国内物流の主役であるトラックも、CASEの変革に直面している。労働力減少を背景に、運転手不足は深刻化。働きやすい環境づくりとともに、作業の無駄を省くなど一層の効率化を図らなければならない。社会要請に従い、環境配慮型物流の構築も不可欠だ。トラックはあっても運転手を手配できず、モノを運べなくなるかもしれない“物流の危機”にCASEというキーワードで立ち向かう。

 日立物流は、トラックの運行管理にIoT(モノのインターネット)を活用したスマート安全運行管理システム「SSCV」の導入を進めている。

 出発、帰着の点呼時に、運転手の体温や血圧、疲労度合いといった生体情報を把握し、運行時には車両挙動や走行状況を監視して、安全運行のために注意喚起する仕組み。「12月までに全車両取り付けを完了する」(佐藤清輝執行役専務)見通しだ。

 幹線輸送では、自動運転技術を用いた隊列走行の実証も行われている。一方、1月に特殊車両通行許可基準が緩和されて実現したのは1台で大型トラック2台分の荷物を輸送できる「ダブル連結トラック」だ。

 荷物量の多い関西―関東間の輸送は、差別化して争う領域ではない。「シェアできるところはシェアすべきだ」(長尾裕ヤマトホールディングス社長)と、競合他社との共同輸送に前向きな姿勢だ。

 トラック1台当たりの積載率は、電子商取引(EC)市場の拡大で小口荷物が増えたことにより落ち込んでいる。Hacobuやハコベルといった物流ベンチャーらが提供する、情報通信技術(ICT)を用いた、荷物とトラックをマッチングする「求貨求車」の高度化は物流全体の効率化への寄与が期待されている。

「電動化とシェア」融合

 人口減少や高齢化、過疎化と都市部への集中などに直面している日本はこの先、人とモノの流れが大きく変わらざるを得ない。

 テレワークで働き方が変わり、ネット通販で自宅に居ながらにして多くのモノが手に入る一方、地方では路線バスの撤退などで移動手段が奪われ、病院に行くのもままならない高齢者が少なくない。都市部では渋滞や通勤ラッシュ、交通事故などの更なる対策が急がれている。

 こうしたさまざまな矛盾をはらんでいる人の移動を、サービスの観点から一新させようと国内で官民挙げた研究が進むのがMaaS(乗り物のサービス化)だ。ここにはCASEの技術や概念がベースとなっている。

 MaaSは大きく都市型、地方・過疎地型、観光地型の三つに分けられる。都市型の多くは既存の交通機関を結びつけ(コネクテッド)、定額制で移動を簡単にする考え方。その一つに事前に運賃を確定し相乗り(シェアリング)するタクシーなどもある。

 地方・過疎地型で研究されているのは電動化とシェアリングを組み合わせたグリーンスローモビリティーという移動手段だ。マイカーしか移動手段がない過疎地で、ゴルフカートのような数人乗りの低速の電動車を走らせ、必要な時に家の前まで来てもらい、相乗り(シェアリング)でバス停や駅、病院などに運ぶ。

 観光地型はバスや電車に加えて遊覧船やレンタサイクルなども組み合わせ、ワンストップで最短時間での乗り継ぎ、移動を可能にする実験が進む。どのケースも基本的にスマートフォンで検索から移動ルート・手段の構築、予約、決済などが完結できるのが理想だ。

 例えばトヨタとソフトバンクが設立したモネ・テクノロジーズが提案する自動運転機能を搭載した箱形の電気自動車「eパレット」をプラットフォームとした、移動と生活のさまざまなステージを組み合わせた新しいモビリティー。eパレットはオフィスにも店舗にも飲食にも宿泊にも形を変えられる。移動が手段でなく目的になる可能性を秘めている。

 トラックの生産性改善を狙い、1月に従来21メートルだった特殊車両通行の許可基準を25メートルまで緩和することで実現した。トラクター(けん引車)側のトラックと荷室のみのトレーラー(被けん引車)を連結して運行することで1人の運転手が、大型トラック2台分の荷物を輸送できる。

 当初は新東名を利用した関東―中部・関西の幹線輸送を対象としてきたが、8日から、通行経路を岩手県北上市から福岡県太宰府市まで拡充した。トレーラーを連結・切り離しすることで同一方面の幹線物流について、共同輸送をはじめとした効率化が期待できる。

【MOBILITY TRANSFORMATION 2019 ~移動の進化への挑戦~】


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日本版MaaS自治体の動き


 国土交通省と経済産業省は6月21日、新しいモビリティーサービスに取り組む団体や関係省庁が参加する「スマートモビリティチャレンジ推進協議会」を立ち上げた。60自治体、76事業者、12団体と、148の団体が参集した。28の地域と事業提案を「スマートモビリティチャレンジ」の支援対象に選び、先行事業者として国の予算で後押しする。

 7月31日、国交省は新モビリティサービス推進事業で選定した19事業のうち、第1弾として15事業に対し交付決定し各地で事業が動きだした。トップランナーの取り組みを協議会で共有し、各地の事情に合ったサービスとして横展開する。

 MaaSは欧州で生まれた概念。社会が発展するほどに、大都市では移動方法が複雑になり乗り物は混雑する。逆に人が減った地方部では、公共交通機関の撤退で移動しにくい。フィンランドのベンチャー企業「MaaSグローバル」が、世界で初めて都市型MaaSを実用化した。定額制、最適な交通手段の検索、予約、決済など同社のサービスは都市型MaaSの原点とされる。

 一方、日本では都市型MaaS、地方・過疎地型のMaaSに加え、インバウンドを意識した観光地型MaaSを同列に進めている。外国人には日本語が移動の大きな妨げだ。最適な交通機関をスマホで選び自在に結びつけるMaaSは、言葉の壁をクリアする非常に有効な手段となる。
               

  

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