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森ビルが働く女性の声を反映させたトイレを作った理由(後編)

女性の働きやすいオフィスをソフト・ハード両面から目指す
森ビルが働く女性の声を反映させたトイレを作った理由(後編)

営業本部オフィス事業部営業推進部の岩根奈美氏(左)、宮地紋子氏

**女性の声を集め改修プロジェクト開始
 森ビルでは2013年より、すべての人が働きやすいオフィス環境、街を目指すことを目的とし、社内組織「女性が働きやすい街づくり検討会」を発足させた。「今後のわが社のオフィスの競争力強化策の1つとして、『女性が働きやすいオフィス』を実現させたいと提案しました。ちょうどそのころにアベノミクスで『女性の活用』というテーマが叫ばれはじめまして、日本の国力強化という大義もあり推進することになりました」営業本部オフィス事業部営業推進部の岩根奈美氏は狙いについてこう話す。

 現在3年目となる活動の中での大きな成果が、「理想の水回り」としてトイレの改修だった。トイレに着目した理由は2つ。かつてのオフィスビルには女性のロッカールームや更衣室があり、男性の目線を気にせずリラックスできる場があった。しかし近年、更衣室は減少、トイレがその代役を担っている。そんなトイレがよりリラックスできる場になってほしいという傾向が見えてきた。また、オフィスの入居者アンケートでもトイレの充実度は重視される傾向にある。しかし男女でニーズの差が出やすい場所でもあり、今まで大きなリニューアルはされてこなかったのだという。

 「改修プロジェクト前に、社内のさまざまな部署の女性に『トイレで何をしているか』を聞いたところ、身だしなみに関することが多かったんです。その次にリフレッシュに関する意見が挙げられており、今回の改修の目玉として『ドレッシングエリア』を作ることにしました」(同部の宮地紋子氏)。

 いままでのオフィスビルは作り手も使い手も自然と男性だった。今回新設したドレッシングエリアは、森ビルではこれまで設置してこなかったものだ。しかし今回女性の声を集めて設置に至ったことや、実際に稼働して利用者の反応を見ることで社内の方向性も変わっていくのではと岩根氏は話す。

ワークライフをサポートするオフィスを目指す


 設計に際し、一番悩んだのはデザインの部分。意見を総合させて宮地氏がラフを描き、それを外部設計会社にデザインしてもらった図を上層部に提出した。しかしシンプルだったため「せっかくコンセプトを打ち出してやるのだからもう少し凝ったものにしては」と言われてしまった。再度女性を集めデザイン検討をし直したが、やはりリフレッシュできる環境が一番という意見を通し、今の明るくシンプルな空間になった。

 また六本木ヒルズはスタイリッシュなデザインで統一されているため、ビル全体との調和も懸念された。「ですが今回は機能面や『トイレとしての理想』を優先させ、女性の意見を一番の決め手としてデザインを決定しました」(宮地氏)。今後はこの改修プロジェクトで得た知見を、他のオフィスビルでのプロジェクトに反映させていく。

 現在、検討会では制約の多いワーキングマザーの働き方をサポートしていけるようなプロジェクトを推進している。テナントで働く女性1,000人にワークライフに関するアンケートを行い、この結果からプロジェクトの方向性を検討している段階だという。森ビルがテナントを展開する港区は、もともと職住が近い環境という強みがある。アンケートでは「時間が足りない」という回答が多く、「スーパーや店舗など、会社のそばで生活の一部を満たすことができればより時間を効率よく使えるのでは」と宮地氏は話す。

 さらにソフト面でもイベントを展開している。「お昼のクッキングイベントは好評で、参加者が近隣企業の方との交流を求めていたことがわかりました。今後も横のつながりを作っていくようなイベントを開催していきたいですね」(岩根氏)。
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
モデルトイレのあるフロアには、これからテナント入居予定。実際に使っていくうちに新たな意見や気づきが出てくるでしょう。 ちなみに森ビルでは親子で街づくりを学べる「ヒルズ街育プロジェクト」を開催中です。

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