シーメンスとボンバルディア「鉄道車両統合」交渉の行方。日立はフリーズ?

中国連合も買収に虎視眈々。シーメンスと一騎打ちか

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日立は英国で鉄道車両の受注が相次ぐ
 鉄道車両業界で不穏な動きが出てきた。7月末、独シーメンスとカナダのボンバルディアが鉄道車両部門の合併に向けて交渉していることが伝わった。両社が合併すれば売上高は2兆円規模に膨らみ、全世界に商圏を持つ巨大メーカーが誕生する。海外展開を急ぐ日立製作所にとって、憂慮すべき事態になりつつある。
 
 今春、ある情報が業界内で流れていた。「ボンバルディアが財務を改善するため、鉄道車両部門を売却するらしい」―。5月には同部門について新規株式公開(IPO)を行う考えを表明。市場関係者は同部門がM&A(合併・買収)市場の俎上(そじょう)に載ったと考えた。

 「ボンバルディアは売却を否定したが、鉄道車両を中核事業から遠ざけようとしているのは明らかだった」(証券会社アナリスト)。カーブアウト(事業分離)は公然の秘密となった。シーメンスとボンバルディアの交渉は初期段階とされる。鉄道車両事業は生産体制や顧客基盤の点で規模拡大の効果を発揮しやすく、合併の利点は大きい。このためシーメンス以外の企業からも買収や資本提携の打診が来ている模様だ。

 その1社が中国の南車・北車連合とされる。両社は3月に合併を決定し、事業規模では日米欧の大手を凌駕(りょうが)する存在となった。中国政府の後ろ盾のもと、海外市場を狙う。ボンバルディアが傘下に入れば、欧米の顧客に接触できるルートを得られる。強烈な野心を抱く南車・北車には垂ぜんの的だ。

 すでに南車・北車は買収を提案したとの情報もある。「南車・北車の合併で分かるように、中国政府は鉄道に威信をかけている。課題の技術力も改善し、死角は少ない」(同)という。仮に南車・北車が勝てば西側諸国へのアクセスを確保し、悲願のグローバル企業に変貌できる。

 一方、シーメンスが勝てば両社の間で無駄な消耗戦を回避でき、経営資源を集中して国際入札に臨める。双方の製品群や顧客網を活用したり、事業基盤を統廃合したりすることも可能だ。売り上げ規模も中国勢を除くと首位になる。つまり、どちらが勝利しても他を圧倒する企業が誕生する。

 ボンバルディアの鉄道車両部門を巡り鞘(さや)当てが激しくなる中、海外事業に力を注ぐ日立の動向に注目が集まる。足元では英国事業が好調に推移しており、今後は買収したイタリアの車両・信号メーカーをテコに欧州本土への進出を伺う。だが、そこにはシーメンス、ボンバルディア、仏アルストムという欧米3強が待ち構える。ボンバルディアが他社と手を組めば、参入障壁が一段と高まるのは間違いない。

 日立が巻き返すにはどうすればよいか。2―3%の成長率を維持する欧州は、各社にとって重要な収益源。競争は厳しく、日立の選択肢は少ない。再編の動きを静観し粛々とオーガニックグロース(自前成長)を目指すのか、それとも国際的な再編劇の中に自ら飛び込むのか―。
 (文=敷田寛明)

日刊工業新聞2015年08月06日 電機・電子部品・情報・通信面

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

シーメンス、ボンバルディアそれぞれ世界に不採算の工場を抱える。独禁法の問題や大がかりのリストラも必要で両社の統合は一筋縄ではいかない。日立も穏やかではないだろうが、キャッシュフローやROI、ボンバルディアに対するマネジメントなど「合理的」に考えれば、日立が動く意義は薄い。

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