人とは何か―人と見紛うアンドロイドとのコミュニケーションから探る

「マツコロイド」の産みの親、石黒浩教授の究極の狙い

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アンドロイドを交えて自然に会話
 ロボットはどこまで人に似せられるのか。石黒浩特別研究所では「人とは何か」という人間の本質を問いかけながら、人に近いロボット(アンドロイド)の開発が進む。

 人は座っている時でも、体や頭、目などが細かく動いている。呼吸をすれば肩も動く。こうした動きを再現する事が人らしい動作につながるという。

 現在は複数のロボットが対話の中で曖昧な概念をきちんと説明できるようにする研究に力を入れる。アンドロイドがニュースを読んだり、人と関わる機能がついてきたが、今後は更に自然な状態で、人間の意図を理解しながら対話できるアンドロイド。つまりもっと人のパートナーになれるような自律型のアンドロイドを作るのが目標だ。

人間にそっくり or 一切をそぎ落としたアンドロイド。親近感を持つのはどっち?


 ●誰にも美人に見える「ERICA(エリカ)」

 大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩教授と京都大学大学院情報学研究科の河原達也教授らの研究グループは3日、自律対話型アンドロイド「ERICA(エリカ)」を開発したと発表した。顔は日本人と欧米の人のハーフに見えるように、コンピューターグラフィックスで整った顔を作成した。音声認識や音声生成、相づちといった動作生成などの先端技術を統合し、自然なしぐさで対話できる。

 顔は左右対称で鼻と口、あごが一直線に並ぶなど、人工的に顔を修正した。石黒教授は「誰がみても美しく見える顔に仕上げた」としている。喜怒哀楽などさまざまな表情を作れる。肖像権がなく、研究に使いやすい。

 研究グループは今後、相手の意図をくんだ対話が可能なモデルを作製する計画。受け付けやカウンセリングなど利用する場面を限定した上で、より自然な対話を目指す。

 ●感情移入しやすい「ハグビー」

 京都西川(京都市下京区)は、携帯電話などを通じたコミュニケーションを支援する人型クッション「ハグビー」を、9月初旬から販売する。子どもサイズが8000円(消費税抜き)、レギュラーサイズが1万円(同)。幼児から高齢者まで幅広い客層に百貨店や寝具店などで販売する。

 頭部ホルダーに携帯電話を収納し、ハグビーを抱きしめながら通話すれば、通話相手の存在をより身近に感じられる。ハグビーを使って通話すると通常よりもストレスホルモンが減ることや、子どもの落ち着きが増すことを実験で確認した。

 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、東洋紡STC(大阪市北区)と共同開発。京都西川と東洋紡STCが開発した生地を使い、肌触りを良くした。「自動応答システム搭載やハグビーを使ったコミュニケーションサービス提供など、用途を広げたい」(石黒浩ATRフェロー)としている。

日刊工業新聞2015年08月21日 1面の記事に加筆

COMMENT

政年佐貴惠
名古屋支社編集部
記者

数年前、たまたま会合で石黒先生と一緒になり、ポケットサイズの「ハグビー」の原型を見せていただいたことがある。「なんとも言えず奇妙な形ですね・・・」と言った私に「ほら、『気持ちが悪い』って思ったやろ?顔も何もない人形なのに出てくるその反応が大事なんや」と話した石黒先生がとても印象的だった。今やハグビーは製品化され、人にそっくりなアンドロイドも社会に受け入れられつつあり「不気味の谷」を乗り越えたのではないかと思えるほどだ。「人とは何か」を追求する石黒先生の壮大な実験の先が楽しみだ。

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