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若手ら3人の銅鋳物「藤綱合金」、来月始動―旧上田合金の志受け継ぐ

廃業した旧上田合金の従業員が創業
若手ら3人の銅鋳物「藤綱合金」、来月始動―旧上田合金の志受け継ぐ

故上田社長が写ったパネルを手にする藤綱伸晴氏㊨(左は営業担当予定の大西健仁氏)

 大阪府東大阪市の高井田地区で新たに銅鋳造業がスタートを切る。「藤綱合金」がそれで、同地区の中小企業で3月に廃業した旧上田合金の従業員7人のうち3人が志を継ぎ、集まった。旧上田合金社長で1月に死去した上田富雄氏は古代の銅鏡、銅鐸(どうたく)の復元でも知られた。地域や客の応援を受け、藤綱合金は10月中にも生産を始める。

 廃業した旧上田合金の工場から約600メートル離れた場所で、藤綱合金は約200平方メートルの本社・工場を構える。従業員当時に工場長代理だった藤綱伸晴氏が社長に就き、元工場経営の父親や、地元の商工会議所の助力も得て金融機関から1500万円を借りて10月に個人創業する予定。設備類は新たに調達し、溶解炉はガス燃焼式で以前の半分の200キログラム炉を据える。

 旧上田合金は1960年創業。2代目の故上田社長は古代の銅鐸や銅鏡の復元で、町工場の技をアピール、復元品の寄贈などによる社会貢献、修学旅行生の見学受け入れにも積極的だった。

 船舶用バルブ、機械部品など旧上田合金の客先約50社のうち、廃業後も半数程度、仕事量で約6割がつながりを維持。同業の鋳造会社の協力のもとで供給した。銅鋳造業が少なくなり、客先から復活を求める声もあり、道を探ってきた。

 34歳の藤綱氏は高井田育ち。20歳代終わりで地元に帰り、旧上田合金で働いた。「上田社長はたくさん種をまいた。その中で一番大きな種が自分だと、勝手に思っている」と胸中を話す。

 藤綱合金は故上田社長が社業と別に取り組んだ銅鐸、銅鏡の製作も続ける。それらを含めた事業活動に一般から応援寄付金を集める仕組みをつくる。金額は1口2000円―最大100万円まで7段階で、協力者にはサポーター証のほか、古代の銅鏡復元品などをお礼品で贈る。
(文=東大阪支局長・佐々木信雄)
日刊工業新聞2015年09月03日 中小企業・地域経済面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
古代銅器の復元などを通じ、次世代に歴史と技をつないでいってほしいと思います。

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