もったいない?使われない衛星画像のゆくえ…

日本の情報収集衛星、防災に活用できないか

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「だいち2号」搭載のH-IIAロケット24号機打ち上げ(JAXA提供)
 我が国の情報収集衛星(IGS)の打ち上げが順調に進んでいる。3月26日には、より性能が向上した光学衛星5号機の打ち上げに成功した。ただ現在、政府は「安全保障上の機密」として衛星画像データを公開していない。防災目的や災害発生時の緊急対応など、利用の方法を議論すべきではないか。

 IGSは1998年、北朝鮮の弾道ミサイル「テポドン」の発射をきっかけに日本が導入した偵察衛星である。晴れた昼間などにカメラで撮影する光学衛星2機と、雨や雲など天候が悪い時に撮影できるレーダー衛星2機の計4機で運用し、1日1回以上、地球の任意の地点を観測する。過去には打ち上げ失敗や軌道上でのトラブルもあり、ようやく2013年に4機体制を確立した。3月に打ち上げた光学5号は、設計寿命5年を迎える3号の後継機だ。

 内閣官房はIGSの画像非公開について、衛星軌道や性能の細部が知られると偵察の意義が薄れることを理由に上げている。ただ政府がIGSに投じた開発費と打ち上げ費用の累計は1兆円を超える。安全保障目的だけに限定するには、高価すぎないか。

 東日本大震災では、被災地や福島第一原子力発電所の事故の模様をIGSで撮影した。しかし画像は一切公開しなかった。こうした緊急時には例外を認めるべきであろう。例えば画像データに加工処理を施して解像度を落として公開してはどうか。最新の光学5号機は、地上40センチメートル(従来は60センチメートル)の物体を識別できるとされる。1メートル以上に再加工して提供することも可能ではないか。

 4月にスタートした国の「新・宇宙基本計画」(15―24年度)では、今後のIGS4機体制維持と、そのための衛星開発計画を明記している。向こう10年間に計8機を打ち上げる予定。さらに機数を増やすなどの強化策も検討するという。日本の限られた宇宙関連予算の中で、IGSが中核的な位置づけにあることは否定できない。

 災害時や防災用としては宇宙航空研究開発機構(JAXA)の陸域観測技術衛星「だいち2号」が14年11月から本格運用に入っている。搭載レーダーで噴煙を透過し、火山の様子をとらえた映像も公開している。ただ1機では観測機会が限られる。IGSの使い方を再考し、地球観測衛星との連携や統合的な運用を検討すべきではないか。

 日本列島は地震が頻発し、全国に110以上の活火山が点在する火山国だ。平素から災害への備えをしておくことは当然である。防衛力を担う自衛隊は、災害復旧の主力として大いに役立っている。安全保障目的の偵察衛星であるIGSにも、災害時や防災への貢献を求めたい。

日刊工業新聞 2015年04月08日 総合2/国際面

COMMENT

加藤正史
論説委員会
論説委員

情報収集衛星は平たく言えば「スパイ衛星」。画像の解像度どころか、どの軌道を飛行中かも公式には非公表(公然の秘密)です。 このスパイ衛星は日本の宇宙予算の大きな部分を占めており、ロケットも衛星も、これがないと宇宙産業は成り立ちません。諸外国もそうですが、宇宙開発は安全保障と表裏一体なのです。せめて平和利用の方法を考えたいものです。

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