「世界最先端の法制度」の成果!?月内に再生医療製品が初承認へ
テルモの骨格筋芽細胞シートとJCRファーマの他家骨髄由来間葉系幹細胞
再生医療製品の実用化について、2014年11月の医薬品医療機器等法(改正薬事法)施行後、初の製造販売承認事例が生まれることがほぼ確実となった。厚生労働省薬事・食品衛生審議会の専門部会が、テルモの骨格筋芽細胞シートとJCRファーマの他家骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の申請を了承。月内には厚労相承認が下りる見込みで、実質的な承認となった。これまで「法制度上は世界最先端の環境が整った」と言っていた日本だが、一歩進み、初の承認品が生まれる。
【審査結果に安堵】
「記念すべき第1号。承認まではやはり早かった」(経済産業省生物化学産業課)。関係者が審査結果に胸をなでおろすのは、今回の2製品の承認が、日本で三つの「初」を冠せられる”トリプル初“の結果だからだ。
一つは改正薬事法で初めてという点。同法は細胞という”生もの“を扱う再生医療製品を、医薬品と医療機器に並ぶ薬事審査対象に据えた。また安全性が確認され、有効性が推定された段階でいったん仮の承認を与える「条件及び期限付き承認制度」を実現。これが「世界最先端の法制度」(経産省幹部)として、日本国内はもとより米国食品医薬品局(FDA)が米産業界から叱咤(しった)されるほど衝撃を与えた。
【期限は5年間】
2社・2製品のうちテルモの骨格筋芽細胞シートは条件・期限付き承認。期限は5年間で、5年後に再申請しなければ失効する。条件・期限付き承認も初の事例。これが二つ目の「初」だ。
三つ目の「初」はJCRファーマの製品が、患者以外の健常人から細胞を取る他家(ヒト同種)細胞製品という点。テルモの細胞シートや旧薬事法で医療機器として承認されたジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの2製品は、いずれも患者本人の細胞(自家細胞)を使う。JCRファーマの今回の製品は希少疾病用だが、他家細胞の方が量産と産業化に有利とされる。
これら三つの「初」を成し遂げた後、関係者の関心は保険収載と産業化に向かっている。このうち産業化は当面、細胞培養を中心とする一連の工程を正確、安全に評価基準に基づいて実施でき、廉価に素早く供給できる体制構築を指す。
【実証進む】
国内外でその実証が進む。実証を担う有力な企業群は富士フイルムをはじめとする日本の業界団体、再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)の有力企業、東京エレクトロンを中心にする企業群など。うちFIRMの有力企業は、川崎市川崎区の殿町地区に実証拠点を整備中。東京エレクトロンは英国スティーヴネッジで実証を始めた。これ以外に水面下でもさまざまな動きがある。
法制度を整え、承認事例が生まれる日本。関係者の最終的な思いは、研究でも申請でも製造でも「再生医療をするなら日本だ」という状態を世界の中で定着させることにある。
(文=米今真一郎)
【審査結果に安堵】
「記念すべき第1号。承認まではやはり早かった」(経済産業省生物化学産業課)。関係者が審査結果に胸をなでおろすのは、今回の2製品の承認が、日本で三つの「初」を冠せられる”トリプル初“の結果だからだ。
一つは改正薬事法で初めてという点。同法は細胞という”生もの“を扱う再生医療製品を、医薬品と医療機器に並ぶ薬事審査対象に据えた。また安全性が確認され、有効性が推定された段階でいったん仮の承認を与える「条件及び期限付き承認制度」を実現。これが「世界最先端の法制度」(経産省幹部)として、日本国内はもとより米国食品医薬品局(FDA)が米産業界から叱咤(しった)されるほど衝撃を与えた。
【期限は5年間】
2社・2製品のうちテルモの骨格筋芽細胞シートは条件・期限付き承認。期限は5年間で、5年後に再申請しなければ失効する。条件・期限付き承認も初の事例。これが二つ目の「初」だ。
三つ目の「初」はJCRファーマの製品が、患者以外の健常人から細胞を取る他家(ヒト同種)細胞製品という点。テルモの細胞シートや旧薬事法で医療機器として承認されたジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの2製品は、いずれも患者本人の細胞(自家細胞)を使う。JCRファーマの今回の製品は希少疾病用だが、他家細胞の方が量産と産業化に有利とされる。
これら三つの「初」を成し遂げた後、関係者の関心は保険収載と産業化に向かっている。このうち産業化は当面、細胞培養を中心とする一連の工程を正確、安全に評価基準に基づいて実施でき、廉価に素早く供給できる体制構築を指す。
【実証進む】
国内外でその実証が進む。実証を担う有力な企業群は富士フイルムをはじめとする日本の業界団体、再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)の有力企業、東京エレクトロンを中心にする企業群など。うちFIRMの有力企業は、川崎市川崎区の殿町地区に実証拠点を整備中。東京エレクトロンは英国スティーヴネッジで実証を始めた。これ以外に水面下でもさまざまな動きがある。
法制度を整え、承認事例が生まれる日本。関係者の最終的な思いは、研究でも申請でも製造でも「再生医療をするなら日本だ」という状態を世界の中で定着させることにある。
(文=米今真一郎)
日刊工業新聞2015年09月04日 素材・ヘルスケア・環境面