日南市のPRを担うリクルート人材!マーケティング専門官の地方創生プランとは?

けんすう氏やスドケン氏から刺激。「地方生活の方がコミュニティーに多様性がある」(田鹿倫基)

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田鹿氏の母校・宮崎大は16年4月に「地域資源創成学部(仮称)」を新設予定。次のリーダーを担う子どもたちを育成
 日南市役所(宮崎県)にマーケティング専門官という聞き慣れない職種がある。その任に就く田鹿倫基(30歳)は、リクルートで新事業立ち上げなどに関わり、Uターンで地元に戻ってきた。田鹿らの発想と行動は、「地方創生」の新しい可能性を秘めている。
 【市長選が転機】
 田鹿の人生を変えたのは昨年の日南市長選。宮崎県職員だった崎田恭平(35)が現職を破り当選。崎田と飲み友達だった田鹿は、選挙前に地域経済政策の公約作りを頼まれた。「まさか当選すると思っていなかった。のんきに万歳していたら、お前が作ったんだからやれ」と言われた。

 田鹿は宮崎大学在学中、ボランティアで商店街の活性化に取り組んだ。将来はこの仲間と一緒に仕事をしたいと思ったが、このままでは未来が見えなかった。全国のシャッター商店街の再生はほとんど成功していない。理由は単純。商店街の人たちが本当に困っていないからだ。

 「蓄えや年金もあるしここで生活したいと思っている。昔のよい思い出がある人が、感傷的に『行政なんとかしろ!』と言っているんです」。田鹿は視野を広げるため宮崎を出る決意をする。入社したのが一番経験が積めそうなリクルート。

 【スピード感経験】
 配属された事業開発室には、ナナピ社長の古川健介ら今をときめく起業家予備群がごろごろいた。田鹿は「インターネットの『いろは』が分かったし、大企業にいながらベンチャーのスピード感を経験できた」という。「地方自治体×ベンチャー」を地方活性化のキーワードに掲げるのも、そこでの体感と人脈があってこそだ。

 多くの地方自治体の企業誘致の対象は大手企業の工場。田鹿は当初から眼中になく、最近は宮崎市のITベンチャーが拠点を設ける事例も出てきた。「IT企業と同じ目線で使う言葉も分かる。条例の書き方や議員さんとの付き合い方にも慣れてきた。他の市町村と誘致合戦になっても勝てる要素は高い」と田鹿。

 人材獲得などでもベンチャーの力を全面的に活用している。7月に地域資源を使って雇用を生み出すプロジェクトチームが発足したが、簡単な仕事ではない。スキルがあって東京などでバリバリ仕事している人に来てもらいたかった。大手の求人サイトに募集しても待遇面で勝てない。注目したのが、「仕事への共感」を打ち出し急成長中のウォンテッドリー(東京都港区)のソーシャルリクルーティングサービス。70人以上の応募があり、日南に縁がない人を含め2人を採用できた。

 【福岡市に注目】
 田鹿には多様性と危機感のあるところにしかイノベーションが起こらないという確信がある。地方にはそれが両方あるという。東京や中国にいた時はいつも同じ業界の人間とばかり付き合っていた。「今は2歳児から90歳の老人まで。職種も幅広い。地方生活の方がコミュニティーに多様性がある」。

 同時に危機感もある。人口減少が止まらず、今も1日に2人ずつ減っている。出生率は1・7と高いが、若年女性の流出が多い。地域経済の活性化は人口問題に帰結する。田鹿が最近注目するのが福岡市だ。国際戦略特区に選ばれ「うらやましいくらい恵まれている」と話すが、「福岡コバンザメ作戦」と称し、連携しながら彼らがカバーできないビジネスを拾っていく考えだ。
 流山市(千葉県)など民間人の登用で、住民を意識した選択と集中の行政運営を指向する自治体も出始めている。地方創生政策は「悪い流れではないが、補助金の受け取り側のマインドが変わらないと意味がない」。田鹿の任期は市長と同じあと2年半だ。(敬称略)

日刊工業新聞2014年12月22日 モノづくり面

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

田鹿さんに最初にお会いしたのが昨年。しょっちゅう東京に来られて県事務所、霞が関、ITベンチャーと情報交換やしかけ作りに奔走している。地方自治体にももっとこういう人が出てくれば、地方創生も「生きた」プランになるはず。

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