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愛媛の「こけむしろ」で癒されよう

愛媛の「こけむしろ」で癒されよう

コケを敷きつめた「こけむしろ」

 「ありつるコケのむしろに並みゐて」(徒然草)。

 コケのむしろ(敷物)とはきっとこんな感じなのだろう。愛媛県西予市宇和町の里山に手作りの庭園がある。総面積2250平方メートル。棚田の跡地一面にコケが敷かれ、木漏れ日に映える緑はみずみずしい。真夏さえ谷間を吹き抜ける風がひやりと心地よく、時間がたつのも忘れてしまう。

 庭園はギャラリー喫茶「こけむしろ」を営む村上安由さんが作った。脱サラし、2000年に実家の水車小屋を改装して始めた料理店の屋号が「苔筵(こけむしろ)」。屋号にちなみ、思い描くコケの世界作りを始めた。完成は05年。料理店は11年に閉め、今は庭園隣接の喫茶で来園者をもてなしている。

 愛媛県南部の南予地域は海、山の自然と共存してきた土地柄だ。県は全体を「いやしの南予」としてブランド化し、売り込んでいる。16年度には「えひめいやしの南予博」も開催。約90億円の経済効果をあげた。「1次産業中心の南予の活性化に観光が果たす役割は大きい」と県観光物産課観光まちづくりグループの山内珠恵主任。今後も集客力のある癒やし空間の掘り起こしと支援に力を入れていきたいという。

 「こけむしろ」はずっと昔からそこにあったと思わせる自然の包容力の中にある。これが南予地域の魅力かもしれない。日々の“針のむしろ”に疲れたら、足を運んでみてはどうだろう。(松山・森野学彦)

【アクセス】▽愛媛県西予市宇和町重里2099、080・3928・9276▽松山自動車道を松山ICから宇和島方面へ約40分。大洲道路を経由して大洲南IC下車。国道56号線を宇和島方面へ約10分。入園時間などはギャラリー喫茶「こけむしろ」の営業に準じ、10時―17時、月曜定休日(祝日は可)。1―3月は土日祝日のみ。
日刊工業新聞2017年8月11日

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