「元安誘導」で影響を受けやすい産業はどうなるの?

鉄、工作機械、流通。“中国関連銘柄”のこれから

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中国の鋼材輸出が増える国際市況への影響は(新日鉄住金君津製鉄所第4高炉)
 中国が人民元の基準値を3日連続で切り下げたことを受け、中国経済の先行きに不透明感が漂っている。7月の各種統計が悪化する中、「元安誘導」で輸出の立て直しを図ろうとする思惑がうかがえるが、逆に中国の景気減速が予想以上に深刻なのではとの懸念も広がる。鉄鋼など中国と関係の深い日本企業への悪影響も懸念される。
 
 【鉄鋼/輸出増のテンポ速まるおそれ】
 以前から中国の鋼材輸出は、内需の減退と過剰生産によってハイペースで増加している。1―7月累計では6213万トンと記録的水準だった昨年を上回る。このまま行けば、日本の年間粗鋼生産に匹敵する量の鋼材が、中国からあふれ出す。

 海外の鋼材市況も「価格が中国メーカーのキャッシュコストとイコールになっている」(高炉大手役員)状況まで悪化。日本勢は高級鋼で差別化を図っているが、それでも「一部はどうしても価格が引きずられる」(別の高炉大手幹部)と嘆く。

 そうした環境下の通貨切り下げは、中国からの輸出価格がさらに下がり、輸出増のテンポが速まりかねない。結果、中国の鉄鋼業の構造改革が遅れ、国際市況にも悪影響を与え続ける懸念が生じる。
 
 【工作機械/新たな需要が広がるシナリオ】
 一方の工作機械。もともと中国の工作機械は、元安が進めば輸出機の販売価格が割安になる。ただ、日本勢は高付加価値の機械が主体であり競合関係になく、販売に直ちに支障を来す可能性は少なそうだ。

 輸出の持ち直しで中国経済が活発になれば「設備投資が増えることも想定できる」(シチズンホールディングス)と、日本勢の前に新たな需要が広がるシナリオも考えられる。

 ただ、中国が3日間連続で基準値の切り下げという措置に踏み込んだのは「それだけ市場が痛んでいるということでは」(業界関係者)と市況の悪化を警戒する声も聞こえる。
 
 【インバウンド/日本へのツアー客減少を懸念】
 流通ではインバウンド(訪日外国人)の消費や製品の輸入について「いますぐ影響が出るとは考えにくい」(各社)という声が大勢を占める。

 「店頭は変わらず、中国人の買い物客も多い」(イオン)としており、中国元の切り下げの背景となっている景気減速も「今後、日本へのツアー客が減るなどの懸念はあるが、すぐ影響がでることはないのでは」(同)とみる。
 
 中国国内で売り上げを伸ばしている「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングでは「ライフウエアとして浸透している」として売り上げへの影響は今のところは大きくないとみる。

日刊工業新聞2015年08月14日 2面

COMMENT

村上毅
編集局ニュースセンター
デスク

 中国が3日連続で人民元を切り下げた。実体経済の悪化を物語っているが、日本経済への影響がどうなっていくのか。対中国だけでなく、対アジア、対欧州など副次的な影響が出てきそうだ。

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