自己満足はダメ!変わるロボ業界を俯瞰する

コネクテッドロボティクス社長・沢登哲也 ⑧

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沢登社長
 私がロボット開発やロボビジネスに関わってから10年以上経つが、特に私のようなスタートアップ企業で働く者から見た場合のロボ業界の変化についてあれこれ書いてみたい。

 私自身は産業用ロボのコントローラーであるソフトウエアを開発する仕事に携わることで、ロボの業界に入った。もともとロボは「機械」であるから機械系や電気・電子系のエンジニアが多い中で、私のようにソフトウエアが専門でかつ、あまりハードウエアには手を出さないエンジニアというのは珍しい。趣味で電子工作をして楽しんだことはあったが、いざ仕事となると私のはんだ付けがひどかったり、切削加工などの技術や知識もろくになくて、よく当時の会社の先輩や同僚にあきれられたものだった。

 まわりにはいつもロボ好きやロボ関連のエンジニアたちがいた。だが、彼らの興味は1から10までロボを作ることであった。その一方、私はというとロボをうまく使いこなすことに興味があった。無いものを作るよりもあるものを組み合わせたり改造したりして使いこなす、という自分のような考え方はあまりこの業界では一般的ではないと昔から感じてきた。

 しかし、最近は、そのような流れに変化が出てきているように思われる。そもそもテクノロジーの進歩や複雑さは加速度的に増している。そんな中、最新技術を常にキャッチアップするのは不可能に近い。米アマゾン・ドット・コムやソフトバンクなどのような大企業から我々のようなスタートアップに至るまで、現在では1から10まで作り上げるというよりは、うまくリソースを活用して目的の結果に到達する、というようなことが重要になってきていると思われる。

 もちろん、従来のようにロボエンジニアは材料からモーター、ギア、電子回路、コンピューター、アルゴリズム、ユーザーインターフェースといった幅広い領域をカバーしつつも、専門分野については深い知識やスキルが求められている。それら知識やスキルを得るには、自分で手を動かして1から10までやってみることは、学習する上では非常に有益であることは間違いない。

 しかしながら、目的ははっきりさせなくてはならない。特に新しいロボやサービスを作ったり立ち上げようとしたりした場合、往々にして作ること自体が目的化してしまい、学習や自己満足だけに陥ってしまいがちだ。そのため提供すべき価値が創出できない、というケースがある。

 これは、ロボ業界の閉鎖性や、新しいものはメディアの目に留まりやすいが失敗は共有されにくいといった非対称性が原因だと考えられる。したがって、1から作ることも大切ではあるものの、他者の成功と失敗の両方からよくよく学びながら既存リソースを活用していくことが重要だと私は考えている。(終わり)

日刊工業新聞2019年3月22日

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