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原発廃炉ロボ「135分の128」で中断。11月に再投入へ

東電福島第1で順調に作業が進んでいたが・・不測の事態に一つ一つ迅速な対応を積み重ねる
原発廃炉ロボ「135分の128」で中断。11月に再投入へ

放射線遮蔽ブロックの壁を解体する作業ロボ「TEMBO」(IRID提供)

 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向け、核燃料が溶け落ちた燃料デブリの撮影にロボットを活用する取り組みが始まった。国際廃炉研究開発機構(IRID)と東芝はサソリ型の調査ロボットを開発。三菱重工業などが開発した作業ロボ「TEMBO(テンボ)」で調査ロボの通り道をつくる。ただテンボの作業が難航し、調査ロボの投入は延期。状況が判明する度に必要な技術が変わるため、想定通りに進んでいない。不測の事態を乗り越え、ロボットの開発力向上につなげられるか。底力が試される。

 サソリ型ロボットは当初、8月に2号機の格納容器に投入される予定だった。格納容器には配管を通って進入する。このため配管を気密装置でふさぐとともに、配管のふたの部分には穴を開ける。格納容器内の放射性物質を外に漏らさないために、ロボット自体も気密装置に入れて操作する。

 この気密装置の設置場所でじゃまになる放射線遮蔽(しゃへい)ブロックの壁を解体するのがテンボだ。テンボはフォークリフトを台車に7軸のロボットアームを搭載したシンプルな構造。可搬重量の大きなフォークリフトはアームを積んでも安定して作業できる。

 テンボは6月11日に作業を始め、135個のブロックを一つずつ取り除いていた。約1カ月間、作業は順調に進んだが、残り7個となって状況は一変。最下段のブロックが床と強く固着し、外れないことが判明した。

 テンボは解体作業のリスクを洗い出した上で設計され、操作ミスや装置の故障が起こることを前提に訓練を重ねている。またブロックの設置状態が事前情報と違っていても対応できるよう、ボルト切断機など8種類のツールを用意していた。それでも最後のブロック7個を外せなかった。

 7月末、ブロックのすき間の錆(さび)や、想定していなかった溝があり、そこにはまって固着力が増していたことが判明。コンクリートブロックを砕く必要が出てきた。現在、3種類の破砕用ツールを設計中。3カ月で作り上げ、11月には現場に再投入する。

 部品調達に約1カ月かかるため、実質的に作って訓練する期間は2カ月と短い。原発ロボット開発を統括してきた東京大学の淺間一教授は「通常のロボットは年単位で実践と改良を繰り返して完成させる。今回、訓練を含めかなり短い期間で対応が求められている」と説明する。

 入念に準備をしても想定外のことが起こる現場では、短期間にロボットを改良し、訓練を重ねる機動力が求められる。淺間教授は「この経験は原発1号機、3号機にも生かせるはず」と指摘する。不測の事態に一つ一つ、迅速に取り組むことが廃炉ロボット開発の財産になっていく。
(文=小寺貴之)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
いろいろ原発ロボットについて日本の技術力を指摘する意見もあるが、開発や作業現場の前線はとてもよくやっていると思う。川内原発再稼働とともに、廃炉作業についてもっと報道があっていい。

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