福島県から災害対応ロボットを送り出せ!

経産省が2016年度に実証や開発に使うテストフィールドを整備

  • 0
  • 0
ドローンの運用を検証する設備も整える
 経済産業省は2016年度から福島県沿岸部で、災害対応ロボットの実証や開発に使う大規模拠点(テストフィールド)の整備に乗り出す。被災地における飛行ロボット(ドローン)や自走ロボットなどを使った行方不明者の捜索や、被害を受けた建物の確認、放射線測定などを実証していく。国際標準化や人材育成に必要な施設も整え、ロボット関連企業の現地進出を促す。東日本大震災からの復興支援に加え、同県を関連産業の集積地に育成。日本がグローバル戦略の要に位置づけるロボット、防災の競争力強化につなげる。

 政府が20年度までに計1000億円の予算を設定した「福島イノベーションコースト構想」の中で「テストフィールド」と「共同利用施設」として16年度予算の概算要求に新規事業として盛り込む。9月に始める事業化調査を基に、年末に予算額と当面の事業内容を決める。16年中に立地先を選び、拠点整備に着手する。

 まず企業から要望の声が高い災害用ドローンの実証フィールドを設ける方針。地震や津波被害などを想定して盛り土や人工がれきなどを設置し、ドローンを運用管理するための発着施設や通信制御塔なども建てる。

 インフラ点検ロボットの実証のため、既存のトンネルやダムを使いたい考え。実証フィールドの規模は計4キロ―6キロメートル四方となる見通し。

 これらの事業が軌道に乗れば、海中ロボット実証用プールなども需要をみて設ける。実証試験で使ったセンサーや通信の技術・規格などを国際標準として提案できるように、データ解析用の施設の導入も検討されている。

 ロボット分野の産学連携拠点・団地も周辺に設ける。企業のほか、地元の公設試験機関や大学のサテライト研究室を誘致する。

研究者は震災以降、実証フィールドの実現を求めてきた


日刊工業新聞2014年04月16日付


 東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、災害対応分野でのロボット活用の期待が高まっている。だが災害対応ロボットは市場が確立しておらず、実用化の道筋も不透明だ。産業界の有志で構成する「産業競争力懇談会(COCN)」は、災害対応ロボットの実用化に向け、平時から研究やテストを行う専門機関を設立するという「災害対応ロボットセンター設立構想」をまとめた。構想の趣旨について、プロジェクトリーダーである東京大学の淺間一教授に聞いた。

 ―災害対応ロボットセンターは、なぜ必要なのですか。
 「災害対応ロボットは、地震や土砂崩れなどの発生時に必要な製品だが、平時にもテストや訓練が必要であり維持にコストがかかる。ユーザーは消防や警察、自衛隊に限られており市場が小さいのも問題だ。民間だけでは事業化が難しく、実用化には政府の主導が不可欠。平時の研究開発やテストを行うため、政府直轄のセンター設立が必要と考えた」

 ―災害対応ロボットセンターの仕事をどうイメージしていますか。
 「ロボットの研究開発支援のほか、実証試験や機能評価、技術や製品のデータベース化、オペレーターの訓練などを行う。運営については特定の省庁を通じて予算が割り当てられるのではなく、企業や省庁からテストごとに料金を取るような形で運営するスキームを想定している」

 ―構想では実際のセンターの建設候補地についても案を出されています。最も有力と思う候補地はどこですか。
 「福島県に置くのが最も効果的だ。災害対応ロボットの研究開発や実用化を進めるには予算や人員だけでなく、定期的に“仕事”があることが重要。福島県内の除染やがれき処理などの作業に活用することで実用化に近づくだろう」

 ―先日、同構想を政府に提言されました。政府側の反応は。
 「COCNの全体会議では、小野寺五典防衛相が『構想は防衛省にとって極めて重要。センターを設立し活用していきたい』と感想を述べていた。ただ防衛省はユーザー側の省庁。今後は構想をいかにして具体化していくかが重要だ」
 「米国の災害対応ロボット開発は軍事予算で行われているが、ロボット開発の成果は軍事だけでなく医療など他産業にも波及している。日本も災害対応ロボットに予算を投じれば、安全・安心な生活の実現だけでなく、経済全体の活性化につながるだろう」

 【記者の目/構想具現化で“巻き返し”期待】
 13年に福島第一原発事故が起きた際、最初に建屋に入ったのは米国の「パックボット」だった。東京電力が軍事用で実績のあるロボットを選んだためと言われる。その後、日本のロボットも使われたが、震災直後の報道の印象が強く、災害対応ロボットでは日本より米国が先行するというイメージを持つ人も多い。センター構想の具現化で、日本の災害対応ロボットの“巻き返し”が起こることを期待したい。
(聞き手は鳥羽田継之)

日刊工業新聞2015年08月28日 1面

COMMENT

政年佐貴惠
名古屋支社編集部
記者

東日本大震災以降、災害対応ロボットのニーズは増してきたものの、軍を持ち実証試験施設や運用インフラが整備されている米国と比較して日本はその場が少なく、実用化しづらいと研究者らは訴えてきた。ようやくその構想の実現が見えてきた。これが意味する所はもう「研究」で終わらせるのではなく、確実に「製品」に近づけなければならないということ。ぜひとも成功させて「ロボット検証の一大拠点」として産業振興につなげてほしい。

関連する記事はこちら

特集