「MRJ」開発、米国からの認証取得も焦点に―試験機5機中、4機を米国で試験へ
「MRJ」10月後半に初飛行
**初飛行は10月後半
【名古屋】三菱航空機(愛知県豊山町、森本浩通社長)は31日、開発中の国産小型旅客機「MRJ」を10月後半に初飛行させると発表した。従来は9―10月としていたが、地上試験や航空当局との調整にめどがたったため、より具体的な時期を示す。
9月末をめどに初飛行を実施する週を公表する。MRJは6月上旬、初飛行に用いる試験初号機が、愛知県営名古屋空港(同)で地上走行試験を開始した。足元では強度試験などが順調に推移。8月下旬には試験2号機も格納庫から出て調整を始めるなど、機体製造も進んでいた。
今後は約200キロメートルでの高速走行試験などを実施。機体審査を担当する国土交通省航空局の許可を得た後、初飛行に臨む。初飛行は1時間程度を予定。具体的な日取りは天候など柔軟に変える考えだ。三菱航空機はこれまでMRJの初飛行を4回延期。初納入は2017年4―6月を目指している。
三菱航空機は、国産小型旅客機「MRJ」の開発・試験拠点を米ワシントン州に開設した。米ボーイングの“お膝元”である同州に拠点を持ち、初の国産ジェット旅客機の開発を迅速化する狙いだ。背景には、日本国内だけでは旅客機の開発が難しいという事情がある。
「ワシントン州にもたらす経済効果は極めて大きい」―。同州のジェイ・インスリー知事は三菱航空機の拠点開設を歓迎した。同社が開設した「シアトル・エンジニアリング・センター」は日本から派遣する約50人に加え、地元を中心に約100人のエンジニアを採用し、大きな雇用効果を期待できるためだ。
同センターは、機体納入の前提となる「型式証明」の取得に向け飛行データの解析や設計への反映などを進める拠点。三菱航空機は2017年4―6月に全日本空輸(ANA)に初号機を納める目標を掲げる。
納期まで約2年と迫る中、米国で飛ばす試験機を当初より1機多い4機とし、計約2500時間の飛行試験の大半を米国で実施する計画。試験はワシントン州など全米四つの州で進める。ワシントン州はボーイングが主力工場を構え、世界でも有数の航空宇宙産業の集積地。これまで日本国内で開発を進めてきた同社だが、今後は同州の人的リソースを最大限に活用し、「国産」の旅客機開発を着実に進める考えだ。
ただ、拠点開設の背景には、米国当局からの「型式証明」の取得を早めたい意向もあるとみられる。MRJは現在の総受注407機のうち340機が米国企業から。初号機はANA向けだが、その後は米社向けのMRJが多く控える。
今回、三菱航空機とともに米国で開発・試験作業を進める米エアロテック(同州)はボーイングや欧エアバスの機体向けに試験サービスを数多く手がけ、米連邦航空局(FAA)の型式証明取得ノウハウにも長(た)けている。機体の審査や型式証明の交付はあくまで日本の国土交通省だが、国内だけでは見えにくいFAAの要求事項にも米国地盤のエキスパートなら対応しやすい。
耐寒試験など日本国内の施設で実施できない試験もあり、国内では旅客機開発のインフラが不十分だ。4月に国内初飛行したビジネスジェット「ホンダジェット」も、ホンダが米国子会社で開発し、米国で飛行試験を進める。MRJもこうした障壁を乗り越え、主に米国での試験を経て開発される旅客機ということになる。
【名古屋】三菱航空機(愛知県豊山町、森本浩通社長)は31日、開発中の国産小型旅客機「MRJ」を10月後半に初飛行させると発表した。従来は9―10月としていたが、地上試験や航空当局との調整にめどがたったため、より具体的な時期を示す。
9月末をめどに初飛行を実施する週を公表する。MRJは6月上旬、初飛行に用いる試験初号機が、愛知県営名古屋空港(同)で地上走行試験を開始した。足元では強度試験などが順調に推移。8月下旬には試験2号機も格納庫から出て調整を始めるなど、機体製造も進んでいた。
今後は約200キロメートルでの高速走行試験などを実施。機体審査を担当する国土交通省航空局の許可を得た後、初飛行に臨む。初飛行は1時間程度を予定。具体的な日取りは天候など柔軟に変える考えだ。三菱航空機はこれまでMRJの初飛行を4回延期。初納入は2017年4―6月を目指している。
開発の主戦場は米国へ
三菱航空機は、国産小型旅客機「MRJ」の開発・試験拠点を米ワシントン州に開設した。米ボーイングの“お膝元”である同州に拠点を持ち、初の国産ジェット旅客機の開発を迅速化する狙いだ。背景には、日本国内だけでは旅客機の開発が難しいという事情がある。
「ワシントン州にもたらす経済効果は極めて大きい」―。同州のジェイ・インスリー知事は三菱航空機の拠点開設を歓迎した。同社が開設した「シアトル・エンジニアリング・センター」は日本から派遣する約50人に加え、地元を中心に約100人のエンジニアを採用し、大きな雇用効果を期待できるためだ。
同センターは、機体納入の前提となる「型式証明」の取得に向け飛行データの解析や設計への反映などを進める拠点。三菱航空機は2017年4―6月に全日本空輸(ANA)に初号機を納める目標を掲げる。
納期まで約2年と迫る中、米国で飛ばす試験機を当初より1機多い4機とし、計約2500時間の飛行試験の大半を米国で実施する計画。試験はワシントン州など全米四つの州で進める。ワシントン州はボーイングが主力工場を構え、世界でも有数の航空宇宙産業の集積地。これまで日本国内で開発を進めてきた同社だが、今後は同州の人的リソースを最大限に活用し、「国産」の旅客機開発を着実に進める考えだ。
ただ、拠点開設の背景には、米国当局からの「型式証明」の取得を早めたい意向もあるとみられる。MRJは現在の総受注407機のうち340機が米国企業から。初号機はANA向けだが、その後は米社向けのMRJが多く控える。
今回、三菱航空機とともに米国で開発・試験作業を進める米エアロテック(同州)はボーイングや欧エアバスの機体向けに試験サービスを数多く手がけ、米連邦航空局(FAA)の型式証明取得ノウハウにも長(た)けている。機体の審査や型式証明の交付はあくまで日本の国土交通省だが、国内だけでは見えにくいFAAの要求事項にも米国地盤のエキスパートなら対応しやすい。
耐寒試験など日本国内の施設で実施できない試験もあり、国内では旅客機開発のインフラが不十分だ。4月に国内初飛行したビジネスジェット「ホンダジェット」も、ホンダが米国子会社で開発し、米国で飛行試験を進める。MRJもこうした障壁を乗り越え、主に米国での試験を経て開発される旅客機ということになる。
日刊工業新聞 2015年08月31日&09月01日付 機械・ロボット・航空機面記事を再編集