クロマグロの完全養殖達成までの道のり
おすすめ本の本文抜粋「トコトンやさしい養殖の本」近畿大学水産研究所 編
クロマグロの完全養殖は2002年に近畿大学水産研究所(近大水研)において世界で初めて成功しました。
近大水研は1970年に始まった水産庁プロジェクトに参加し、クロマグロ養殖の研究をスタートしました。プロジェクトが終了してからも継続して技術開発を進めました。養殖はもちろんですが、親魚として養成し、受精卵を採ることを目的としていました。そして、1974年に収容した約800尾の幼魚が1979年(5歳)には体重70㎏となり、60尾が生残していました。6月20日の午後5時過ぎ、直径30m(深さ7m)の円形をした網生簀の中で海面が渦を巻くほどにクロマグロが円を描いて泳ぎ、産卵しているのが観察されました。世界で初めてクロマグロの産卵行動を観察し、さらに大量の受精卵を得ることに成功したのです。さっそく、受精卵を孵化させ、飼育が行われました。しかし、当時は飼育方法や仔魚に必要な栄養素などの知見に乏しく、飼育できたのは孵化後47日目まで、稚魚の全長は57㎜まででした。その後、同じ親魚群が1980年(6歳)、1982年(8歳)にも産卵し、飼育が試みられましたが、それぞれ30日目と57日目に全滅しています。この親魚群は1982年を最後に、産卵が止まってしまいました。
このような状況の中で1987年に活け込んだ群れが1994年(7歳)に産卵を開始しました。前回の産卵から実に11年間のブランクがありました。その後はほぼ毎年産卵が確認できるようになり、1995年と翌年の産卵で得られた卵は約300gの幼魚までそれぞれ648尾、287尾育てることに成功し、2002年には合わせて20尾(7歳と6歳)が親魚として生き残っていました。そして6月23日にこれらが産卵を始め、ついに完全養殖が達成されました。その子供達は2年後に、世界で初めての完全養殖クロマグロとして出荷されています。(第3章 「クロマグロとその完全養殖を知ろう」 p64-65より)
書籍紹介
今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい養殖の本
近畿大学水産研究所 編、A5判、160ページ、税込1,620円
日本の食にとって魚はかかせないもの。その魚を育てる養殖が今、世界中で注目されています。実は紀元前まで遡る養殖の歴史に始まり、マグロをはじめ様々な魚の養殖や、養殖で必要な技術、そして未来の養殖についてもやさしく解説します。
著者紹介
近畿大学水産研究所
長年にわたり養殖技術の研究に取り組み、世界の水産養殖・種苗生産の最前線に立っている。2002年、クロマグロの完全養殖を世界で始めて成功させ、大きな注目を集めた。
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目次抜粋(全66項目)
第1章 養殖の基本を知ろう
養殖のはじまり「太古より行われていた養殖の歴史」
養殖魚がお店に並ぶまで「養殖魚の流通の特色」
世界の養殖業「ダントツの養殖大国はあの国」
第2章 卵から魚を育てる生産技術を知ろう
有害プランクトンが歴史を変える「有害プランクトンにも使い道がある」
ワムシの培養技術「省力化が進むワムシ培養技術」
仔魚を育てる方法「仔魚の飼育施設と餌料系列」
第3章 クロマグロとその完全養殖を知ろう
クロマグロの仔魚から幼魚までの育て方「完全養殖に欠かせない種苗生産技術」
売値を左右する出荷方法「正しい処理で商品価値を高める」
ハイリスクなクロマグロ養殖「天災・魚病などが大きな損失の原因」
第4章 さまざまな養殖を知ろう
ブリの養殖「海水魚養殖の先駆けとなった出世魚」
ウナギの養殖「日本の食文化「蒲焼」を支える養殖ウナギ」
サケ・マスの養殖「川と海の両方で発展した養殖の古株」
第5章 餌や飼料の大切な役割を知ろう
餌の種類と役割「成長度合や魚種によって餌は異なる」
養殖魚の病気「養殖魚だって病気になる」
第6章 漁場環境を整える
養殖は海を汚す!?「残餌や排せつ物による自家汚染」
海への負担を減らす「餌の種類とやり方がカギ」
第7章 より優れた品種を誕生させる
品種改良の歴史「多くの魚が品種改良から生まれた」
借り腹技術「サバのお腹を借りてマグロを増やす」
遺伝子操作「遺伝子操作で品種改良の効率化を目指す」
第8章 養殖の課題と対策、最新の技術を知ろう
輸出される養殖魚「輸出を促進して養殖生産量を増やす」
養殖でICTを利用「スマート養殖による効率化」
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近大水研は1970年に始まった水産庁プロジェクトに参加し、クロマグロ養殖の研究をスタートしました。プロジェクトが終了してからも継続して技術開発を進めました。養殖はもちろんですが、親魚として養成し、受精卵を採ることを目的としていました。そして、1974年に収容した約800尾の幼魚が1979年(5歳)には体重70㎏となり、60尾が生残していました。6月20日の午後5時過ぎ、直径30m(深さ7m)の円形をした網生簀の中で海面が渦を巻くほどにクロマグロが円を描いて泳ぎ、産卵しているのが観察されました。世界で初めてクロマグロの産卵行動を観察し、さらに大量の受精卵を得ることに成功したのです。さっそく、受精卵を孵化させ、飼育が行われました。しかし、当時は飼育方法や仔魚に必要な栄養素などの知見に乏しく、飼育できたのは孵化後47日目まで、稚魚の全長は57㎜まででした。その後、同じ親魚群が1980年(6歳)、1982年(8歳)にも産卵し、飼育が試みられましたが、それぞれ30日目と57日目に全滅しています。この親魚群は1982年を最後に、産卵が止まってしまいました。
このような状況の中で1987年に活け込んだ群れが1994年(7歳)に産卵を開始しました。前回の産卵から実に11年間のブランクがありました。その後はほぼ毎年産卵が確認できるようになり、1995年と翌年の産卵で得られた卵は約300gの幼魚までそれぞれ648尾、287尾育てることに成功し、2002年には合わせて20尾(7歳と6歳)が親魚として生き残っていました。そして6月23日にこれらが産卵を始め、ついに完全養殖が達成されました。その子供達は2年後に、世界で初めての完全養殖クロマグロとして出荷されています。(第3章 「クロマグロとその完全養殖を知ろう」 p64-65より)
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近畿大学水産研究所 編、A5判、160ページ、税込1,620円
日本の食にとって魚はかかせないもの。その魚を育てる養殖が今、世界中で注目されています。実は紀元前まで遡る養殖の歴史に始まり、マグロをはじめ様々な魚の養殖や、養殖で必要な技術、そして未来の養殖についてもやさしく解説します。
著者紹介
近畿大学水産研究所
長年にわたり養殖技術の研究に取り組み、世界の水産養殖・種苗生産の最前線に立っている。2002年、クロマグロの完全養殖を世界で始めて成功させ、大きな注目を集めた。
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第1章 養殖の基本を知ろう
養殖のはじまり「太古より行われていた養殖の歴史」
養殖魚がお店に並ぶまで「養殖魚の流通の特色」
世界の養殖業「ダントツの養殖大国はあの国」
第2章 卵から魚を育てる生産技術を知ろう
有害プランクトンが歴史を変える「有害プランクトンにも使い道がある」
ワムシの培養技術「省力化が進むワムシ培養技術」
仔魚を育てる方法「仔魚の飼育施設と餌料系列」
第3章 クロマグロとその完全養殖を知ろう
クロマグロの仔魚から幼魚までの育て方「完全養殖に欠かせない種苗生産技術」
売値を左右する出荷方法「正しい処理で商品価値を高める」
ハイリスクなクロマグロ養殖「天災・魚病などが大きな損失の原因」
第4章 さまざまな養殖を知ろう
ブリの養殖「海水魚養殖の先駆けとなった出世魚」
ウナギの養殖「日本の食文化「蒲焼」を支える養殖ウナギ」
サケ・マスの養殖「川と海の両方で発展した養殖の古株」
第5章 餌や飼料の大切な役割を知ろう
餌の種類と役割「成長度合や魚種によって餌は異なる」
養殖魚の病気「養殖魚だって病気になる」
第6章 漁場環境を整える
養殖は海を汚す!?「残餌や排せつ物による自家汚染」
海への負担を減らす「餌の種類とやり方がカギ」
第7章 より優れた品種を誕生させる
品種改良の歴史「多くの魚が品種改良から生まれた」
借り腹技術「サバのお腹を借りてマグロを増やす」
遺伝子操作「遺伝子操作で品種改良の効率化を目指す」
第8章 養殖の課題と対策、最新の技術を知ろう
輸出される養殖魚「輸出を促進して養殖生産量を増やす」
養殖でICTを利用「スマート養殖による効率化」
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