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続・ジャパンディスプレイは本当にシャープの液晶事業が必要なのか

スマホ依存からの脱却。「IGZO」の使い道は?
続・ジャパンディスプレイは本当にシャープの液晶事業が必要なのか

スマホ向け4・1型IGZO液晶(左)とJDIの反射型カラー液晶

 ジャパンディスプレイ(JDI)が2020年3月期までに、反射型液晶パネル事業を1000億円以上の事業規模に育てる方針を打ち出した。カラーでも明るい像を表示できる独自技術を採用した付加価値製品を切り札に、これまで反射型液晶が使われていなかったデジタルサイネージ(電子看板)などの新分野を開拓する。JDIはスマートフォン向け液晶パネルへの依存度が高いことが経営課題の一つ。収益の安定化に向け、反射型液晶は重要な役割を担う。

 反射型液晶は太陽光や照明の光を内部で反射させて像を表示する。明るい環境下でも視認性が高いほか、バックライトが不要なため大幅に消費電力を削減できるのが特徴。ただカラー化すると、カラーフィルターの影響によって光の反射率が低下し、像が暗くなってしまう難点があり、普及が進んでいなかった。

 課題解決のためJDIは、(1)光を正面方向に集中して反射させる技術(2)電極にアルミニウムの代わりに反射率の高い銀を使う技術(3)RGB(赤緑青)に加え画素に白を加える技術「ホワイトマジック」―の三つの技術を採用した。スマホ向け液晶で培ったノウハウを生かした。

 有賀修二JDI社長は「(従来技術と比べ)色の再現性を高めることができた。反射型液晶の良さを見直してもらえる」と胸を張る。反射型液晶の専任部隊を立ち上げ、ウエアラブル端末、ハンディターミナルなどの産業用端末、電子棚札、屋外用などの特殊モニター、デジタルサイネージの5分野を重点開拓する。

 特に注目されるのはデジタルサイネージ。これまで反射型液晶が使われなかった分野であり、「ある意味で新たなインフラをつくる」(有賀社長)。デジタルサイネージメーカーやコンテンツ制作会社などとの連携も視野に入れる。部材メーカーという枠を超え、「配信ごとに課金収入を得るようなビジネスにも参画したい」(同)と構想を練る。

 JDIは売上高のうち、スマホを中心とするモバイル機器向け液晶パネル事業が80%を占める。スマホ向け液晶は変動制が高く、その動向が大きく業績を左右する。

 収益を安定させるため、モバイル機器向け液晶以外の分野の、売上高比率を20年までに30%に引き上げる計画。この戦略の中で反射型液晶を車載向け液晶、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)とともに重点事業に位置づけた。反射型液晶を“ノンモバイル”のけん引役にどう育てるか。有賀社長の手腕が試される。
(文=後藤信之)

IGZOを年内に57インチまで拡大、新用途開拓へ


日刊工業新聞2015年4月22日付


 シャープはIGZO(酸化物半導体)液晶の展開サイズを年内にも最大で57型(インチ)まで拡大する。技術供与先の中国液晶メーカー・CECパンダと合弁で、シャープも8%出資する最新液晶工場(南京市)で生産する。テレビ向けに加え、高精細化ニーズがある医療や業務、教育用ディスプレーなどで採用を狙う。シャープは経営再建の途上にあるが、量産技術で先行するIGZO事業は引き続き拡大させる。

 国内生産するIGZO液晶はスマートフォン用などの中小型が中心で、現状最大サイズは32型業務用モニターまで。高精細IGZOと高感度タッチパネル技術などの組み合わせで付加価値を高め、産業用途の開拓を進める。

 CECとの合弁工場は今春始動し、年内に本格稼働する。第8・5世代液晶パネルの最新ラインで、シャープのIGZO技術を導入している。ガラス基板ベースで月6万枚の生産能力になるとみられ、シャープは生産分の約3分の1を引き取れる権利を持つ。スマホやタブレット向けなどの中小型液晶がメーンだが、大型も手がける。

 10型以下の中小型液晶分野は高精細なLTPS(低温ポリシリコン)液晶の採用が増えつつあるが、生産コストや大型化が課題。一方の低消費電力が特徴のIGZOは解像度がLTPSより劣るものの、その差は縮まってきている。タッチパネルとの親和性があり、市場で主流のアモルファスシリコン(a―Si)液晶と同等の製造プロセスで、大型ガラス基板に対応する利点がある。
日刊工業新聞2015年07月01日 電機・電子部品・情報・通信面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
スマホ用以外の用途をどう作り出していくかは液晶メーカーにとって継続的な課題。アップルはアイフォーン向けにLTPSへ投資してきたのでIGZOを使うことはないだろう。IGZOもJDIのホワイトマジックも日本が誇る技術で、いかに流出を避けながら搭載量を増やしていくか。低消費電力などIGZOの技術をどう評価するかも、今回のディールの一つポイントになりそう。

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