中国発・同時株安-企業トップはどう見たか

中国経済に楽観と悲観が交錯。金融市場の動きと、各国の実体経済や顧客の影響を見極め

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25日の東京株式市場は1万7806円70銭で取り引きを終えた(東京・日本橋)
 急激なマーケットの変動に対し、経済界は危機感を強めている。特に過去最高益を更新する輸出型産業では、円安がもたらす業績の底上げ効果が大きいだけに、先行き不透明な世界経済において、円高再燃への不安感が広がっている。「リーマン・ショックのような危機に陥らなければいいが」―。あるメーカー首脳は、今回の同時株安に直面する世界経済をこう危惧する。

 発信源と言われる中国経済については、楽観・悲観が交錯する。ある関係者は「人民元切り下げなど、中国政府は景気浮揚に手段を選ばない。中国経済は減速しつつも、崩壊することはないだろう」と推察する。“ニューノーマル”と呼ばれる中速経済への転換の過程と捉える向きは少なくない。

 一方、悲観論もささやかれる。「中国経済の減速が、シンガポールなど新興国に影響を及ぼしている。新興国の経済は明らかに悪化しつつある」(素材メーカー首脳)。中国経済の鈍化が、アジア全体に広がっていることで、ショックを増幅している感もある。
 
 「かつては米国経済が好調ならば、世界はハッピーだったが、今は中国の動向がカギを握る。世界経済が乱高下する危険性がより増している」と、ある財界首脳は分析する。

 経済のグローバル化で、ボラティリティー(変動)はより大きくなっている。グローバル化を推進してきた経済界だが、変動が激しい世界経済に、ジレンマを感じている。ルネサスエレクトロニクスの柴田英利取締役執行役員常務兼最高財務責任者(CFO)は「今般の金融市場の動きに関連し、各国の実体経済や顧客への影響がどうなるか注視していく」としている。
 

企業トップの反応は?


 【セイコーエプソン・碓井稔社長/世界経済減速も】
 中国経済の落ち込みに伴う上海市場の株価下落に端を発した不安感が、ここにきて一気に広がってしまった。一時的なものならいいが、長期化すれば世界経済全体の減速となりかねず、事業活動に影響を及ぼす。中国経済の動向に加え、南米の通貨下落やロシア経済の低迷、ギリシャ問題、米国の利上げのタイミングなど不透明な要素が多い。

 【三越伊勢丹ホールディングス・大西洋社長/長期化はない】
 株価の下落が続くと、消費マインドに少なからぬ影響を与えると思われるが、企業業績は一般的に堅調なため、長期化することはないのではないか。一方で昨年来、中間層の消費はそれほど強くない。

 【中外製薬・小坂達朗社長兼最高執行責任者(COO)/中国減速明らか】
 中国経済の先行きの不透明感は強まっており、その影響が世界の株式・為替・商品市場に及んでいるとみている。この状況がさらに深刻にならないよう見守りたい。中国経済は足元の減速は明らかであるが、やや長い目で見れば巨大市場としての魅力はある。

 【日清食品ホールディングス・安藤宏基社長/人民元安すぎた】
 株式市場は混沌(こんとん)としている。人民元はもともと経済の実力に対して安すぎた。もうすこし下げるかもしれないが、中国は将来の展望があるので深刻視はしていない。円はドルとの比較ではまだまだ円安が続くだろう。小麦、大豆、コーン、パーム油など穀物相場も下がっており、これについては見極めが必要だ。

 【ツガミ・西嶋尚生CEO/中国に底割れ感】
 (世界同時株安で)日本、米国、欧州の工作機械市況はさほど変化がないだろう。やはり気になるのは中国だ。このところ落ちていて、もう一段下がり、底割れした感がある。現地ユーザーの投資意欲がなえたのかも知れない。米国の利上げ措置は景気がいいことの証明ととらえたい。

 【キリンホールディングス・磯崎功典社長/資源頼みもろい】
 中国経済は不動産投機をみても、明らかに行き過ぎだと思っていた。株も素人が大勢、手を出していたし暴落は当然なのではないか。日本経済に対して、インバウンドは当然、影響が出るだろう。中国と同様に経済状況が悪い国は、大半が資源国。資源頼みの国の経済はもろいとの印象を持っている。

 【三井造船・田中孝雄社長/ビジネスに影響】
 急激な株安に伴う円高および最近の原油安は、当社のビジネスに影響を及ぼす要因となるため、今後の動きを注視していきたい。当社としては、現在進めている中期経営計画(構造改革)をスピード感を持って実行していく。

 【三菱電機・柵山正樹社長/次第に落ち着く】
 先行きは実体経済において大きな変化がみられる状況にないことから、各国の株式相場と為替相場は次第に落ち着きを取り戻していく。

 【日立造船・谷所敬社長/受注は堅調】
 中国の経済成長率は内需などの停滞で低下するだろうが、(環境プラント事業など)当社の中国市場における足元の受注は堅調で、今後も期待できる。今回の世界的な株安は過剰反応ではないかと考える。

 【トレックス・セミコンダクター・芝宮孝司社長/緩やかに成長】
 中国の産業機器市場などに減速感は感じる。ただ今回の世界同時株価安が世界的な経済減速につながるのかどうかは、しばらく様子を見ないと判断できない。個人的には波はあっても数年間は世界全体で緩やかに経済は成長すると考える。
 
 

日刊工業新聞2015年08月26日 3面から一部抜粋

COMMENT

村上毅
編集局ニュースセンター
デスク

 日本の実体経済は堅調で年後半に復調する、というシナリオがどうなるのか。中国政府が25日にここ半年で最大規模の資金供給をするなど、あの手この手の策を繰り出してはいるが、見かけ以上の実体経済悪さが表面化してきて、アジア諸国などへの飛び火も懸念されている。米国の利上げ時期が先延ばしになるのか、目が離せない。

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