日立が海外で取締役会を開く理由。デリー、ワシントンに続きロンドンで

鉄道など英国で注力する事業について議論

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英国での取締役会(右から2人目が東原社長、3人目が中西会長)
 日立製作所は英国・ロンドンで取締役会を開き、欧州での鉄道システム事業などに関して議論した。日立は年に1度の頻度で、海外で取締役会を開催している。企業統治を世界標準に近づけて、グローバル企業に変革するためだ。これまでにインドや米国で開いた。

 今回は取締役12人のうち、中西宏明会長、東原敏昭社長ら11人が現地で参加した。英国では近く鉄道車両工場が立ち上がるほか、原子力発電設備事業も推進しており、これらに関して話し合った。また欧州での事業戦略も決めた。

2012.12 ニューデリー


 日立製作所は海外で初めての取締役会を、13日にインドのデリーで開催する。川村隆会長、中西宏明社長をはじめ社外取締役も出席、インド事業の戦略などを討議する。合わせて環境フォーラムも開き、インフラ技術力を訴求する。日立はインドで水処理や電力など多数のインフラ事業のプロジェクトに参画することが決まっており、今後はグループ全体で投資の拡大や人員の増強を進め、早期に売上高2000億円を目指す。

 インド西部のグジャラート州では伊藤忠商事などと組み、アジア地域で最大級の海水淡水化事業を始める。近く州政府と契約を結び、運営事業会社も設立する。運転開始は2015年の予定で、総事業費は460億円。将来的にはスマートシティー(次世代環境都市)への展開を目指す。

 同州アーメダバードでは高圧インバーターや無停電電源装置などパワーエレクトロニクス製品の新工場が稼働。発電所、製鉄・石油化学プラントなど大規模工場の電力安定化需要を狙う。太陽光や風力向けパワーコンディショナー(電力調整装置)なども生産する。パワエレ機器で15年度に約120億円の売上高を目指す。

 日立はインド事業を強化するため、11年から「日立インド」を地域統括会社に位置づけ、現地主導でグループ全体の戦略を進める体制に変更した。今後は社会インフラや情報通信分野における研究開発の現地化も進める。昨年10月にはベンガルールに開設した拠点の人員を順次拡大していく。

 一方、電力システム事業では現地企業のBGRエナジーシステムと合弁(日立グループはマイノリティー出資)を組み、ボイラや火力発電用タービン・発電機を生産する予定。しかし、火力発電設備は14年に1月をめどに三菱重工業との事業統合を発表。三菱重工も現地のラーセン・アンド・トウブロとボイラや蒸気タービン・発電機の合弁があり、両社のインドにおける提携の枠組みを再検討する。

インドに700億円投資


 日立製作所は13日、インドのニューデリーで海外初の取締役会を開き、インドでの事業戦略を発表した。2015年度までに累計で700億円の設備投資を実施し、人員もほぼ倍増に当たる1万3000人に増やす。インフラ設備や建設機械の生産を拡大するほか、自動車部品の新工場も立ち上げる。併せて、インドをアフリカや中東への事業展開の拠点に位置づける。売上高は前回計画より上積みし、15年度に3000億円(11年度実績1000億円)を目指す。

 同日、中西宏明社長がニューデリーで会見し「インドには高いエンジニアリング力があり、日本のモノづくりのノウハウなどと融合し中長期でインフラ整備に貢献したい」と話した。事業拡大に合わせプロジェクトファイナンスなど資金調達の多様化を進める考えも明らかにした。

2013.12 ワシントン


 日立製作所は2015年度に北米での売上高を12年度比50%増の1兆2000億円とする方針を明らかにした。今年5月に発表した中期経営計画では約1兆円を見込んでいたが、IT事業などを核に2000億円程度を積み上げる。IT以外では自動車部品や自動車向けの材料もけん引役になる。
 
 3日(米国時間)ワシントンで開いた事業説明会で中西宏明社長は「5月の中計の発表時に比べ、さらに大きく伸ばせるとの思いが強くなった。北米では製品を売るというアプローチではなくソリューションがビジネスになる」と話した。

 具体的な取り組みとしては、IT部門の現地子会社である日立データシステムズと、日立コンサルティングの顧客基盤を強化し、他の社会インフラ事業へ横展開していく。ビッグデータ(大量データ)事業では顧客の経営戦略に入り込む案件の獲得を目指す。

 12年度の北米事業の売上高は約8000億円で、今年度は自動車機器などの販売が好調で9000億円台半ばまで伸びる可能性がある。15年度については、1兆1000億円まではほぼ見通しが立っているという。

 ワシントンでは取締役会も開催。海外での取締役会は昨年のインドに続き2回目。中西社長は「米国在住の各事業の経営トップと取締役が直接意見交換でき良い会議になった」と意義を強調した。今回、執行側の本社部門から長期的な北米市場への成長力について説明があり、18年度には最大で売上高を1兆6000億円程度まで伸ばせる潜在力があるとした。

 日立の北米事業は80―90年代まで売り上げの半分以上を半導体が占め、その後、テレビやハードディスク駆動装置(HDD)も手掛けたがすべて撤退。中西社長は「事業ポートフォリオがダイナミックに変化しながらもまだ8000億円ある。それが北米市場の健全性だ」と話した。

日刊工業新聞2015年09月03日 4面

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

3年前のインド、2年前のワシントンは同行取材をさせてもらった(昨年は海外で開催せず)。海外での取締役会は川村前会長(現相談役)の強い意向で始まった。原則、全取締役が参加で、準備するスタッフはかなり大変なのだが、現地の空気を吸いながら議論するのは悪いことはでない。現地での事業戦略とセットになっていて会見も行うが、地元メディアの報道でどの程度「HITACHI」のブランド力があるか、関心が持たれているかも実感できる。

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