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ユニチカ、成長戦略でカギを握る「糸」の技術

注連社長が描く競争領域。繊維事業の力を他分野に生かせるか
ユニチカ、成長戦略でカギを握る「糸」の技術

注連社長

 ユニチカが金融機関などから375億円の融資を受け、事業構造改革を始めて1年がたった。低採算・非中核部門を対象に、7子会社・5事業部門の売却や事業縮小・撤退を決断した。2015年3月期連結決算では、売上高が減少の一方で営業利益が前期比約31%増となるなど収益性改善効果も出始めた。これまでの評価や2年目の戦略について注連浩行社長に聞いた。
 
 ―構造改革の進捗(しんちょく)は。
 「当初は14年度中に事業整理を終えたいと言っていたが、一部実行部分は残った。整理の方向付けは終わり、ほぼ計画通り」

 ―ビニロン繊維も16年3月の生産停止を決めました。
 「国内初の合成繊維で、当社も開発に携わった繊維。事業整理の中でも特に悩んだ。ただ赤字が続き、将来改善できる見込みも少なく、生産停止を決めた。生産拠点の坂越事業所(兵庫県赤穂市)の活用方法については現時点では白紙だ」

 ―ポリエステル短繊維の生産縮小状況は。
 「2年後をめどに年1万トン弱に生産縮小する予定だったが、1万数千トンで落ち着きそう。一部不採算品目で顧客から供給継続要請があったため、値上げを受け入れてもらう前提で生産継続を決めた」

 ―15年度は成長戦略の実行が課題です。
 「トップシェア、もしくは独自技術の製品を伸ばす。国内・アジアトップシェアのポリエステルスパンボンド不織布は、40億円を投じてタイ子会社の生産能力を17年に年1万トン(現在は年4000トン)に増強する。建築土木資材や自動車用マット向けに需要拡大を見込む。稼働後2―3年でフル操業を目指す」

 ―樹脂やフィルム部門の成長戦略は。
 「樹脂に30億円、フィルムに20億円を投じる計画。耐熱ポリアミド樹脂『ゼコット』の量産プラント設置については、15年度中の意思決定を目指す。フィルムはバリアー性に優れた包装用ナイロンフィルムなどに10億円を投じて設備改造する」

 ―事業整理で収益性が改善していますね。
 「不採算事業をやめれば赤字は止められる。今後の収益源を生み出す成長戦略を実現する方が難しい。今年度に成長戦略を進められるかどうかが、改革成否のカギを握る」
 
 【記者の目/成長戦略実現へ改革本番】
 今後は規模でなく、収益性を重視した経営を進める。「現中期経営計画の最終年度である17年度に、営業利益率10%を前倒しで達成したい」と話す。高収益性を実現できれば負債の返済も進み、より健全な体質ができる。そのためには成長戦略の実現が不可欠となる。これからが改革の本番だ。
(聞き手=山路甲子)
日刊工業新聞2015年09月02日 素材・ヘルスケア・環境面
峯岸研一
峯岸研一 Minegishi Kenichi フリーランス
 注連社長は、今後の収益源を生み出す成長戦略の実現を強調していますが、そのためにコア・コンピタンスを伸ばすことが最優先されます。ユニチカのコア・コンピタンスと言えばスパンボンドやスパンレースの不織布事業でありナイロンフィルム「エンブレム」が挙げられます。  しかし、忘れてならないのは、これまでユニチカの技術シーズを牽引して来た繊維事業です。長年に亘り培った糸作りから加工に至る技術力は侮れません。成長戦略にとって、繊維事業が保持している技術力を他事業に活かすことも不可欠です。

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