報酬制度も…従業員の睡眠不足「企業が改善」広がる事情

昼寝30分→生産性が向上

三菱地所は業務時間中に利用できる仮眠室を設置
 就業中に睡魔に襲われたり、体調不良やメンタル不調につながったりと、さまざまな悪影響を引き起こす睡眠不足―。睡眠の質や量は健康だけでなく仕事の生産性にも影響を与えるため、従業員の睡眠不足改善に取り組む企業が増えている。社内への仮眠室設置や睡眠に対する報酬制度の導入などを行っており、従業員からは「眠気が改善され、夕方までやる気が続く」との声が上がり、成果が出てきている。

 ロート製薬は7月中旬に、ニューロスペース(東京都墨田区)の睡眠習慣デザインプログラム「リー・ビズ」を導入。社員の睡眠改善を図り、同社が目標とする健康経営を後押しする。社内公募で募った約40人が対象。「開始したばかりで効果は未知数。(3カ月間の取り組みを踏まえて)全国に広げるかを検討したい」(広報担当者)とする。

 三菱地所は東京・大手町の「大手町パークビルディング」に本社を移した2018年1月、業務時間中に利用できる仮眠室を設置。「パワーナップ制度」として導入したところ、眠気を感じやすい午後も「最大限のパフォーマンスを発揮できる環境が整った」(同社)と手応えを感じている。

 仮眠室は男女3室ずつの個室で、熟睡しにくいリクライニング式のソファで体を休める仕組み。業務時間中に離席して眠るという発想は「会社の風土・文化としても考えられなかった」(同)が、制度開始とともに社内意識も変わり、18年11月時点の利用件数は1月の4倍に増えた。

 従業員からは「昼食後に使うことですっきりでき、午後の業務に集中できる」などと導入に好意的な声が上がる。利用者が固定化されている懸念があるため、より多くの従業員に利用を働きかける方針。すでに横浜支店、関西支店も導入した。

 大日本住友製薬は全従業員を対象に、昼寝を推奨する講演プログラム「寝てもいい/寝たらいいレクチャーシリーズ」に取り組んでいる。昼食後の12時半から30分間実施。内外から来た講師が講演し、その間の昼寝を公認する。月1―2回開催し、すでに40回以上を実施している。

 「社員が気軽に参加して昼寝し、生産性向上につながる」(広報担当者)。今後は「新しい発想や人脈作りにつながるコミュニケーションの場としても活用していきたい」(同)とし、「生産性向上のための昼寝が自席でも取れるような風土が浸透することも狙っている」(同)。

 福利厚生で、従業員の睡眠に対し報酬を支払う制度を採り入れたのがクレイジー(東京都墨田区)だ。エアウィーヴ(同中央区)の睡眠を計るスマートフォンのアプリケーションを活用する。制度への参加は任意で、現在従業員の約6割が参加。開始当初は平均5時間半だった繁忙期の睡眠時間は、半年で目標としていた6時間以上の結果を達成した。

 森山和彦社長は「任意参加にすることで、社員一人ひとりが制度を実施する理由やメリットを理解し、自ら利用可否を選択する。従業員からは『睡眠時間が可視化され、適切な睡眠時間がわかり、体調を崩しにくくなった』という声を聞く」と気づきを述べる。当面は制度の利用者数の増加と定着を目指す。

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日刊工業新聞2019年9月17日

COMMENT

葭本隆太
デジタルメディア局
ニュースイッチ編集長

7月に「睡眠」をテーマに連載(連載「睡眠の値段」)をしました。その際にニューロスペースの小林孝徳社長にお話を聞きましたが、「(創業した2013年当時は)企業にとって従業員の睡眠はプライベートという概念だった。仕事の生産性と関連付けられず見向きもされなかった」という言葉が印象に残っています。一方、昼寝の効果は実証されていますが、「スタンフォード式最高の睡眠」の著者でスタンフォード大の西野精治教授は「昼寝は睡眠負債(睡眠不足が借金のように積み重なり不調を引き起こす状態)をなくす根本解決にはならない。夜の睡眠が十分にとれていれば、昼寝そのものはさほどメリットはない」と指摘されていますが、これも重要なものだと改めて思います。

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