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機械翻訳全盛、いまこそ必要な“プロ”翻訳者の役割とは?
**機械翻訳の精度向上
近年、人工知能(AI)技術の発達で機械翻訳(MT=Machine Translation)の精度向上が著しい。ある分野に特化すればお金をかけて機械翻訳をカスタマイズすることで、人間の手直しをほとんどしなくても、例えば日本語から英語、英語から日本語の文章が全体の9割ほどを正確に訳すこともできるという。人によっては、「数年のうちに文章全体を完璧に翻訳できるようになる」と予測する人もいる。
実務翻訳の団体である日本翻訳連盟(JTF、東京都中央区)の東郁男会長は、「機械翻訳の技術向上やそのスピードはめざましいものがある」と指摘。ただ、だからといって、「機械翻訳によって翻訳者の職が奪われることはない」と考えている。
その理由の1つは、人間による翻訳と現在の機械翻訳による「翻訳の質」の差が挙げられる。
確かに「Google翻訳」などに代表される機械翻訳の精度は年々向上している。しかし、機械によって翻訳された文章には、いまだ誤訳や訳の漏れがある文章も多いのも事実だ。
最近では大阪メトロの「堺筋線」を「Sakai Muscle(サカイマッスル)」と誤訳したまま、大阪メトロの外国語ページに掲載していたことが話題を呼んだ。機械翻訳サービスを使ったものの、確認不足で生じてしまったミスのようだ。機械翻訳のエンジンで「堺筋線」という名称が十分に学習されておらず、このような間違いが生じたのかもしれない。
正しい使い方をしなければ、機械翻訳だけではこうした初歩的なミスが起きてしまうこともある。
しかし実際のところ、「確実にこの内容を伝えるため、費用や時間をいくらかけても良いので、人によって翻訳してもらいたい」という需要もあれば、「多少翻訳のクオリティが落ちたとしても、読んでユーザーに伝わる内容でさえあれば良い」と機械翻訳を選ぶ人もいる。
例えば、海外の通販サイトやニュースサイトに掲載されている情報や記事に対して、「だいたいの内容を理解することが出来れば良い」という考えの人も多く、瞬時に翻訳できる機械翻訳は重宝されやすい。つまり単に「読むための翻訳」としてなら、機械翻訳は現在でも十分活用できる。今後、こうした「読むことさえできればいい」という考えの人は一層増えていきそうだ。
一方、機械翻訳の精度が向上しても、人による最終的なチェックが欠かせない場面も確実に存在する。前述の「堺筋線」のように、学習精度が未熟だったり、一見なめらかな翻訳文のように見えても、見つけにくいところに間違いがあるなど、翻訳の最終的な品質を担保するためにも、人間の関与は求められる。代表的な事例でいえば、訴求力が必要なマーケティング的な翻訳や、動画の字幕など、単に翻訳しただけでは実際の使用に耐えないようなシーンが挙げられる。
機械翻訳によってできあがった文章を人の手によって修正する作業は「ポストエディット(Post Edit)」と呼ばれる。こうしたポストエディットの重要性は、機械翻訳が今後一層普及するからこそ、ますます高まるといえる。
では、足下の翻訳者の需要どうなのだろうか。データをみると、翻訳需要は着実に伸びている。米調査会社Nimdziによると、「世界全体の翻訳需要は確実に伸びており、市場成長率は6~7%の高水準」にあるという。これは中国の国内総生産(GDP)成長率(2017年は前年比6.9%増)に匹敵する数字だ。グローバル化の進展で世界がどんどんつながる中、翻訳需要はその恩恵を受けているわけだ。
しかし、翻訳するコンテンツ自体は増えているにも関わらず、意外なことに日本ではそれを翻訳する“プロ”の翻訳者が足りていないのだという。「私はビジネス英語が使える」と安易な考えで副業的な感覚で手を出す人や、「多少のミスはある」ということを前提に、早さ・安さを売りにする人もいるため、質の低い翻訳が横行している。翻訳人材の育成は喫緊の課題だ。
東会長は「翻訳は、『堺筋線』が『サカイマッスル』と訳されていた時の様に、ミスをしたときだけ話題に上がる。しかし、プロの翻訳者はそうしたミスが出ないよう、細心の注意を払いながら必死に取り組んでいる。グローバル化が進展する世の中で、翻訳者たちはコミュニケーションを支える者として世の中に貢献している、ということを知ってもらいたい」と強調する。
翻訳業に携わる人々の活動を広く多くの人に知ってもらう機会として、日本翻訳連盟は今年から9月30日を「翻訳の日」に制定した。
また、翻訳・通訳業界の情報交換、そして業界の動向を広く発信する場として、翻訳・通訳業界最大のイベントである「第29回JTF翻訳祭2019」が10月24日に横浜市西区のパシフィコ横浜で開かれる。
翻訳業界の現状や翻訳者の役割など多数の講演、セミナー、企業展示など業界関係者と直接、議論できる場を用意しており、翻訳業界の未来を知る機会として、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。
第29回JTF翻訳祭2019公式サイト
https://www.jtf.jp/29thfestival
翻訳の日制定記念協賛社
株式会社サン・フレア、Globalization & Localization Association、クエステルトランスレーションズ(マルタイリングジャパン株式会社)、株式会社コングレ・グローバルコミュニケーションズ、株式会社知財コーポレーション、株式会社アスカコーポレーション、株式会社アビリティ・インタービジネス・ソリューションズ、株式会社RWS グループ、株式会社インターブックス、株式会社ウィズウィグ、株式会社川村インターナショナル、凸版印刷株式会社、株式会社翻訳センター、アイエム翻訳サービス株式会社、アイ・ディー・エー株式会社、アジア太平洋機械翻訳協会、株式会社アミット、株式会社アメリア・ネットワーク、RWS Moravia、SDLジャパン株式会社、株式会社オレンジ社、株式会社クロスランゲージ、株式会社GLOVA、株式会社高電社、株式会社サンビジネス、ゼットエー株式会社、宝印刷株式会社、DNA Media 株式会社、株式会社十印、なりた医学翻訳事務所、日本規格協会グループ、株式会社日本ユニテック、百年国際商務有限公司、ブレインウッズ株式会社、株式会社ホンヤク社、株式会社ホンヤク出版社、株式会社メディカル・トランスレーション・サービス、YAMAGATA INTECH 株式会社、ライオンブリッジジャパン株式会社、株式会社リンギトロニクス>
近年、人工知能(AI)技術の発達で機械翻訳(MT=Machine Translation)の精度向上が著しい。ある分野に特化すればお金をかけて機械翻訳をカスタマイズすることで、人間の手直しをほとんどしなくても、例えば日本語から英語、英語から日本語の文章が全体の9割ほどを正確に訳すこともできるという。人によっては、「数年のうちに文章全体を完璧に翻訳できるようになる」と予測する人もいる。
実務翻訳の団体である日本翻訳連盟(JTF、東京都中央区)の東郁男会長は、「機械翻訳の技術向上やそのスピードはめざましいものがある」と指摘。ただ、だからといって、「機械翻訳によって翻訳者の職が奪われることはない」と考えている。
その理由の1つは、人間による翻訳と現在の機械翻訳による「翻訳の質」の差が挙げられる。
「Sakai Muscle」!?
確かに「Google翻訳」などに代表される機械翻訳の精度は年々向上している。しかし、機械によって翻訳された文章には、いまだ誤訳や訳の漏れがある文章も多いのも事実だ。
最近では大阪メトロの「堺筋線」を「Sakai Muscle(サカイマッスル)」と誤訳したまま、大阪メトロの外国語ページに掲載していたことが話題を呼んだ。機械翻訳サービスを使ったものの、確認不足で生じてしまったミスのようだ。機械翻訳のエンジンで「堺筋線」という名称が十分に学習されておらず、このような間違いが生じたのかもしれない。
正しい使い方をしなければ、機械翻訳だけではこうした初歩的なミスが起きてしまうこともある。
しかし実際のところ、「確実にこの内容を伝えるため、費用や時間をいくらかけても良いので、人によって翻訳してもらいたい」という需要もあれば、「多少翻訳のクオリティが落ちたとしても、読んでユーザーに伝わる内容でさえあれば良い」と機械翻訳を選ぶ人もいる。
例えば、海外の通販サイトやニュースサイトに掲載されている情報や記事に対して、「だいたいの内容を理解することが出来れば良い」という考えの人も多く、瞬時に翻訳できる機械翻訳は重宝されやすい。つまり単に「読むための翻訳」としてなら、機械翻訳は現在でも十分活用できる。今後、こうした「読むことさえできればいい」という考えの人は一層増えていきそうだ。
一方、機械翻訳の精度が向上しても、人による最終的なチェックが欠かせない場面も確実に存在する。前述の「堺筋線」のように、学習精度が未熟だったり、一見なめらかな翻訳文のように見えても、見つけにくいところに間違いがあるなど、翻訳の最終的な品質を担保するためにも、人間の関与は求められる。代表的な事例でいえば、訴求力が必要なマーケティング的な翻訳や、動画の字幕など、単に翻訳しただけでは実際の使用に耐えないようなシーンが挙げられる。
機械翻訳によってできあがった文章を人の手によって修正する作業は「ポストエディット(Post Edit)」と呼ばれる。こうしたポストエディットの重要性は、機械翻訳が今後一層普及するからこそ、ますます高まるといえる。
グローバル化で翻訳需要は拡大中
では、足下の翻訳者の需要どうなのだろうか。データをみると、翻訳需要は着実に伸びている。米調査会社Nimdziによると、「世界全体の翻訳需要は確実に伸びており、市場成長率は6~7%の高水準」にあるという。これは中国の国内総生産(GDP)成長率(2017年は前年比6.9%増)に匹敵する数字だ。グローバル化の進展で世界がどんどんつながる中、翻訳需要はその恩恵を受けているわけだ。
しかし、翻訳するコンテンツ自体は増えているにも関わらず、意外なことに日本ではそれを翻訳する“プロ”の翻訳者が足りていないのだという。「私はビジネス英語が使える」と安易な考えで副業的な感覚で手を出す人や、「多少のミスはある」ということを前提に、早さ・安さを売りにする人もいるため、質の低い翻訳が横行している。翻訳人材の育成は喫緊の課題だ。
東会長は「翻訳は、『堺筋線』が『サカイマッスル』と訳されていた時の様に、ミスをしたときだけ話題に上がる。しかし、プロの翻訳者はそうしたミスが出ないよう、細心の注意を払いながら必死に取り組んでいる。グローバル化が進展する世の中で、翻訳者たちはコミュニケーションを支える者として世の中に貢献している、ということを知ってもらいたい」と強調する。
翻訳業界の未来を考える祭典「JTF翻訳祭」
翻訳業に携わる人々の活動を広く多くの人に知ってもらう機会として、日本翻訳連盟は今年から9月30日を「翻訳の日」に制定した。
また、翻訳・通訳業界の情報交換、そして業界の動向を広く発信する場として、翻訳・通訳業界最大のイベントである「第29回JTF翻訳祭2019」が10月24日に横浜市西区のパシフィコ横浜で開かれる。
翻訳業界の現状や翻訳者の役割など多数の講演、セミナー、企業展示など業界関係者と直接、議論できる場を用意しており、翻訳業界の未来を知る機会として、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。
第29回JTF翻訳祭2019公式サイト
https://www.jtf.jp/29thfestival
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