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満を持して無人ダンプトラックに参入する日立建機の勝算

先行するコマツとともに市場を拡大できるか。研究開発トップに聞く
満を持して無人ダンプトラックに参入する日立建機の勝算

豪州で無人ダンプトラックの実証実験を行っている

 日立建機が大規模鉱山の採掘用ダンプトラックの無人運転実現を目指している。豪州で続ける実証実験は第2段階に入り、2017年を目標とする実用化に近づく。無人ダンプは鉱山運営の効率化や安全性向上の大きな武器になる。コマツが08年に実用化したが、後発のメリットを生かして効率的に開発を進め、追い上げを図る。開発に携わる福本英士執行役研究本部長に聞いた。
 
 ―無人ダンプがなぜ必要なのですか。
 「生産性と安全性の両面からだ。鉱山運営で一番コストがかかるのがダンプ。鉱物の運搬は人間の判断が少なく、運営プロセスでは自動化に一番向いている。ダンプの運転は単純作業のため、居眠りによる追突事故が起きる危険度が高い。無人化のニーズは大きい」

 ―実証実験の第1段階での成果は。
 「09年に開発に入り、13年に豪州の発電事業者スタンウェルの石炭鉱山で始めた。3台のダンプが運行管理システムに指示された経路を逸脱せず走れるか、ショベルの積み込み場所に位置取り、荷物を積んで運べるかなど基本動作を確認した」

 ―第2段階での確認事項は。
 「顧客の鉱山で想定される事象を制御できるかを実証する。障害物の回避や、落石を検知してよけるなどだ。7月に同じ鉱山のより広い100ヘクタールの場所に試験場を移転した。無人ダンプは6台まで同時に走行できる」

 ―ダンプを仮想的に走行させる技術を開発に活用します。
 「モデルベース開発と呼んでいる。シミュレーター上に鉱山環境を入力し、ダンプ台数を設定して検証できる。シミュレーターと実際のダンプを組み合わせ、どれほど制御間隔を狭められるかを検証できる。実物すべてを動かすよりも調達コストは安くなり、開発も速められる。シミュレーションのダンプでも無線端末、コントローラーは実物を使い、実際に通信する」

 ―実用化のめどはついていますか。
 「17年には顧客の鉱山で実際の運用に入りたい。スタンウェルに購入してもらえるかもしれないし、多くの鉱山会社から話をいただいている。どの鉱山会社と一緒に組むかは検討段階だ。1、2年間検証し、19年以降に一般発売したい」
 
 【チェックポイント/グループの技術力結集】
 後発の分、最新技術を盛り込んで開発できる利点がある。先行するコマツとの差別化要因になるのが、日立製作所グループの技術力だ。日立の研究組織と連携し、モデルベース開発には自動車業界向け技術を取り入れた。鉄道信号と同じ原理の制御技術も採用している。日立グループの総合力を生かした高度な無人運転を実現できそうだ。コマツが開拓した無人ダンプ市場に日立建機が参入することによって、市場が大きく広がることが期待される。
 (聞き手=戸村智幸)
日刊工業新聞2015年08月25日 モノづくり面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
自動運転は、一般自動車よりも鉱山のマイニングといった閉じた環境で先行するだろう。人が介在せず全てオートメーション化するのは非常にメリットが高い。日立グループとしては、情報通信部門と連携したサービス領域の事業化にも注目したい。

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