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指1本1本が衝撃吸収するロボットハンド開発、何が実現できる?

指1本1本が衝撃吸収するロボットハンド開発、何が実現できる?

3本指8自由度のマグリンケージハンド

 東京大学の小山佳祐特任助教は、指一本一本が衝撃を吸収するロボットハンド「マグリンケージハンド」を開発した。指関節に磁石歯車を採用し、入力と外力の両方が滑らかに動くようになった。外から強い力がかかると磁石歯車が滑って力を逃がす。これまでサーボ制御のみで衝撃吸収を実現した例はないという。ロボットで動いている対象をピッキングしやすくなる。

 モーターの回転方向を磁石歯車で90度変換して、遊星歯車減速機で回転力を増やす。磁石歯車は摩擦がなく、モーターの力と外からの力の双方を伝達できる。傘歯車などの方向変換機構は摩擦が大きかった。

 モーターと磁石歯車、減速機を指の太さに収めた。モーターからの力は減速機で増幅され、反対に指先に外からかかる力は減速機で減衰される。小型のモーターでもロボットハンドとして十分な6・8ニュートンの力を出せる。指の最高速度は秒速2・6メートルで、ハンドとしては8自由度を備えた。

 磁石歯車は強い力がかかると滑るため、過剰な負荷から機構を守るトルクリミッターとして機能する。各モーターはサーボ機構で回転角度を計測しており精密に制御できる。

 ロボットハンドとしては、製造ラインを流れてくる製品をそのまま指で受け止めつつ、モノをつかむ動作が可能になる。従来は対象を決まった位置で静止させてから拾い上げていた。

 製作にあたりマイクロテック・ラボラトリー(相模原市南区)と信電舎(東京都江戸川区)、エフ・イー・シー(埼玉県狭山市)の協力を受けた。
日刊工業新聞2019年9月27日

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