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気鋭のベンチャー社長が考察、ロボットとAIの複雑な関係

Kyoto Robotics社長・徐剛②
 人工知能(AI)という言葉を新聞で見ない日はない。しかし、AIとは何かは必ずしも明確ではない。また、AIとロボットの関係も必ずしも明確ではない。

 AIは人工知能と言うように、人間の持つ知能に属する能力を計算機で実現する技術分野の総称である。音声認識・文字認識・自然言語理解・自動翻訳・コンピュータービジョン・パターン認識・機械学習などの技術分野をカバーしている。これらの技術分野は、人間でも常に正解を出せるものではない。いずれも決定論的ではなく、確率論的アプローチが求められる。

 従来の産業用ロボットはAIに属していなかったし、決定論的アプローチで足りたからこそ大きく発展したともいえる。しかし、人間のような認識機能を持たせ、自律的に動くロボットを作ろうとすると、AIが必要になってくる。当社が開発している、目と脳を持った知能ロボットはまさにAIを搭載したロボットである。

 AIには、二つの方法論がある。計算論的方法論と、機械学習的方法論である。音声認識を例に挙げると、入力は音声の信号で、出力は音声を表す文字列である。計算論的方法論では、技術者がプログラムを書き、そのプログラムに音声の信号を入力すると、プログラムは音声を表す文字列を出力する。

 一方、機械学習的方法論では、技術者がプログラムを書くことなく、入力となる音声信号と、出力となる文字列とのペアを多く集めてきて、「万能マシン」に与える。万能マシンがこれらの入出力のペアに合わせて内部の表現を自ら変えていく。その結果、これらの入出力のペア以外の入力が来た時にも正しい出力を得ることができるようになる。

 このような万能マシンはさまざまあるが、最近特に注目されているのはディープラーニング(深層学習)である。人間の神経細胞網(ニューラルネット)を模倣した深層学習は、層を増やすことで当初の2層・3層で表せる限界を大きく超え、強力な表現能力を持つに至った。深層学習がはやっている背景には、ビッグデータ(大量データ)の存在と、ムーアの法則で飛躍的に増強した計算パワーがある。最近のメディアでは、AI=深層学習の印象さえ与えるが、実際はAI≠深層学習である。

 一方、ニューラルネットワークはある種のブラックボックス。因果関係は、理解も説明も問題の解明も限界の予測も、不可能に近い。このような機械を使って良い場面と使っていけない場面がある。

 目と脳を持った知能ロボットはAIロボットではあるが、深層学習ロボットでは必ずしもない。計算論的方法が向く問題は計算論的方法で解き、深層学習が向く問題は深層学習で解くだけである。一番大事なのは、顧客が求める機能と品質が実現されるかに尽きる。(全7回、毎日掲載)
日刊工業新聞2018年8月3日(ロボット)

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