VC投資、2014年度は35%減。前年度の伸びは「一過性」なのか?

国内向けは堅調、投資の大型化が進む

 ベンチャーキャピタル(VC)が2014年度に実施した投資額が前年度に比べ35%減の1171億円だったことが、ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)の調査(速報)で分かった。

 1818億円まで回復した13年度比では大幅な落ち込みとなったが、国内向けは堅調。国内向け投資額は前年度比3・1%増の740億円、1件当たりの投資額も初めて1億円を超えるなど、投資の大型化が進んでいる。

 他方、海外向け投資額は同61%減の418億円で、VECでは「13年度の伸びは一過性のもの」とみている。新規ファンドの組成数は39件と08年秋のリーマン・ショック前の07年度と同数だが、組成金額は13年度並みの911億円にとどまり、ピーク時の05年度に比べると3割の水準だ。

 業種別では引き続きIT関連が全体の半数以上を占めており、「バイオ・医療・ヘルスケア」が16%とこれに続いている。ステージ別動向では「シード+アーリー」の比率が13年度の64・5%から57・2%に減少し、逆に「エクスパンション」が20・8%から27・8%に増加している。

ベンチャーの巨匠たちの卓見


日刊工業新聞2015年4月6日付


事業構想大学院大学学長・清成忠男氏「新事業の成否は構想力」


 ―2013年度のベンチャーキャピタル(VC)投資額は前年度比8割増。新規の株式公開も増えています。ベンチャーの活力がもたらす経済成長へ期待が持てますか。
 「イノベーション(技術革新)を起こす企業は、経済情勢にかかわらずいつの時代も一定割合存在しており(投資環境など)ブームに左右されるものではない。日本ではベンチャーが育たないと言われて久しいが、果たしてそうなのか。ソフトバンクや楽天、ユニクロは元はベンチャー企業ではないか。(特定分野や市場で競争力を発揮する)隠れたチャンピオンは潜在的に存在する」

 「一方で、長らくデフレが続いてきたことがベンチャーの活躍に水を差してきた面は否めない。デフレは新たな事業に挑む若者にとってビジネスチャンスを見いだすことを困難にする」

 ―起業倍増へ向け政府は支援環境の整備を打ち出しています。どんな施策を講じるべきですか。
 「通産省(当時)がベンチャー支援策を模索し始めた40年ほど前、ベンチャー経営者数人を役人に引き合わせたことがある。彼らは一様に政府にこう言った。『何もしてくれなくていい。ビジネスの邪魔だけはしないでくれ』と。その本音は今も変わっていないのではないか」

 ―政権の看板政策である地方創生でも地域発ベンチャーを生み出すことが重要課題です。
 「全国満遍なくベンチャーを生み出そうとする施策はナンセンス。地域の中で、新たな事業や技術革新に挑む土壌が培われているからこそ独創的な企業が生まれ、それをモデルにして新企業が次々に続く。結果として新たな産業集積が構築される。浜松はもとより、LED(発光ダイオード)トップメーカーの日亜化学工業が本社を置く阿南市を中心にLEDバレー構想を進める徳島県のように、伸びる企業や地域をエンジンに周辺を活性化する発想が求められる。政府が掲げる地方創生の5原則の一つ、『地域性(各地域の実情を踏まえた施策)』はベンチャー振興においても当然重視されるべきである」 

 ―これからの起業家に求められる資質は何でしょう。
 「新事業の成否は構想力にかかっている。いまや技術の芽はさまざまな場面に見いだすことができ、新たな事業機会が多発している。問われるのはこれら技術をどうまとめ上げ、独自の構想として練り上げていくか。こうした知的作業の積み重ねが革新的なビジネスをもたらす。(教育を通じてこうしたプロセスに関わることは)私自身にとっても刺激的なことである」
(聞き手=神崎明子)
 

東京大学産学連携本部教授・各務茂夫氏「解決したい思いあるか」


 ―成功する起業家に共通するものは何でしょうか。
 「起業家には、課題を解決したいという強い思いがあることが、大原則だ。多くは災害やトラウマなど、個人的な経験が背景にある。東日本大震災以降は、『社会のために何かしたい』との利他的な側面が学生などで明らかに高まった」

 「起業の際には行政の規制や大企業の反発など、さまざまな困難に直面する。強い思いはそれを乗り越える力になる。その熱意を大事にしながら、活用される顧客やシーンに具体性を持たせていくことになる」

 ―技術を核にしたVBでは、1人の創業者の資質だけでは難しい面があります。
 「そう、チームを組む柔軟性も欠かせない。自身の得意な部分をよく理解し、不足を補う人を集める力だ。発明者に対する経営者、資金提供のベンチャーキャピタル(VC)などだ。チームメンバーの専門も学際的に広がれば、立体的にものごとを見ることができる」

 ―理工系学生における起業意識は高まっているのでしょうか。
 「東大では文部科学省の『EDGE(エッジ)プログラム』を活用し、博士学生や博士研究員(ポスドク)を起業人材に育成する取り組みを進めている。必ずしも学術研究にキャリアを求めない人に『研究室の技術を基にした製品・サービスの事業プランを考えてみては』と声をかけ、プラン作成法を指導し、助言者のメンターも付ける」

 「東大には任期付きの助教や研究員が1500人以上いる。基礎研究重視の理学系研究科なども含めて、反応は悪くない。学生が自分の思わぬ資質に気付くこともある」

 ―起業の社会的な雰囲気が盛り上がる中で、課題をどうみていますか。
 「成功のモデルが出てきつつあるが、まだ個のがんばりによるものだ。周囲にVBが多数あって、自然に次につながるまでにはなっていない。成功した起業家に、次を育てる投資家のエンゼルとなってほしい。もう一つ、日本の国を挙げて『起業家ってかっこいい』と称賛する雰囲気を高めたい。一見すると奇人変人でも、新たなことを切り開く人材を大切にする意識だ」

 ―大企業への期待はいかがでしょう。
 「VBを次々生み出す“エコシステム”で欠けているのが大企業だ。米・グーグルなどは個性的な技術や事業提案に着目し採り入れているが、まだ一般的でない。コーポレートVCが再びブームといわれ、大企業とVBの連携も出始めたところ。株主が利益率の向上を求め、オープンイノベーションのマインドが強くなれば進むだろう」
 (聞き手=山本佳世子)

日刊工業新聞8月28日付4面

神崎 明子

神崎 明子
08月29日
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政府は「イノベーションの担い手の強靱化」と称して「世界と連動したベンチャーエコシステムの形成」を目標に掲げています。8月末にまとまった2016年度予算の概算要求では、起業家をシリコンバレーに派遣するなどでグローバルベンチャーネットワークを構築することや海外VCの誘致、認定したVCから出資を受けるベンチャーへの各種支援を盛り込んでいます。

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