米政権の対中ハイテク輸出規制、日本産業界が警戒する中身

「こんなに先行きを見通せない新年はこれまでなかった」

 米国が検討するロボットや人工知能(AI)など先端技術の輸出規制に対し、日本の産業界で懸念が広がっている。規制は対中政策の一環とみられるが、内容次第ではロボットメーカーなど日本の大手企業にも影響が及びかねない。関連する企業の幹部や政府関係者は、春にも固まる規制の検討状況を注意深く見守っている。

 米政府が検討する新たな規制は、国内技術の保護強化のため2018年夏に成立した輸出管理改革法に基づくものだ。米国内で開発した技術を国外移転する場合などが規制対象になる。ロボット、AIのほか3Dプリンター、バイオ、マイクロプロセッサーなど14分野が候補とされる。

 これに対し日本の産業界は警戒感を強めている。あるロボット業界関係者は「こんなに先行きを見通せない新年はこれまでなかった」とし、理由の一つに同規制を挙げる。製造業大手の多くが第4次産業革命の動きを踏まえ、米西海岸のIT産業などと連携を深めているが、規制の運用次第でこうした事業戦略も見直しを迫られることになる。

 米政府による検討の裏側にあるのが、先端技術をめぐる米中間の覇権争いだ。18年に表面化した米中貿易戦争の根本にあるこの問題は激しさを増し、両国が譲歩する気配はみられない。「ハイテク(先端)産業の育成は軍事力の強化に直結する」と細川昌彦中部大学特任教授は安全保障面の背景を指摘する。

 新たな規制は中国だけが対象ではないため、あらゆる国に直接・間接的に影響する。日本政府は「対象範囲が分からず、まだ対応しようがない」(経済産業省幹部)として米国へ情報提供を求める構えだ。他方、「大きく規制を打ち出してから徐々に適用除外対象を選ぶのが、トランプ政権のやり方」(別の経産省幹部)など、やや楽観的な見方もある。

 米政府はパブリックコメント(意見公募)の結果などを踏まえ、今春にも規制内容や運用方針を定める予定。米中対立の影響が世界中に及びつつある中、その判断が注目される。

(文=藤崎竜介)

 

日刊工業新聞2019年1月18日掲載

  

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