トヨタ、鋼材支給価格「6000円」引き下げのサプライズ

15年下期、政権のデフレ脱却意向を考慮か。電機など大口需要家との交渉にも影響

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トヨタ、10―3月期の鋼材支給材価格を6000円下げ
 トヨタ自動車は19日、2015年度下期(10―3月期)の鋼材の支給材価格を、年度上期(4―9月期)に比べてトン当たり6000円引き下げることを決めた。支給材価格の引き下げは14年度下期(10―3月期)以来。同日開催した集中購買連絡会議で、部品メーカーなどに通知した。

 これに先立ちトヨタと新日鉄住金など大手鉄鋼各社は、15年度上期(4―9月期)の鋼板価格(ひも付き価格)を、前期に比べて同程度の引き下げ幅で決着したもよう。今後行われる電機業界など大口需要家との交渉にも影響を与えそうだ。

 価格引き下げの要因は、交渉ベースとなる鉄鋼原料価格の下落。鉄鋼業界内では、「値下げは避けられない」とのムードが高まっていた。

 中国経済の減速や、資源国の増産で、鉄鉱石、石炭価格の下落傾向が続いている。国内鉄鋼各社が資源大手から調達する15年7―9月期の鉄鉱石価格は、前期の4―6月と比べて約16%下がりトン当たり約52ドルとなっている。

 支給材価格の引き下げは、14年度下期(10―3月期)以来となる。前回の15年度上期(4―9月期)は、製鉄原料価格が下落していたが据え置いている。安倍晋三政権が進めるデフレ脱却の意向を考慮した判断だと見られる。鋼材価格は市況に大きく影響するためだ。

 しかし、今回は、原料価格に対して市中の鋼材価格との価格差が広がり、ユーザーから値下げ圧力が強まっていた。

 支給材価格はトヨタなどの完成車メーカーが集中購買した材料を下請けメーカーに卸す価格。店売りなどの市況価格の変動要因となる。

日刊工業新聞2015年08月20日 1面

COMMENT

村上毅
編集局ニュースセンター
デスク

 トヨタが鉄鋼メーカーから集中購買し、サプライヤーに卸す鋼材の価格がトン当たり6000円の下げとなった。原料となる鉄鉱石が中国の需要減や資源会社の大増産などを背景に、じりじりと値を下げる中で、今回は鋼材の価格交渉は値下げは不可避だろうと思っていた。だが、6000円という金額には驚いた。前回の支給価格の公表でも原料価格は下げ局面だったが、「賃上げ」「インフレ」を演出したい政府の意向もあり、引き下げを“凍結”した特殊要因があった。今回は一般的な鋼材の市場価格が下がり続ける中で、市場の実情に合わせた感がある。トヨタと鉄鋼各社とのひも付き価格の交渉では、原料の変動と大きくかけ離れることはないため、ひも付き交渉では6000円ほどの下げではなかったかもしれない。だが、支給材価格は市況の代表的な指標。鉄鋼業界としては、今後の価格交渉で値下げ圧力が強まることは必至で、シビアな局面を迎えることになりそうだ。

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