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サステナビリティの新顔「TCFD」、日本企業の賛同広がる理由

日本生命保険や積水化学工業、富士フイルムホールディングスが表明
 金融安定理事会の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が2017年に公表した提言に賛同する日本企業が増えている。豪雨や猛暑などが経営に与える気候変動リスクの開示が提言の内容の一つだ。ESG(環境・社会・企業統治)投資が盛んとなり、提言にそった開示が環境情報の評価基準となりそう。ただ、賛同は増えても実際の開示となると少数だ。

シナリオ分析


 19年に入り日本生命保険、積水化学工業、富士フイルムホールディングスがTCFDの提言への賛同を表明した。三菱商事、日立製作所、リコー、積水ハウスなどの事業会社、金融庁、経済産業省、環境省といった官庁も賛同している。世界の賛同は500社・団体以上にのぼる。

 主要国の中央銀行や財務省が参加する金融安定理事会が15年末、TCFDを発足させた。当時、頻発する豪雨やハリケーンによる被害が増え、損害保険会社は保険金の支払額が増加して経営が圧迫される懸念が出ていた。また、燃焼によって二酸化炭素(CO2)を多く排出する石炭関連事業から投資を引き揚げる年金基金が現れ、気候変動が金融問題として認識されてきた。

 そこでTCFDは企業財務への気候変動の影響を予測し、開示する指針を提言として公開した。特徴が「シナリオ分析」にある。例えば産業革命前から平均気温が2度C上昇した場合など、将来を想定して影響を分析するよう企業に求めた。

投資家から評価


 国際石油開発帝石は将来、各国での気候変動政策の強化、再生可能エネルギーや電気自動車の技術進展によって石油需要の増加が見込めなくなる状況をリスクとして分析した。同時に天然ガスの普及、再生エネへの取り組みなどの対策も開示した。リスクと対策を検討していると気候変動を将来の経営課題と認識している企業として投資家から評価される。

 ただ、情報開示は一部の企業にとどまる。SOMPOリスクマネジメント(東京都新宿区)の横山天宗上席コンサルタントによると「企業から、TCFDの提言に対応したいという引き合いが増えている。シナリオ分析に頭を悩ませている企業が多い」という。

 将来リスクの検討は、長期的な成長戦略にもつながる。「せっかくの機会なので少子高齢化など将来の社会課題も一緒に社内で議論してほしい。CSR担当者だけでなく、経営陣も議論に巻き込むことが大事だ」(横山上席コンサルタント)と訴える。情報開示は経営者の関与次第のようだ。

       

(文=編集委員・松木喬)
日刊工業新聞2019年2月15日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
ESG、SDGs、CDP、RE100、SBTそしてTCFDと最近のサステナビリティの世界はアルファベットだらけです。これらを個別にとらえず、同じことを言っていると考え、できるだけまとめて対応するのがポイントのようです。個々に対応していると負担が大きいはずです。新顔のTCFDですが、なるべく分かりやすく伝えたのですが、文字数が厳しいです。

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