有志で立ち上げた地域電力、大都市で描く未来図

めぐるでんき 電気購入で地域貢献支援

 旧中山道の板橋宿近くの商店街に「めぐるでんき」(東京都板橋区)のオフィスがある。通りからのぞくと小さなギャラリー風だ。渡部健社長によると地域の交流スペースになっており、実際に展示会場として使われることもあるという。

 めぐるでんきは電気を売る電力会社。板橋、北、練馬、豊島の東京北部4区を営業エリアとする。2017年に設立し、建材販売のタニタハウジングウェア、居酒屋の養老乃瀧など地元企業が顧客だ。6月から家庭や店舗への販売も始めた。

 16年の電力小売りの全面自由化後、エリアを限定した地域電力が各地で立ち上がったが、どれも自治体や既存企業が主導する。しかも地域電力は地方に多い。めぐるでんきは有志が出資し、大都市を地盤とするので、従来の地域電力とは違う。

応援金月100円


 もともと渡部社長は、電力ベンチャーのエナリスが設立した湘南電力の社長だった。16年に板橋区で開催された省エネセミナーを聴講し、主催者の藤井克昌さん(現めぐるでんき取締役)と出会った。藤井さんは住宅設計を手がけていたが、11年の東日本大震災後、エネルギー問題に関心を抱くようになった。お互いが板橋区民でもあり「板橋でも電力事業ができる」と意気投合し、起業した。

 ただし、渡部社長は「目的は地域活性化。電気の販売は手段にすぎない」と語る。ビジネスモデルも地域貢献を主眼として構築している。家庭や店舗がめぐるでんきに電力契約を切り替える時、4区内で市民が推進する社会貢献プロジェクトも選ぶ。すると電気代から月100円がプロジェクトの応援金に回る。契約者は電気の購入で地域の活動を支援できる。選んだプロジェクトが開くイベントに参加したり、商品を購入したりして直接の応援もできる。

 「地域でお金や価値を回るようにして、地域を持続可能にしたい」(渡部社長)と言葉に力を込める。大手電力に支払った電気代は地域外に流出する。めぐるでんきに支払った電気代の一部は地域にとどまり、地元で使われることで地域活性化に役立つ。

連携の輪


 地域課題解決にはさまざまな経験や技能を持った人材が求められるが、渡部社長は「都市には多様な人材がいるので、欠けているピースを見つけやすい」と語る。連携できそうな人材の豊富さが都市型地域電力のメリットだ。電気を起点に資金や価値を回し、人材が集まる求心力を生み出し、地域活性化の円を広げるのが、めぐるでんきの目標だ。

日刊工業新聞2019年7月26日

  

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