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「うさぎの島」に「壱岐本島」…旅行の選択肢に島はいかが

「うさぎの島」に「壱岐本島」…旅行の選択肢に島はいかが

島に残る発電所の遺構(後方)。うさぎは島内のあちこちにいる

**広島 竹原市・大久野島−うさぎと毒ガスの二面性
 うららかな瀬戸内海に臨む広島県竹原市の忠海港。この地で最近、外国人観光客が増えている。フェリーで15分の大久野島が「うさぎの島」として動画投稿サイトで紹介され、にわかに人気が高まっているのだ。

 訪れたのは8月上旬。忠海駅に向かうJR呉線の車内はすでに外国人の姿が多く、フェリー乗り場は長蛇の列。夏休みの家族連れや学生のグループ、カップル、そして外国人で混み合っている。

 上陸するとぽつぽつとうさぎの姿が見え、子どもが歓声を上げて駆け寄っていく。唯一の宿泊施設である休暇村に向けて歩き始めると、そこここの木陰ややぶに、うさぎがいることに気づく。地面に穴を掘ってうずくまったり寝そべったり。その数700羽という。

 島は周囲約4キロメートル、面積約0・7平方キロメートル、自転車で小一時間もあれば一周できる。太平洋戦争中は陸軍の化学兵器工場が置かれ、島全体が一大化学プラントとなった「毒ガスの島」だった。

 現在毒ガス関連施設はほとんど撤去され、発電所跡や貯蔵庫跡などいくつかを残すのみ。おどろおどろしい遺構で、守り神のようにうさぎが顔を出す。「ジキルとハイドのようにまったく違う面を持つのがこの島の魅力」(広島県商工労働局観光課の山元祐貴主任)。

 島内には毒ガス資料館もある。国を挙げて非人道的な兵器を大量生産した時代の狂気に震えがくる。
(広島・清水信彦)

【アクセス】▽JR山陽新幹線の三原駅から呉線に乗り換え、約20分で忠海駅。駅から徒歩5分の忠海港からフェリーで15分で到着する。島全体がほぼ国有地で、宿泊施設やレストランがあるのは「休暇村大久野島」のみ。16年の観光客数は10年前の2.7倍に急増。▽竹原市観光振興係(0846・22・7745)

日刊工業新聞2017年9月15日



長崎 壱岐市・小島神社−島全体がパワースポット


干潮時のみ約150メートルの参道が現れる小島神社

 壱岐市は長崎県北方の壱岐本島と属島からなる。本島の草木が生い茂る道路を抜けると眼下に内海湾が広がる。その中心に自然の神秘を感じると言われる「小島神社」がある。丸形の小島を背景にたたずむ鳥居は小さいながらも風格がある。恋愛成就や商売繁盛、五穀豊穣(ほうじょう)などの願いがかなうという御祭神をまつる。

 海に囲まれた神社には、干潮時のみ約150メートルの参道が現れる。この現象と光景が「神秘」という印象を強くさせる。

 湿った砂地の参道を歩くと、取り残されたカニがおり、ここが海中だったことを実感させる。小島の周囲を回り込み、急勾配の階段で神社に上がる。ゴミ一つ落ちておらず、かすかな波の音しか聞こえない静かな空間は「小枝一本すら持ち帰ることはできない」と思わせる神聖な雰囲気。厳かで、世俗から切り離されているとすら感じる。

 長崎県観光連盟情報推進部情報推進課の菊谷美香子課長代理は「神社がある島全体がパワースポット」と話す。日常から離れて自分自身をリセットできる魅力があるという。壱岐には多彩な魅力があるが文化庁が定める日本遺産第1号に認定された歴史好きにも適した地だ。

 取材の日、年配夫婦が参拝しており、歩きづらい岩場で夫が無言で妻に手を差し出す姿も見られた。この地の神聖さに感化されたためか、慈しみのある尊い姿に感じられた。
(西部・増重直樹)

【アクセス】▽長崎県壱岐市芦辺町諸吉二亦触1969▽壱岐市へは博多港から乗船。ジェットフォイルで芦辺港まで約1時間10分。フェリーだと約2時間10分。長崎空港から壱岐空港までは約30分。島内での移動はレンタカーやタクシー、バスなど。干潮時刻は壱岐観光ナビ内に外部サイトのリンクあり。

日刊工業新聞2017年10月13日

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