水兵リーベ僕の船…理研、113番目の元素命名権を獲得!

崩壊過程追跡で先行、アジア初の名前に

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理研提供
 理化学研究所は31日、合成に成功した原子番号113の元素について、化学者の国際組織「国際純正・応用化学連合(IUPAC)」が正式に理研チームを発見者と認定、命名権が与えられたと発表した。日本のチームが元素の発見者になるのは初めて。日刊工業新聞では8月14日付の紙面で命名権争いの状況をレポートしている。それを振り返ってみたい。

日本VS米国・ロシア


 「水兵リーべー僕の船・・・」というリズムを懐かしく思う人もいるかもしれない。高校の化学で習う元素の周期表の覚え方だ。この周期表の113番目にある元素の命名権をめぐって、日本と海外のグループがそれぞれ優先権を主張している。もし日本が命名権を取得できれば、周期表にアジア初の名前を書き加えられる可能性がある。

 天然に存在する元素は、周期表を順に数えて92番目のウランまで。それより番号が大きい元素は加速器や原子炉を使い人工的に合成し検出する。今までに米国、ロシア、ドイツがそれぞれ新元素を合成し、競い合ってきた経緯がある。

 113番目の元素に関しては、理化学研究所仁科加速器研究センター超重元素研究グループの森田浩介グループディレクターらの研究チームが2003年に実験を開始。04年、05年、12年と計3回同元素を検出している。

 この元素を合成し検出できる確率は100兆分の3と、この実験がいかに難しいかを物語っている。だが、米国とロシアの共同研究チームも113番目の元素の発見に関して優先権を主張している。

 9日から韓国・釜山で開催中の113番目の元素の命名権に関わる国際会議で議題として取り上げられている。周期表に日本初の名前が載る可能性があるということで日本の科学者の期待は大きい。

日本有利?


 理研では、この113番目の元素をどのように作り検出したのか。まず同元素を作るため、重イオン線形加速器「RILAC(ライラック)」を使用。亜鉛のビームを光速の10%に加速し、標的とする厚さ0・5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)のビスマスにぶつけ融合反応を起こす。この反応で生成する113番目の元素を含む重元素を、気体充填型反跳分離器「GARIS(ガリス)」で分離し、113番目の元素を検出器に導く。

 113番目の元素が本物であると認められるには、合成後の同元素の崩壊過程において、既に知られている元素になることを追跡できなければならない。だが米ロの研究チームは元素崩壊後に既知の原子核になることを証明できていない。

 理研が行った実験ではこの崩壊過程を追跡できているため、命名権の取得に対し日本側に有利なのではないかとみられている。会議は14日までだが、13日現在において本会期中の命名権取得の可能性は低い。命名権がどうなるのか。今後の動向に注目が集まる。
(文=冨井哲雄)

日刊工業新聞2015年8月14日科学技術面の記事に加筆

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

「この元素を合成し検出できる確率は100兆分の3」、実験が途方もない難しさのように思えます…。日本が命名した場合、どんな名前になるのか気になります。

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