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東芝のNANDフラッシュ事業パートナー、米サンディスクが考えていること

「影響があるとは考えていない。(新工場は)15年度に判断することになる」(小池日本法人社長)
東芝のNANDフラッシュ事業パートナー、米サンディスクが考えていること

小池氏

 米サンディスクと東芝が、半導体素子を積層する3次元(3D)構造の先端NAND型フラッシュメモリーで、世界最高水準の情報処理容量を実現した新製品の生産を始めた。NANDフラッシュ事業で提携する両社にとって、モノのインターネット(IoT)時代を勝ち抜くためのマイルストーンだ。サンディスクのシニアバイスプレジデント兼日本法人社長の小池淳義氏に、新製品に対する期待や東芝との連携について聞いた。

 ―3D構造NANDフラッシュは、韓国サムスン電子が先行しています。今回の新製品で巻き返せますか。
 「新製品は48層で、容量256ギガビット(32ギガバイト、ギガは10億)を実現した世界初の3D構造NANDフラッシュだ。3ビットセル技術を採用しており、コスト競争力も高い。顧客ニーズを考えても適正な時期に投入でき、評価いただけると自負している」

 ―NANDフラッシュ市場の見通しは。
 「引き続きスマートフォン向けが大きな収益源だが、成長は鈍化する。IoTビジネスの盛り上がりを背景に、これからはデータセンター(DC)向けの需要が伸びる」

 ―DC向けへの期待は数年前から耳にしますが、盛り上がりはいまひとつと感じます。
 「課題だった価格が下がってきたこともあり、2015年に入ってから潮目が変わり、顧客からの引き合いが段違いに増えている。IoTビジネスでは情報処理スピードが競争軸の一つとなっており、HDD(ハードディスク駆動装置)からの置き換えニーズは確実にある」

 ―DC向けでの3D型NANDフラッシュのメリットは。
 「広い意味でDCの信頼性を高めることができる。また将来はコストを下げていく原動力になる」

 ―東芝とは10年以上にわたり、工場運営や開発を共同で進めています。その重要パートナーが不適切会計問題で揺れています。15年度内に新工場計画を固めるスケジュールが延期になる懸念は。
 「影響があるとは考えていない。(競争環境を考えると)15年度に判断することになるだろう」

 ―外資系トップの視点から日本の半導体産業をどう見ていますか。
 「当社は東芝と組み、NANDフラッシュを日本でつくって競争力の高さを証明した。半導体産業において研究開発や生産技術などで日本の優位性は高い。課題はアイデアやイノベーションを引き起こす仕組みが不十分なこと。研究開発の成果から出発するのではなく、ビジネスとしてモノになるかどうかを重視していま一度、何を事業コア(核)に据えるべきか考えることがまず必要だ」
 
 【記者の目/大容量化、サムスン視野に】
 サンディスクと東芝は、3D構造NANDフラッシュの第1弾製品の生産を3月に始めたが、これは顧客に紹介する”お試し品“の側面が強かった。大容量化を図った今回の新製品こそが「本命」。一方、ライバルのサムスン電子は、同分野で先を行く。サンディスクと東芝の新製品は、ロケットスタートでサムスンに追いつけるか。
(聞き手=後藤信之)
日刊工業新聞2015年08月11日 電機・電子部品・情報・通信面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
小池氏は日立製作所出身で、2000年代初めに日本の半導体業界で初めてとなる300ミリ工場「トレセンティテクノロジーズ」の社長を務めるなど日本の半導体業界の酢も甘いも知る人物。 東芝問題の影響がないことはないだろう。東芝の再建過程で日本、グローバルの半導体再編につながる可能性もあり、その時にサンディスクはどのように動くのか。

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