ニュースイッチ

政府が考えるドローンの「利便性」と「安全性」の着地点

9月下旬に制度設計案をとりまとめへ
 政府は関係府省庁連絡会議を設けて、飛行ロボット(ドローン)に関する制度設計を検討している。焦点はドローンの規制と利用促進をいかに両立させるか。産業創出など新しい可能性を秘める分野だからこそ、さまざまな課題がつきまとう。9月下旬にも連絡会議を開き、制度設計案のとりまとめを行う予定だ。

 「途切れることなく制度設計を進めることが大事だ」。今月上旬に開かれた関係府省庁連絡会議で杉田和博内閣官房副長官は、ドローンを巡る環境整備の重要性を強調した。

 政府は7月に航空法の改正案を今国会に提出し、これまで規制がなかったドローンの飛行ルールを示した。空港周辺や一定高度以上の上空、人家の密集地域の上空での飛行は許可が必要と規定。日中のみの飛行とし、夜間飛行を禁止した。国会や官邸など、重要施設の上空のドローン飛行を禁じる議員立法も衆議院を通過した。

 このほか、ドローンによる撮影映像のインターネット上の公開に関する問題も浮上している。上空から個人や住居などの撮影が可能であり、同意なしに映像がネット上に公開された場合、プライバシー侵害にあたる可能性が出てくる。このため、総務省は注意すべき事項をまとめた指針を近く公表する方針だ。

 ドローンの利用促進を進める上では、安全確保に向けたルールも必要となる。経済産業省と国土交通省は一定以上の大きさの機体については、技術基準の策定や操縦者の技量水準の確認など、安全性を確保できる仕組みを検討中。小さい機体については、一律に規制を課すのではなく民間の自主的な取り組みを促す考え。ドローンの事故情報の把握や事故防止の仕組み、保険加入の取り組みなども考慮すべき項目だ。

 政府はこうした関係府省庁の議論を踏まえ、制度設計案をとりまとめる。「必要に応じて法律改正も検討する」(内閣官房副長官補室)。産業創出につながる利用促進と、安心・安全を確保する規制のバランスのとれた内容が求められる。

警察庁、侵入ドローンに妨害電波


 警察庁は27日、飛行ロボット(ドローン)が重要施設などに侵入するのを防ぐ資機材を導入することを決めた。妨害電波を発して飛行不能にしたり、ネットで捕獲したりする資機材を調達する方針。2016年度予算の概算要求に購入費として約4億円を計上した。

 ドローンをめぐっては、発煙筒などを搭載した無人機が4月、首相官邸の屋上に落ちているのが発見された。国会では現在、官邸、皇居、最高裁、原発など重要施設の周辺や、人口密集地域などの上空を飛行禁止とする法案が審議されている。

 飛行禁止になっても、テロリストらが重要施設や、サミットなど大規模な行事を攻撃する際にドローンを用いる恐れが残るため、警察庁は阻止する資機材が必要と判断。不審な無人機の接近をレーダーやカメラで探知し、妨害電波を使って飛行不能にする資機材と、特定の装置で発射され空中で広がるネットを国費で調達する。
日刊工業新聞2015年08月27日/ 28日2面
田鹿倫基
田鹿倫基 Tajika Tomoaki 日南市 マーケティング専門官
ドローンは本当にたくさんの可能性を秘めているため、安全性を担保した上で、利便性をどこまで向上できるかがポイントになる。例えば地方では集落が点在し、民家がバラバラに点在しており、その分物流コストも高くついてしまう。そのため、あと10年もすればドローンを使った格安の宅配サービスが実現してい ても不思議ではない。今後のドローンの法規制と技術進化が楽しみだ。

編集部のおすすめ