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岩谷産業が水素ステーションの投資継続へ。来年度は10カ所程度

採算が厳しいが政府や自動車業界に呼応。トヨタなどもインフラ整備後押し
岩谷産業が水素ステーションの投資継続へ。来年度は10カ所程度

山口県周南市に開設した水素ステーション

 岩谷産業は2017年3月期に燃料電池車(FCV)向け水素ステーションを10カ所程度建設する。これまで16年3月までに20カ所の目標を掲げて設置を進めていた。水素ステーションは稼働率が低く、採算が厳しいのが現状。しかし、FCV普及を加速させるためには投資の継続が必要であると判断し、建設計画を積み増す。
 
 業界、政府は15年に水素ステーションを国内100カ所整備する構想を打ち出す。岩谷は水素社会の到来を早める先行投資として、これに呼応。16年3月期に81億円を投じて18カ所建設しており、期末には21カ所の稼働にめどをつける見通しだ。

 トヨタ自動車のFCV「MIRAI(ミライ)」発売後、各地の自治体で水素インフラ構築への関心が高まった。岩谷には誘致の相談が多く持ち込まれており「水素ファンを広げていく」(首脳)ためにも、要請に応えていく考えだ。

 水素ステーションは立地場所の地価にもよるが1カ所当たり3億―5億円と初期費用が多額だ。設備には政府による半額程度の補助金があるが、土地確保には自治体の協力なども欠かせない。岩谷もステーション基幹装置のコストダウンを目指し、技術開発を急いでいる。

 稼働率の低さも課題となる。岩谷が東京都港区で4月に開所したステーションは公用車の利用も多く高稼働だが、他のステーションは利用が低迷。採算性改善の前提となるFCVの普及は、生産能力が小さく早期には難しい。このためトヨタなど自動車3社は、岩谷などステーション事業者の運営費を支援することでインフラ構築を後押しする考えだ。
日刊工業新聞2015年08月18日 自動車・機械・ロボット・航空機
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
水素のインフラ整備を急ぐことは悪いことではない。一方でアップルなどIT勢や海外の自動車メーカーの最近の動向をみると、「電気自動車×自動運転」の開発が加速しているように映る。「新しい自動車」市場の作り方は従来とは大きく異なり方程式が複雑。それでもトヨタが最大のカギを握ることに変わりはない。

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