行政と大学が連携。岡山県は「さらに魅力ある存在」になれるか
企業と学生のマッチングや中山間地域の振興に取り組む
大学コンソーシアム岡山(高木孝子会長=ノートルダム清心女子大学学長)は岡山県と包括連携協定を締結した。同コンソーシアムは2005年、岡山県内の主立った大学、短大、高専が集まり設立された。今回の協定によって地域社会発展、学術・文化振興、人材育成など幅広い分野で連携を強化し「岡山県がさらに魅力ある存在」(高木会長)となることを目指す。
当面の具体的な課題として、企業と学生とのマッチング支援や懸案だった中山間地域の振興に取り組む。このほか10月には、伊原木隆太岡山県知事も参加し選挙年齢引き下げをテーマにシンポジウムを開く。
「対決!岡山vs広島-8割方は岡山の勝ち」-刺激的なタイトルの講演会が岡山市内であった。岡山県産業振興財団が中小企業支援のために設置した「岡山県よろず支援拠点」の1周年を記念して開かれたもので、講師は三宅昇岡山県産業振興財団理事長。同地の産学官連携活動のキーマンだ。思い切ったつかみが功を奏したのか、100席あまりが用意された会場はほぼ満席だった。
隣接する岡山と広島は昔からライバル関係にあるとされる。とりわけ岡山側の対抗心は顕著だ。古代に栄えた吉備の国の末裔たる岡山人にとって、広島がすっかり中国地域の代表に収まっている状況は決して愉快ではない。自己主張のはっきりした広島にPR下手の岡山と気質も異なる。野球も岡山はタイガースびいきが目立つ。
とはいえ、実際の講演はユーモアを含んだ穏やかな論考に終始した。面積、人口から経済力、大学進学率まで現状では広島が上と認めるフェアな語り口で、肝心の勝敗についても「30年後には超えられるかも…」と控えめ。三宅氏自身、広島に対する遺恨は「牡蠣お好み焼きに入っている牡蠣の数が岡山より少ないことだけ」と笑わせた。そして、真に伝えたかったのは「栄枯盛衰は世の常であり、地域や企業でも例外はない」ということ。
最強と呼ばれた存在でも潮目を見極められなければ衰退する。中小企業経営者の多い会場に向かい三宅氏は「いつまでも、売れると思うな主力商品、あると思うな主要取引先」と警句を放ち、頭と心の柔らかい経営者になって欲しいと呼びかけた。
一方で地理的・地勢的なポテンシャルが高く食料、福祉、エネルギーの地産地消が可能な岡山には、成長の伸びしろは広島以上にある。最後に、奇抜な演題の理由を「前向きな気持ちになってもらうため」と説明した三宅氏。「柔らかく前向きでいることを心掛ければ夢はかなう」と会場にエールを送った。
かたや、広島市にとっては岡山への対抗意識はそれほど強くない。むしろ「札仙広福」とまとめて称される、札幌や仙台、福岡などの広域中心都市を同クラスと見て比較したがる傾向がある。4都市はいずれも、その地方の中核となる位置を占め、「支店経済」といわれ国や大企業の出先機関が多い。教育機関やプロスポーツが充実して文化的な発信力も持っており、共通点は多い。中でも広島の特徴は自動車メーカーのマツダに代表されるとおり、製造業の集積が進んでいることだ。
広島にとって岡山を意識するとすれば、それは道州制が議論にのぼる時だ。中国地方と四国地方をひとまとめにした行政区画が設定されるとなれば、交通の結節点であることからいっても、岡山が州都になる可能性は強まる。
「熱しやすく冷めやすい」とか「新入社員を配属すると夜の遊びを覚える」といわれ、比較的さっぱりした気質といわれる広島人。岡山からの対抗心には、あまりピンとこないというのが本音ではなかろうか。
(文=浅田一朗、清水信彦)
当面の具体的な課題として、企業と学生とのマッチング支援や懸案だった中山間地域の振興に取り組む。このほか10月には、伊原木隆太岡山県知事も参加し選挙年齢引き下げをテーマにシンポジウムを開く。
「岡山vs広島―8割方は岡山の勝ち」を唱えた岡山の言い分と本音
ニュースイッチ2015年7月5日公開
「対決!岡山vs広島-8割方は岡山の勝ち」-刺激的なタイトルの講演会が岡山市内であった。岡山県産業振興財団が中小企業支援のために設置した「岡山県よろず支援拠点」の1周年を記念して開かれたもので、講師は三宅昇岡山県産業振興財団理事長。同地の産学官連携活動のキーマンだ。思い切ったつかみが功を奏したのか、100席あまりが用意された会場はほぼ満席だった。
隣接する岡山と広島は昔からライバル関係にあるとされる。とりわけ岡山側の対抗心は顕著だ。古代に栄えた吉備の国の末裔たる岡山人にとって、広島がすっかり中国地域の代表に収まっている状況は決して愉快ではない。自己主張のはっきりした広島にPR下手の岡山と気質も異なる。野球も岡山はタイガースびいきが目立つ。
とはいえ、実際の講演はユーモアを含んだ穏やかな論考に終始した。面積、人口から経済力、大学進学率まで現状では広島が上と認めるフェアな語り口で、肝心の勝敗についても「30年後には超えられるかも…」と控えめ。三宅氏自身、広島に対する遺恨は「牡蠣お好み焼きに入っている牡蠣の数が岡山より少ないことだけ」と笑わせた。そして、真に伝えたかったのは「栄枯盛衰は世の常であり、地域や企業でも例外はない」ということ。
最強と呼ばれた存在でも潮目を見極められなければ衰退する。中小企業経営者の多い会場に向かい三宅氏は「いつまでも、売れると思うな主力商品、あると思うな主要取引先」と警句を放ち、頭と心の柔らかい経営者になって欲しいと呼びかけた。
一方で地理的・地勢的なポテンシャルが高く食料、福祉、エネルギーの地産地消が可能な岡山には、成長の伸びしろは広島以上にある。最後に、奇抜な演題の理由を「前向きな気持ちになってもらうため」と説明した三宅氏。「柔らかく前向きでいることを心掛ければ夢はかなう」と会場にエールを送った。
広島の主張「あまりピンとこない。むしろ『札仙広福』を意識しています」
かたや、広島市にとっては岡山への対抗意識はそれほど強くない。むしろ「札仙広福」とまとめて称される、札幌や仙台、福岡などの広域中心都市を同クラスと見て比較したがる傾向がある。4都市はいずれも、その地方の中核となる位置を占め、「支店経済」といわれ国や大企業の出先機関が多い。教育機関やプロスポーツが充実して文化的な発信力も持っており、共通点は多い。中でも広島の特徴は自動車メーカーのマツダに代表されるとおり、製造業の集積が進んでいることだ。
広島にとって岡山を意識するとすれば、それは道州制が議論にのぼる時だ。中国地方と四国地方をひとまとめにした行政区画が設定されるとなれば、交通の結節点であることからいっても、岡山が州都になる可能性は強まる。
「熱しやすく冷めやすい」とか「新入社員を配属すると夜の遊びを覚える」といわれ、比較的さっぱりした気質といわれる広島人。岡山からの対抗心には、あまりピンとこないというのが本音ではなかろうか。
(文=浅田一朗、清水信彦)
日刊工業新聞2015年08月19日 中小企業・地域経済面