METI
機械業界の名バイプレーヤー、"紳士淑女”を演じきる力
関東精器、理念の再定義で業績加速
主役と並び作品で大きな存在感を放つ助演俳優ー。前橋市に本社を置く関東精機は、機械業界の「名バイプレーヤー」として重要な役割を果たしている機械メーカーだ。
1961年に創業した同社の主力製品は、工作機械の加工精度を維持する油温自動調整機。工作機械で使われる油の温度を高い精度で制御することにより機械の熱変位を抑制し、ワークの高精度加工を実現する。
「オイルマチック」とのブランド名で1965年に製品化し、ほぼすべての工作機械メーカーと取引がある。現在の国内シェアは約3割。微細加工分野では8割近くに達する。
魵澤(えびさわ)剛史社長は3代目。2002年に入社し、営業業務に従事した後、2016年に現会長である父の後を継いで社長に就任した。
就任後、真っ先に取り組んだのが企業理念体系の再定義だ。そのきっかけは、大学卒業後に勤務していた航空会社で、接客業務のレベル向上を図るためリッツ・カールトンの実例を学んだ経験にある。
その時、魵澤社長が深い感銘を受けたのは、彼ら・彼女らが確固たるクレド(信条)を持ち、「紳士淑女をおもてなしする私たちも紳士淑女です」というモットー(行動規範)を大事にしていること。「顧客から強い支持を受ける企業は、きちんとした企業理念や行動指針を持ち、事業領域を自らしっかり定義している」との意を強くした。自分たちの矜持(きょうじ)や決意表明を的確に表せる言葉は何か?。魵澤社長だけでなく、管理職クラスの社員らを交えて議論を繰り返した。
こうして生み出されたのが、「ブランドを支えるブランドでありたい」という企業理念だ。主力製品の「オイルマチック」が日本のほぼすべての工作機械メーカーに評価され、そうした工作機械が支えるモノづくりの現場は自動車や航空機、電機などの分野でトップブランドを確立しているとの考えを示した。「社内では、モノづくりの現場を支える責任感ややりがいの醸成につながっている」と効果を強調する。
この言葉の英訳を米国の販売代理店に依頼したところ、「We Stand behind the brand」という言葉が生まれた。これにより世界9カ国にある代理店の関係者にも理念がスムーズに浸透し、ステークホルダー間の意識の共有化がさらに強まる結果となった。
行動規範としては、「Think〝GLOCAL〟」も掲げている。この言葉には、世界中に需要が広がる工作機械のブランド力を支える重要な責任を持っていること、そして万が一エラーが発生した場合に対処してくれる世界各地のパートナー企業への思いが込められている。加えて、地元にしっかり根ざして安定した生活を送りつつ、世界でチャレンジしたい気持ちがある若者へのメッセージでもある。
こうした理念に基づいて現在推し進めているのが、中長期的な視点に立った社内の改革だ。その一つが人材活用。例えば新卒採用ではこれまで理系学生に限定していたが、文系の学生にも枠を広げたことで2018年には芸術学部出身の女性が入社し、社内に新風を吹き込んでいる。
多様なバックグラウンドを持つ人材が集結することで見込まれるのが、「理系技術屋集団」では考えもしなかった大胆な発想に基づく新たなイノベーションの創出。とりわけ女性の活躍への期待は大きく、今後は子育てサポート企業として厚生労働大臣が認定する「くるみんマーク」の取得や、女性マネジャーの育成を目指し、企業と従業員双方の成長(スキルアップ)を実現できる取り組みを加速する考えだ。
国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を自社の経営目標と関連づけるなど、環境分野の取り組みにも力を注いでいる。特に「オイルマチック」は冷媒に代替フロンを使用しており、環境面への影響が大きいことから、製品開発では環境負荷の低減をコンセプトに掲げている。
すでに製品化と採用の両面で成果が上がっている。2015年に二酸化炭素(CO2)冷媒を使用した「ノンフロン(CO2冷媒採用)オイルマチック」を完成。2017年にトヨタ自動車の衣浦工場(愛知県碧南市)で導入されるなど、今後さらに普及が加速することが期待されている。
事業に関して、主力製品の「オイルマチック」に次ぐ柱となっているのが自動化・省力化に関連したビジネス。「ピックマチック」のブランド名で、自社開発したハンドリング製品や箱詰め装置(トレーチェンジャー)のほか、自動化案件ごとの開発・設計・製作、さらにはシステムまで一貫したエンジニアリングサービスを手がけている。
そもそも関東精機の祖業は「モノづくりの現場の自動化・省力化」。「オイルマチック」を中心とする油温・液温自動調整機シリーズは、専用機の油圧作動油の温度を自動的に制御することで精度の維持に役立てたいというニーズから生まれており、長年にわたって蓄積してきた技術・ノウハウがこの製品でも強みとなっている。
昨今の人材不足を背景に「ピックマチック」の引き合いは強く、非常に忙しい状況が続いている。少子高齢化の進行に伴う労働人口の減少を考慮すると、今後さらにニーズが拡大すると見られている。
こうした状況を踏まえ、事業拡大に向けてロボットメーカーなどとの連携強化を計画中。売り上げに関しては、「ピックマチック」の比率を現在の1割強から3割程度に引き上げるのが目標だ。「システムインテグレーターとしての経験値を高め、『ピックマチック』を独自性のあるポジションに育てていく」と成長の青写真を思い描いている。
1961年に創業した同社の主力製品は、工作機械の加工精度を維持する油温自動調整機。工作機械で使われる油の温度を高い精度で制御することにより機械の熱変位を抑制し、ワークの高精度加工を実現する。
「オイルマチック」とのブランド名で1965年に製品化し、ほぼすべての工作機械メーカーと取引がある。現在の国内シェアは約3割。微細加工分野では8割近くに達する。
経営理念体系を再定義
魵澤(えびさわ)剛史社長は3代目。2002年に入社し、営業業務に従事した後、2016年に現会長である父の後を継いで社長に就任した。
就任後、真っ先に取り組んだのが企業理念体系の再定義だ。そのきっかけは、大学卒業後に勤務していた航空会社で、接客業務のレベル向上を図るためリッツ・カールトンの実例を学んだ経験にある。
その時、魵澤社長が深い感銘を受けたのは、彼ら・彼女らが確固たるクレド(信条)を持ち、「紳士淑女をおもてなしする私たちも紳士淑女です」というモットー(行動規範)を大事にしていること。「顧客から強い支持を受ける企業は、きちんとした企業理念や行動指針を持ち、事業領域を自らしっかり定義している」との意を強くした。自分たちの矜持(きょうじ)や決意表明を的確に表せる言葉は何か?。魵澤社長だけでなく、管理職クラスの社員らを交えて議論を繰り返した。
こうして生み出されたのが、「ブランドを支えるブランドでありたい」という企業理念だ。主力製品の「オイルマチック」が日本のほぼすべての工作機械メーカーに評価され、そうした工作機械が支えるモノづくりの現場は自動車や航空機、電機などの分野でトップブランドを確立しているとの考えを示した。「社内では、モノづくりの現場を支える責任感ややりがいの醸成につながっている」と効果を強調する。
この言葉の英訳を米国の販売代理店に依頼したところ、「We Stand behind the brand」という言葉が生まれた。これにより世界9カ国にある代理店の関係者にも理念がスムーズに浸透し、ステークホルダー間の意識の共有化がさらに強まる結果となった。
行動規範としては、「Think〝GLOCAL〟」も掲げている。この言葉には、世界中に需要が広がる工作機械のブランド力を支える重要な責任を持っていること、そして万が一エラーが発生した場合に対処してくれる世界各地のパートナー企業への思いが込められている。加えて、地元にしっかり根ざして安定した生活を送りつつ、世界でチャレンジしたい気持ちがある若者へのメッセージでもある。
多様な人材を活用
こうした理念に基づいて現在推し進めているのが、中長期的な視点に立った社内の改革だ。その一つが人材活用。例えば新卒採用ではこれまで理系学生に限定していたが、文系の学生にも枠を広げたことで2018年には芸術学部出身の女性が入社し、社内に新風を吹き込んでいる。
多様なバックグラウンドを持つ人材が集結することで見込まれるのが、「理系技術屋集団」では考えもしなかった大胆な発想に基づく新たなイノベーションの創出。とりわけ女性の活躍への期待は大きく、今後は子育てサポート企業として厚生労働大臣が認定する「くるみんマーク」の取得や、女性マネジャーの育成を目指し、企業と従業員双方の成長(スキルアップ)を実現できる取り組みを加速する考えだ。
環境分野に力
国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を自社の経営目標と関連づけるなど、環境分野の取り組みにも力を注いでいる。特に「オイルマチック」は冷媒に代替フロンを使用しており、環境面への影響が大きいことから、製品開発では環境負荷の低減をコンセプトに掲げている。
すでに製品化と採用の両面で成果が上がっている。2015年に二酸化炭素(CO2)冷媒を使用した「ノンフロン(CO2冷媒採用)オイルマチック」を完成。2017年にトヨタ自動車の衣浦工場(愛知県碧南市)で導入されるなど、今後さらに普及が加速することが期待されている。
自動化・省力化事業が伸長
事業に関して、主力製品の「オイルマチック」に次ぐ柱となっているのが自動化・省力化に関連したビジネス。「ピックマチック」のブランド名で、自社開発したハンドリング製品や箱詰め装置(トレーチェンジャー)のほか、自動化案件ごとの開発・設計・製作、さらにはシステムまで一貫したエンジニアリングサービスを手がけている。
そもそも関東精機の祖業は「モノづくりの現場の自動化・省力化」。「オイルマチック」を中心とする油温・液温自動調整機シリーズは、専用機の油圧作動油の温度を自動的に制御することで精度の維持に役立てたいというニーズから生まれており、長年にわたって蓄積してきた技術・ノウハウがこの製品でも強みとなっている。
昨今の人材不足を背景に「ピックマチック」の引き合いは強く、非常に忙しい状況が続いている。少子高齢化の進行に伴う労働人口の減少を考慮すると、今後さらにニーズが拡大すると見られている。
こうした状況を踏まえ、事業拡大に向けてロボットメーカーなどとの連携強化を計画中。売り上げに関しては、「ピックマチック」の比率を現在の1割強から3割程度に引き上げるのが目標だ。「システムインテグレーターとしての経験値を高め、『ピックマチック』を独自性のあるポジションに育てていく」と成長の青写真を思い描いている。