なぜ機械のデザインは美しさが求められるのか

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アマダ「EML−2512AJ」と開発者ら
 日刊工業新聞社は24日、「第49回機械工業デザイン賞」(経済産業省後援)の贈賞式を都内で開いた。最優秀賞の経済産業大臣賞にアマダとオークマが輝いた。日本力(にっぽんぶらんど)賞は、クボタとTMT神津(兵庫県三田市)が選ばれた。

 来賓の橋本文子経産省クールジャパン海外戦略室長は「高いレベルの製品が受賞にいたりうれしい。昨年、経済産業省と特許庁はデザイン経営宣言を公表した。デザインを製品開発、経営に積極活用する企業を後押ししたい」とたたえた。

 専門審査委員代表の青木弘行千葉大学名誉教授は「ハードのコモディティー化打開策としてソフトウエア開発に活路を求め、優れた操作性を訴求する製品が数多くあった」と総括。「デザインを広い意味に解釈する本制度の趣旨に照らすと、ソフト機能の充実策は非常に好ましい」と講評した。

 家城淳オークマ社長は受賞者を代表してあいさつに立ち、「社員全員がいきいきと高みを目指し、世界の製造業の発展に貢献する取り組みにしたい」と決意表明した。

最優秀賞(経済産業大臣賞) アマダ


【アマダ/高速パンチ・ファイバーレーザ複合マシン EML―AJシリーズ】

 中身も大事だが、見た目も大事―。「第49回機械工業デザイン賞」を受賞した18製品は、最先端の機能や使いやすさはもちろんのこと、見た目の美しさやシンプルな外観が際立っている。これら優れたデザインを生み出した各社の取り組みを紹介する。(18回連載)

 金属板を切断するレーザー加工機は、生産性の高いファイバーレーザーが全盛だ。本格的な活用開始からまだ10年ほどだが、主流だった二酸化炭素(CO2)レーザーに代わり、市場を席巻。しかし、切断箇所のきれいさはCO2方式に分があるとされ、精度、品質要求が一段高い精密板金市場で、CO2方式への支持は根強い。

 アマダの山梨貴昭上席執行役員は「高生産のファイバーレーザーに置き換わらなければ、日本はコスト競争力で負けてしまう」と危惧する。高生産で高品質のファイバーレーザー複合機の開発は、業界最大手である「アマダの使命」(山梨上席執行役員)と言う。

 複合機は工具(パンチ金型)とレーザーを併用する機種で、国内の精密板金市場で使われることが多い。開発陣は、ベストセラーのCO2レーザー複合機をベースに加工品質に影響する光学系、アシストガス周りの設計を「1から見直した」(平沢泰介ブランク開発部長)。

 光学関連ではレンズを新設計。広がる性質のある光を絞りつつ雑光を抑えるため、特殊な非球面レンズを完成させた。加工物に吹き付けて加工しやすくするアシストガスは、噴射部、さらに内部の配管穴まで手を加え、ガスの流れを整えた。

 結果、ファイバーレーザーでCO2方式と同等の品質を実現。従来のファイバー機に比べ、面粗さは32%改善、加工時に発生する溶融物の付着(ドロス)の高さは67%もの大幅低減を果たした。

 飛躍的な成果の背景には「総当たり的なテスト」(宮渕城之ブランク加工技術部副部長)があった。加工品質の良しあしは噴射口の大きさ、ガスの種類や圧力、光、材料の種類、厚さなど複数の要因が絡み合う。ガスの整流化は解析ソフトウエアが効果的だったが、多くの要因の条件を一つひとつ変え、実加工して試すという根気のいる作業があった。

 初期段階で専任チームが半年、第2段階では増員し、さらに半年かけ形にしていった。

最優秀賞(経済産業大臣賞) オークマ


【オークマ/次世代ロボットシステム ARMROID】

 「工作機械とロボットで何かおもしろいものができないか」。2015年5月、取締役技術本部長だった家城淳現社長が「天才肌」と見た若手設計者の森村章一氏(現第二商品開発部ROIDプロジェクト)に声をかけた。森村氏が半年後に提案したのが工作機械の加工室に内蔵するロボット「ARMROID(アームロイド)」だ。

アームロイドの開発者ら(左から藤田氏、森村氏、柴田氏)

 「思い切りやろう、加工対象物(ワーク)の出し入れだけではつまらないと思った」と森村氏。アーム先端は切削液を噴射し、切り粉除去や加工室の清掃もできる。先端を支持具に替え、長尺ワークのびびりも防止する。

 加工室内は狭く既製品のロボットは収まらない。一からのロボット開発では、工作機械と干渉せず最大5キログラムの重いワークも運べるよう4軸にし形状を詰めた。不使用時は加工室脇に収納できる。

 干渉を防ぐ制御技術もカギだった。担当した柴田知宏FAシステム本部FA開発部次長は「最初は戸惑った。実際はとても大変だった」と苦笑する。工作機械用の衝突防止ソフトウエアをロボット用に書き換えた。

 操作性も重視した。簡単操作ツール「ロイド・ナビ」で先端の始点と終点を指示するだけで、プログラミングやティーチングは不要。しかも工作機械の制御盤や位置微調整用のパルスハンド、ジョグボタンが使える。制御系だけで3人がかりで1年近くをかけた。

 搭載先はコンピューター数値制御(CNC)旋盤のベストセラー機「LB―3000EXII」だ。ワークの支持具ホルダーも内蔵しつつ「設置面積も性能もそのまま」と旋盤側の改良を担当した藤田克巳技術本部第二商品開発部長は胸を張る。

 ロボット、制御、工作機械の融合開発が、従来にないデザインと機能を具現化した。新たなスペースやシステムインテグレーターの支援、専門知識がなくても、中小企業でも容易に自動化ができる。複合加工機などへの搭載も検討している。

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