数千人を支援した気鋭の起業家、ITで挑む外国人居住の壁

アットハース・紀野知成社長

紀野知成社長
 アットハース(前・東京ハース、東京都千代田区)はオンラインを活用した賃貸契約のための多言語対応プラットフォーム「アットハース」の提供を始めた。国が掲げる外国人の就労拡大に向けて住居は重要な要素。日本では不動産契約へのIT利用は始まったばかりだが、同社では日本語を話せない外国人と、入居を増やしたい事業者のマッチングを目指す。

空き部屋が多いのに借りられない矛盾


 「知人の外交官は日本語を話せず部屋を借りられなかった。一方で、空き室の多さに矛盾を感じた」。紀野知成社長は起業のきっかけをこう語る。同社の不動産の総合支援サービス「アットハース」は集客や仲介、管理、退去までを総合的に支援する。来日予定の外国人は、パスポートや在留許可証などがそろえば、来日前に契約を結べる。重要事項の説明や面談なども、同サービスを介して母国語で受けられる。

 紀野社長はフリーランス時代も含めて、数千人の居住を支援してきた注目の若手起業家の1人。これまで70―80カ国を訪れ、世界各国の事情にも詳しい。「これまでのもどかしい思いをサービスで解消したい」と語る。居住者の好みに合う不動産も企画する。住み方のデータを集めてコンセプトをつくり、オンライン上で公開。人気があれば、企画を具体化する。「本」「ハラール」「LGBT」など多様なキーワードの住まいが考えられる。

このままでは誰も日本に来なくなる


 紀野社長は日本で行われている“外国人をどう受け入れるか”という議論だけでは、「いずれ誰も来なくなるかもしれない」という強い危機感を持つ。中国が経済的に豊かになり、IT化やキャッシュレス化で便利になれば、中国へ行く人は確実に増える。さらに世界的に人材流動化が進めば、「趣味や興味、ライフステージによって暮らす国を選ぶ人も増えてくる」と予想する。日本人の視点だけでなく、世界から日本を見て、魅力を高める必要がある。

 日本では外国人は騒がしいイメージを持つ人もいるが、「騒がしいのは国籍や人種の違いではなく、個人の特性だ」と指摘する。日本に住む外国人はパーティー好きな欧米人ばかりではない。日本に多く来ている中国人やインド人は集まっても静かに手料理を食べて過ごす。「米海軍施設や特別支援学校で暮らした経験もあり、マイノリティーの気持ちもわかる。双方の理解を助けたい」という。

 今後、スマートロックなどの不動産向けIoT(モノのインターネット)技術の導入も支援し、利便性を高めていきたい考え。

日刊工業新聞2019年2月26日掲載より加筆

COMMENT

梶原洵子
編集局第二産業部
記者

「『外国人とどう受け入れるか』という議論だけでいいのか」と、疑問を投げかけていいたのが印象的でした。世界的に優秀な人材が獲得競争となっています。誰もが住みやすい社会が求められています。

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