ニュースイッチ

“地産地消による廃棄物削減”―自家発電ボイラ副産物を再資源化、復興工事へ

日本製紙石巻工場、石炭灰をコンクリート混和材にするプラントの建設を推進
“地産地消による廃棄物削減”―自家発電ボイラ副産物を再資源化、復興工事へ

すでに加工処理プラントのメーン設備が据え付けられた(石巻工場内)

 日本製紙は石巻工場(宮城県石巻市)で、自家発電用ボイラの副産物であるフライアッシュ(石炭灰)を高品質のコンクリート混和材にする加工プラントの建設を進めている。東北地方では東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の3県を中心に復興工事が急ピッチ。大部分が最終処分されているフライアッシュを建設資材として生かす“地産地消による廃棄物の削減”が目標だ。

 フライアッシュはセメントに一部代替することで、コンクリートの耐久性を増す効果が知られている。だが、フライアッシュを混ぜると生コンクリート状態での品質管理が難しくなり、それが普及の妨げになっていた。

 日本紙はフライアッシュの有効活用を模索する中で、大分大学発ベンチャーのゼロテクノ(大分市)が持つ加工処理技術に注目。2014年夏、共同出資で「日本製紙ゼロテクノ東北有限責任事業組合」を立ち上げ、石巻工場内で加工プラント建設に着手した。16年1月稼働に向け、すでにメーン設備の加熱改質装置(外熱式キルン)が据え付けられた。

 石巻工場で自家発電用ボイラのフライアッシュを材料に生み出される製品が、次世代コンクリート用混和材「CfFA」(カーボン―フリー・フライアッシュ)。通常、フライアッシュに5%程度含まれる未燃炭素分を加熱改良装置内で燃焼させ、1%以下にする。

 未燃炭素分は多孔質で、生コンの流動性確保などのために添加する混和剤(薬剤)を吸着しやすい。このため、フライアッシュを使う場合、従来は未燃炭素分の含有割合と使用量に応じた混和剤の配合調整など、作業が煩雑になっていた。未燃炭素分1%以下なら生コンの性状にほとんど影響せず、セメントの10―20%をCfFAに置き換えられるという。

 CfFAを使うと打設時の流動性確保と同時にセメントの水和発熱が抑えられ、乾燥初期の膨張・収縮ひび割れを防ぐ。さらにフライアッシュの主成分であるシリカとアルミナが、セメントの水和反応で生成される水酸化カルシウムと常温でゆっくり化合していくポゾラン反応により、緻密な組織に仕上がる。

 石巻工場のフライアッシュ排出量は年間約4万トン。当面、このうち1万トンを材料に加工プラントでCfFAを製造し、震災復興工事などに供給する計画だ。すでに石巻のフライアッシュをゼロテクノ本社で加工処理し、岩手県内の震災復興道路トンネル工事に試験適用している。
 
 ストック型社会の構築は時代の要請。また、電力業界では東日本大震災以降、石炭火力発電所のフル稼働でフライアッシュが増え続けており、石巻における“地産地消による廃棄物の削減”の取り組みが全国的にも注目されそうだ。
日刊工業新聞2015年08月26日 素材・ヘルスケア・環境面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
 ボイラを稼働することで増え続けるフライアッシュ(石炭灰)。再資源化の仕組みを構築できれば、廃棄物の削減だけでなく、セメント材料の原単位の低減、廃棄物の有償化によるボイラコストの低減などメリットが期待できるのではないか。

編集部のおすすめ