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「豚コレラ」の感染拡大止まらず 豚肉輸出に暗雲も

野生のイノシシがウイルス媒介?
「豚コレラ」の感染拡大止まらず 豚肉輸出に暗雲も

「豚コレラ」の感染拡大を防ぐには(イメージ)

 家畜伝染病「豚コレラ」の感染拡大が止まらない。2018年9月に26年ぶりに感染が見つかり、岐阜県や愛知県を中心に拡大。19年7月以降は三重県、福井県にも広がった。

 豚コレラにはワクチンがあり、飼養豚へのワクチン接種が拡大を封じ込める早道となる可能性は高いという。ところがこの方法を採ると国際獣疫事務局(OIE)から日本が「清浄国」と認められなくなり、豚肉輸出にブレーキがかかることが懸念される。

 農林水産省は県単位などエリア限定で接種を行い、エリア以外の清浄国を維持できる可能性を模索している。実施エリアでは飼養豚をトレーサビリティー(履歴管理)の確保などにより同一エリア内で消費を完結する仕組みなどが求められるという。感染拡大が止まらない現状を踏まえ、早期にこのモデルを構築し、必要に応じていつでも適用を広げる体制をつくることが必要ではないだろうか。

 感染が拡大したのは、把握するのが難しい野生のイノシシがウイルスを媒介しているため。イノシシは群れで活動し、群れごとに移動しながらウイルスの感染経路も広がっている。これまで農水省や関係自治体は養豚業者の飼養豚衛生管理の徹底により豚コレラの終息に努めてきた。それでも対策から漏れるように感染エリアが広がってしまった。

 養豚場で感染が出れば全頭を殺処分しなければならず、支援措置はあるとはいうものの事業を再開するのは容易ではない。それ以外の養豚場はいつ迫ってくるか分からないウイルスに戦々恐々としている。

 吉川貴盛農水相は「ワクチン接種をただちに行う状況ではない」と述べ、慎重な姿勢を見せる。ただ「全国の関係者の合意形成を前提として、視野に入れていないわけではない」とも述べており、検討を進める。

 一方で、野生イノシシの感染を食い止めない限り問題は解決しないという指摘もある。しかし今、打てる対策を早期に実施しなければ、後で取り返しがつかなくなるリスクもある。

日刊工業新聞8月15日(オピニオン)

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