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世界的な猛暑も、資源商品市場は“寒い夏”

文=棚町裕次(アイアールユニバース社長)「実需の停滞感も鮮明に」
世界的な猛暑も、資源商品市場は“寒い夏”

鉄鋼製品の供給過剰で原料価格も低j水準

 本格的な夏に入り、日本国内は連日の猛暑日が続いている。しかし、商品市場は一段と冷え込んでおり、ここにきて実需の停滞感も鮮明になっている。もともと金属製品は全般的に夏場は不需要期ではあるが、2015年はその落ち込みが明確であり、供給過剰感はより強まっている。

 日本国内は経済指標統計でみると、産業設備投資、新設住宅着工と回復基調にあるものの、自動車は前年比マイナスが続いている。本来であれば2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設工事なども進んでいるはずだ。

 設計から現場に至るまでの人手不足、鉄鋼加工能力の不足から実需の伸びは限定的。電炉、高炉含めた鉄鋼生産は減産基調が続く。これは構造的な問題で、今後も実体経済を力強く押し上げる鉄鋼需要の伸びにはなりにくい。

 一方、世界的には、鉄余りが顕著。鉄余りについては連載の5、6回目で述べており、実需減退も相まって供給過剰感は際立っている。アジアでは中国の旺盛な半製品輸出攻勢が続き、新興国ですら生産が伸び悩む事態。中国は6月までの月間輸出900万トンペースでいけば年間輸出は1億トンを超えることは間違いない。

 AIIBの本当の狙いは中国の余剰製品・設備を合法的に各国に掃くため

 中国が提唱したAIIB(アジアインフラ投資銀行)の本当の狙いは、中国の余剰製品、設備を合法的に各国に掃くためとも聞き、すでに下地は出来上がっている。
 中国の衰えない鉄鋼半製品の輸出増で、アジア各国の原料スクラップ需要も落ちこみ、相場も年初来の安値をつけるに至っている。

 鉄鉱石は中国の在庫補充の買いにより先週はトン当たり55ドルまで上昇したが、今後は 上昇した分(7月初からの20%分)が下がることになるだろう。

 中国・北京で世界陸上(8月下旬)、軍事パレード(9月3日)と重要なイベントが続くため、中国の青空政策で鉄鋼生産はじめ、大気汚染リスクの高い工業素材生産は抑制されることになり、鉄鋼原料の需要は減少、相場下落は不可避。14年のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)時もそうだったが、青空とメンツのため、無理やり工業生産を落とさせるのが中国である。

 鉄と同じように中国の供給過剰が著しいのがアルミ新地金と半製品

 鉄と並び中国の供給過剰が著しいのがアルミ新地金と半製品だ。これも連載初期にアルミ市場の鉄化、ということで述べたが、アルミ新地金と圧延品市場は鉄鋼市場と同じ展開になってきている。

 鉄は多少減産しているが、アルミ新地金は6月に276万トンの新記録を達成、上半期の生産高は前年同期比11・7%増の1560万トンと過去最高を更新。年間3000万トンペース。世界のアルミ新地金生産の6―7割を中国が占め、世界中で問題になっているのがアルミ半製品の輸出。半製品といえども、輸出先では新地金として重宝されている。

 一方、プレミアムの低下、ロンドン金属取引所(LME)相場引き下げの要因となっている半製品輸出量は1―6月上半期で前年同期比44%増の222万トン。

 指標のLMEアルミ新地金相場は現物で1600ドルも割り込み、09年7月以来の安値圏。ここまで相場が下がっても中国は電気代を補助しアルミ産業拡張を奨励、加えてアルミナ価格下落が一層中国のアルミ増産を押し上げている。原油下落もあり、LMEアルミ相場は1500ドルも割り込むことになろう。
 
 ※日刊工業新聞で水曜日に「資源商品市場を読む」を連載
日刊工業新聞2015年08月05日 商況面の記事を一部修正
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
 世界経済の減速で、商品相場の停滞感が顕著だ。中国の連日の人民元切り下げがプラスに働くのか、状況は読みにくい。

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